超高齢社会をむかえる日本において、在宅医療の役割はますます大きくなりつつあります。
在宅医療では、要支援や要介護と認定され、通院が困難な方の自宅を訪問し、療養上の指導や健康管理、アドバイスなどをおこないます。
中でも、「在宅患者訪問薬剤管理指導(医療保険)」と「居宅療養管理指導(介護保険)」の2つは、薬剤師がかかわるサービスとして代表的です。
一般的には「居宅療養管理指導」が優先されるため、この記事では「居宅療養管理指導」の概要やサービス内容について、くわしく解説していきます。
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居宅療養管理指導とは
まずはじめに、居宅療養管理指導の概要についてみていきましょう。
混同されることの多い「在宅患者訪問薬剤管理指導」の違いについても、あわせて確認していきます。
居宅療養管理指導の概要
居宅療養管理指導は、通院が難しい方のために医師や薬剤師、看護師が患者さんの自宅を訪ねて、健康管理を行っていくものです。
居宅療養管理指導の概要は、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」において明らかにされています。
第六章 居宅療養管理指導
第一節 基本方針
(基本方針)
第八十四条 指定居宅サービスに該当する居宅療養管理指導の事業は、要介護状態となった場合においても、その利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医師、歯科医師、薬剤師、看護職員、歯科衛生士又は管理栄養士が、通院が困難な利用者に対して、その居宅を訪問して、その心身の状況、置かれている環境等を把握し、それらを踏まえて療養上の管理及び指導を行うことにより、その者の療養生活の質の向上を図るものでなければならない。
指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準
在宅で療養しており、通院が困難な利用者に対して、医師や看護師、薬剤師などの専門職がご自宅を訪問し、療養上の管理や指導、助言などをおこないます。
またケアマネジャーに対して、ケアプランの作成に必要な情報提供をおこなうこともあります。
患者さま本人の通院時の身体的負担を軽減できるだけでなく、介護者の通院介助の負担を軽減できることが期待されています。
デメリットとしては、医師または歯科医師の指示がないと利用できないため、開始までのハードルがやや高いことが挙げられます。
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「居宅療養管理指導」と「在宅患者訪問薬剤管理指導」の違い
在宅医療は、医療保険の「在宅患者訪問薬剤管理指導」と介護保険の「居宅療養管理指導」の2つに分けられます。
算定要件や報酬金額に若干の違いはありますが、受けられるサービスに大きな違いはありません。
健康保険法第55条により、医療保険と介護保険で同様のサービスがおこなわれる場合には、介護保険が優先されることが規定されています。
給付管理において重要なので、必ず患者さまごとに「介護保険被保険者証」を確認するようにしましょう。
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「居宅療養管理指導」と「訪問診療」「往診」の違い
「居宅療養管理指導」と混同されやすい他の医療サービスに、「訪問診療」と「往診」があります。
「訪問診療」とは
自宅や施設で療養しており、通院することが困難な患者さまに対して、計画的に医師が訪問して診療をおこなうサービスのことをあらわします。
居宅療養管理指導では、必要に応じて看護師などから医療行為を受けることがありますが、医師による医療行為はおこなわれません。
訪問診療では、必要に応じて医師による医療行為がおこなわれることが特徴です。
「往診」とは
患者さまやその家族の求めに応じて、医師が自宅に赴いて診察するサービスのことをあらわします。
居宅療養管理指導や訪問診療のように計画的に実施されるものではなく、患者さまの求めなど、必要に応じておこなわれることが特徴です。
こちらも、訪問診療と同様に医師による医療行為がおこなわれます。
居宅療養管理指導の利用方法
ここでは、居宅療養管理指導の利用方法をみていきましょう。
対象者は?
居宅療養管理指導の対象者は、要介護1~5の認定を受けている65歳以上の高齢者です。
65歳未満であっても、介護保険に加入している40歳~64歳のうち、以下に示すように、関節リウマチや末期がんなどを含む特定疾病(16種類)のいずれかにより要介護認定を受けていれば、対象者となります。
- がん
- 関節リウマチ
- 筋萎縮生側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨粗鬆症(骨折を伴う)
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
また要支援1~2を受けている方は、「介護予防居宅療養管理指導」により、同様のサービスを受けることが可能です。
居宅療養管理指導を利用する流れ
利用可能回数は?
