ドラッグストアで働くとノルマがあるからキツイという話を聞いたことがありませんか?売らなくてはいけない商品が決まっていて、それをジャンジャン売らないと上司からお咎めを受けるなんて話もあるほどです。
さらには強化品を売りまくってノルマを達成しなければ出世できないなんて恐ろしい話も耳にします。今回はこういったドラッグストアのノルマ事情について元ドラッグストアの従業員が詳しくご説明します。

実際に働いていた私だからこそわかる、誰も知らないようなドラッグストアの闇についても触れていきます。
ドラッグストアにノルマはあるの?ないの?リアルな販売強化事情

先に答えを言ってしまうと、ノルマはあります。ドラッグストアは小売りなので、ひたすら売上と利益を求めて営業していく職場です。
日本には数々のドラッグストアがありますが、ノルマのないドラッグストアはないと思ってもらって間違いありません。
利益を上げるには粗利率の高い商品を売る必要があります。とくに粗利率が高くお店の利益に大きく貢献する商品を“強化品”や“販売強化品”、“重点品”などと呼びます。
ところでドラッグストアにノルマがあることはたしかなのですが、店舗によってノルマへの熱の入れ方が異なるのをご存知ですか?

私は実際にノルマなんてほとんど気にしていない店舗と、あの手この手を使って何としてでも売ろうと必死になる店舗の両方を知っています。
ノルマが厳しい店舗の特徴
ではノルマが厳しいお店とそうでないお店とでは何が違うのでしょうか。1番大きな違いはお店の規模です。都心部や中心街にあるような、ある程度大きな売上が期待されている店舗はノルマがとても厳しい傾向にあります。
逆に客数が少なくそこまで売上が大きくない店舗はあまりノルマに厳しくないという特徴があります。売上がトップクラスなのにノルマが厳しくない店舗は今までに一度も見たことがありません。
売上が大きな店のほとんどはインバウンド需要が高く、観光客が大量に買い物をされに来ます。
観光客の方は日本人よりも商品に興味を持ってくれることが多く、また一度に購入される量も多いためむしろ強化品を売れないことの方がおかしいのです。
強化品を売ることのできるお店が売らなければ、会社全体の利益も下がってしまうので「売らないとマズイ」という圧力がすごいとも言えます。
ノルマが達成できなかったらどうなるの?
ノルマというのは具体的に「何日から何日の間にいくら売らなくてはいけない」というものです。私がいたドラッグストアでは近隣の店舗同士で売上金額を競うこともありました。
たとえノルマを達成していたとしても、ライバル店の売上を超えるまで粘って売り続けることも普通にあります。つまり会社で定められたノルマとは別に、お店で独自の目標を作って売上を積み重ねていくということです。
もしもこのノルマや目標を達成できなかったら…
- 上司や店長、SVからお咎めを受ける
- 強化品をあまり売れていない従業員だけ呼ばれてなぜ売らないのかと怒られる
- 社内のメールで晒し者にされる
- 売上が目標値に達するまで帰れない
ざっとこんなことが起こります。なぜ売れなかったのか、なぜ売らなかったのか、どういう売り方をしていたらそんなに売上が伸びないのかをチクチク刺されて精神的に病んだ経験が私自身ありますね。
私は売りたくない商品の販売にはあまり乗り気じゃなかったので、そんなに強化品を売っている方ではなかったのです。
売上が悪いとメールで「○○店は目標に対して○%の売上しかありません。調子が悪いですね」と晒し者のようにされるのもあまりいい気分はしませんでした。
また最近のドラッグストアは24時間営業のところも多いのですが、いわゆる“閉店せずにずっと営業しているお店”はレジの精算作業をしなければ何時まででも強化品を売ることができてしまいます。
納得のいく売上に達成するまでレジ精算をせずに、従業員に残業させてまで売上を乗せようとすることも一部の店舗では行われています。
自腹で強化品を買い取ることも…
ある商品を何日までにあと何個売らないといけない、でもこのままだとノルマ達成は厳しそう…。このようなシチュエーションは嫌でも必ずやってきます。
こうなったとき、ほとんどの方がノルマ達成を諦めるかギリギリまで粘って売るかするのですが、なかには自腹を切ってまでノルマを達成させようとする方もいます。
強化品を自分で買って金額を上乗せする作戦ですね。
「ノルマ達成しないなら自腹で買ってなんとかしろ!」と言われている現場は見たことがありませんが、商品が売れないことに責任を感じて自分で買ってしまう社員は何人もいました。

責任を感じて自腹を切る社員もいれば、売上を伸ばすのが楽しいのか嫌な顔ひとつせずに買っている社員もいました。
登録販売者もノルマは普通にある!
正社員として働いている以上、ノルマは必須です。
そのため、薬剤師か登録販売者かにかかわらずノルマを達成するために強化品の販売をしなければいけません。
強化品の販売個数が少なければ「売上が少ない!がんばって売って!」と言われてしまいます。登録販売者の方のなかにも強化品の販売がツラくて仕事を辞めてしまうケースが少なくはありません。
アルバイトでも強化品を売る必要がある
正社員として働くのであれば、必ず日々の業務にノルマがつきまといます。ではアルバイトだとどうなのでしょうか。
私がいた店舗ではアルバイトでもノルマ達成の協力はさせられていました。強化品を売らないからといって正社員のように怒られることは決してありませんが、売らないと「やる気がない」と見られてしまう印象があります。
ただし、もともとそこまで強化品販売をゴリゴリ行っていない店舗であれば、強化品を売っても売らなくても気にされることはありません。
強化品を売らなきゃ出世できないって本当?

強化品を売れる人はどんどん出世していくなんて話もありますよね。これは実際、どうなのでしょうか。
強化品をじゃんじゃん売る従業員は他の仕事ができなくても出世しやすい
間違いなく強化品を売れる従業員の方が出世する可能性は高いです。
なぜなら
- 強化品売れる=お店や会社の利益に貢献している
- 強化品を売る人は仕事ができるように見える
といった理由があるからです。強化品は利益率の高い商品。ものによっては販売価格の80%近くが利益になるような商品すらあります。
そういった大きく利益の取れる商品を売るということは、会社のために働いていますよと胸を張って言えるということです。それに強化品さえ売っていれば出世の可否を最終的に決めるSVによいイメージを与えられます。
SVは月に数回しか店舗に来ないので日頃の細かい働きぶりまでは目が届いていません。はっきりわかるのは数値だけ。だから強化品を売れる人は出世が早いんですね。
私がいた店舗には、どうしても動きも遅いし周りも見えていない少し困った従業員がいたのですが、強化品だけけはバンバン鬼のように売る方がいました。やはりその人も店長試験に呼ばれたり、昇給に必要な試験に呼ばれたりで出世は早かったですね。
ただし、売らなくても出世はできる
ここまで強化品を売らなければ出世できないような説明をしてきましたが、強化品を売らないと絶対に出世不可能だということは決してありません。
上で話した人の例とは逆に強化品を売れなくても、売上の立ちやすい売り場作りが得意だったり、お店の営業を回すのが上手だったり、後輩やアルバイトの面倒見がよく指導をする能力に優れていたりといった従業員も出世は早かったです。
要はただダラダラ働いているのではなく、お店のためにどこかで実績を作れる人が出世しやすいと言えます。

強化品の販売は出世に大きく影響しますが、売らない人が出世できないということは決してありません。他のところで強みを持てば誰でも出世のチャンスはあります。
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強化販売の闇とは?従業員やお客様、仕入先に与える影響

強化品が売れればお店の利益は増えます。お店にとっても会社にとってもいいことだらけです。
しかし視座を変えて見てみると、よいことばかりではないことに気がつきます。強化販売について、あらゆる視点から影響を見てみましょう。
薬剤師から見た強化販売の闇とは?
“私は売りたくない商品の販売にはあまり乗り気じゃなかった”と先ほど言いましたが、薬剤師として働いている私からすると本来は売るべきでない商品をお店側がゴリ押ししようとしていることも多いんですね。
このお客様には本当ならこっちのお薬の方が効くのに、会社の方針で違うお薬を勧めなければいけない現場に何度も遭遇します。
売上や利益しか頭にない従業員はこういった場面でも強化品を売っていましたが、私は売りませんでした。もっといいお薬があるとわかっていて、薬剤師でありながらなぜ違うお薬を勧めるのかが理解できなかったからです。
店長によっては、少しでも売るべき商品と違う商品を売っていると裏に呼び出して説教してくる人もいます。そういった場合は店長がいるときだけ強化品を売って、いないときは好きなものを売っていました。

体調が悪くてお薬を買いに来られるお客様に嘘をついてまで強化品を売るなんて私にはできませんでした。
お客様に与える強化販売の影響
売上や利益のことしか頭にない従業員にあたってしまったお客様は間違いなく被害者です。もっと自分に合うお薬があったはずなのに、それを紹介してもらえなかったわけですから。
私は実際にこんな場面を目撃したことがあります。
手荒れがひどいと相談されたお客様が来店されたのですが、あろうことかその時期にちょうど強化販売をしていたハンドクリームをそのお客様に売った従業員がいたんです。
そのお客様は手荒れで肌もボロボロになっているような状態だったので、ハンドクリームなんかじゃなくて手荒れ用のお薬を売るべきでした。
もちろんそのお客様の手荒れがハンドクリームで治るわけもなく、後日再び来店されたときに「この前勧められたハンドクリームじゃ全然治りません!」とお怒りに…。
このように強化販売があることによって被害を被るお客様は絶対にいます。
商品の仕入先も強化販売の影響を受ける
強化販売をする商品は売りたいときに商品が欠品していて売れないというチャンスロスを防ぐためにも、多めに発注してお店に在庫をしておくのが基本です。
集中して売る必要があるときは何百個も一気に発注をかけることもあります。全店舗がこのように一気にしかも大量に発注をかけるので、仕入先にも影響が出てしまうのはいうまでもありません。
あまりにも一気に発注が重なると仕入先で欠品を起こして通常の配送スケジュールで納品されなくなったり、売上規模の小さなお店への納品が後回しになったりといろいろな影響が出てきます。
大量の発注が仕入先の業務を圧迫してしまうこともあるのです。
強化品とはまた別の話なのですが、とても売れ行きのよい商品をある従業員が大量に発注したところ仕入先から電話が来て怒られたそうです。「そんなに大量に発注されると他の店の分がなくなる」と言われたとか。大量発注が仕入先だけでなく、他の店舗にも迷惑をかけてしまうんですね。
経営陣たちは強化販売のことをどう思っているのか
強化販売の制度を作っているのは経営陣たちです。つまり経営陣たちは、強化販売のことを“売上や利益を上げるための戦略”としか思っていません。
まれに大して利益が取れない商品が強化品として扱われることもあるのですが、これも経営陣たちの策略です。
「おたくの会社の商品をうちで大量に売るから仕入れ値を下げてね」といった交渉が行われることがあるのです。
このような交渉が成立した商品は、たとえ利益が取れなくても相手企業との約束があるため売らなければいけなくなります。経営の視点から見ればかしこい案なのかもしれません。
強化販売によってドラッグストアで起きた実際の問題

販売強化があることによって、お客様に迷惑をかけてしまうことは意外と多いものです。
さきほどのハンドクリームのお客様もそうですが、本当に必要なものを売らないせいで健康を害してしまうことだって考えられます。また他にも以下のような問題が起きたことがあります。
- この前来たときと違うお薬を紹介されたんだけど、本当はどっちが効くの?とお客様に不思議がられる
- こっちのお薬の方がよく効きます!とお薬を勧めたものの、相手がお薬に詳しい方だったために「嘘をつくな!」とお客様に怒られる
強化販売は一定の期間で売るべき商品が変わるので、似たような働きを持つお薬でも、あるときはAという商品を、あるときはBの商品を勧めることがあるんですね。
もちろんそんなことをしていたらお客様は混乱しますし、不審に思ってしまいます。
同様に強化品を売りたいからと、ろくに成分の違いも知らないまま「こっちがオススメです!」なんて言ってお客様から怒られている現場も何度か見てきました。
ノルマが厳しくない店舗に転職する方法

強化品販売のノルマが厳しいかどうかは、私の経験上、店舗によって大きな差があります。同じ系列のドラッグストアでも店舗が違うだけで強化品への熱の入れ方がまったく違うんですね。
私みたいに利益だけを目的に強化品をゴリゴリ売りたくないという薬剤師もきっと多いと思います。「ドラッグストアに転職したいけど、強化品やノルマが厳しいところは嫌だな」という方もいるでしょう。
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まとめ

ドラッグストアにはノルマや強化品の販売が必ず存在します。
なんとしてでも売らないといけないプレッシャーからなかば強引にお客様にゴリ押ししている従業員もなかにはいますが、これって本当にドラッグストアの闇なんですよね。
「お客様の健康を守るために…」とか言っているわりには蓋を開ければそうでもない現実が広がっているわけですから。ドラッグストアのノルマ事情は探れば探るほどいろいろな裏話が出てきます。
上司や店長はよく「小売だから利益がすべて」なんて言いますが、そんなことを言い出したら薬を売る立場としてどうなの?と私は思います。とくに薬剤師の方でしたら売りたくないお薬が多くあるでしょう。
しかし強化品の販売個数だけが出世に必要な条件では決してないので、自分に嘘をついてまで強化品を売らなくても大丈夫です。

むしろ薬剤師だからこそ、そのお薬は売らないよと堂々としていましょう。それが本来の薬剤師の働き方だと思います。