居宅療養管理指導を受けることのできる回数は、月ごとに定められています。
- (病院または診療所勤務)2回まで
- (薬局勤務)4回まで※
薬剤師の勤務する事業所の種別によって、算定可能な上限回数が異なっていることが特徴です。
利用可能料金は?
居宅療養管理指導の利用料金を、下記にまとめました。(1割負担の場合)
病院または診療所の薬剤師 | 薬局の薬剤師 | |
---|---|---|
単一建物居住者1人 | 560円 | 509円 |
単一建物居住者2〜9人 | 415円 | 377円 |
10人以上の場合 | 379円 | 345円 |
2割および3割負担の方では、これらに2または3を乗じた金額が、自己負担額となります。
お薬の処方があった場合には、上記に加えて薬剤料の自己負担分が加算されます。
また居宅療養管理指導は、介護保険により支給されますが、介護保険の支給限度額の対象とはなりません。
他のサービスで介護保険の支給限度額を満たしていたとしても、訪問限度回数の範囲内であれば1割~3割の自己負担で利用できます。
居宅療養管理指導における薬剤師のサービス内容
居宅療養管理指導では、どのようなサービスを受けることができるのでしょうか。
受けられるサービスとは?
居宅療養管理指導では、医師や薬剤師、管理栄養士、保健師などの専門家が、患者さまの自宅を直接訪問することで指導をおこないます。
薬剤師が居宅療養管理指導で主に行うのは、以下の内容となります。
- 服薬指導
- 副作用のチェック
- 残薬管理
- 生活習慣の指導
- 医薬品の供給
- 処方変更の提案
- 医師や看護師など他の医療スタッフへの情報共有
それぞれの職種ごとにサービス内容が異なりますが、薬剤師においてはお薬の服薬指導や管理方法のアドバイスが中心です。
患者さまの状況を確認した上で、医師にお薬の種類や用法・用量などの変更を提案することもあります。
訪問後、医師やケアマネジャーに報告をおこない、より安心して在宅医療・介護サービスを受けられるよう、関係者間で情報を共有します。
居宅療養管理指導における薬剤師の役割
居宅療養管理指導において薬剤師はさまざまな役割を担っています。
医薬品の供給
薬剤師が患者さまの自宅を訪問して、お薬の供給や管理、指導などをおこないます。
医師の発行した処方箋にもとづく処方箋医薬品だけでなく、衛生用品や介護用品を供給することもあります。
独居や老々介護など、外出が困難な状況にある方においても、自宅で医療サービスを受けられるようにサポートをおこないます。
状態に合わせた調剤
お薬を適切に服用していただくためには、患者さまの体質や抱える疾患、食事、睡眠、排泄などのさまざまな情報を考慮しなくてはなりません。
薬剤師は患者さまの状態を適切に把握し、剤型変更や一包化、お薬カレンダーの活用など、さまざまな角度から問題解決を目指します。
かかりつけ医や処方医に対して、処方変更を提案することもあります。
服薬指導
服薬指導では、患者さまがお薬を飲むときに不安や疑問点が残らないよう、しっかり情報提供することが大切です。
生活スタイルに合わせた服薬方法を提案し、服薬コンプライアンスを上げられるような指導を行います。
他の医療従事者との情報共有
患者さまが安心して在宅医療を受けるためには、医師や看護師をはじめとした多職種のサポートを受けることが必要です。
薬剤師は医薬品の専門家としての役割を持ち、他の職種との情報共有や、薬学的見地からのアドバイスをおこないます。
担当のケアマネジャーに報告をおこない、ケアプランの作成や見直しに協力することも、重要な役割です。
まとめ
居宅療養管理指導は、医師や薬剤師をはじめとする医療の専門家が自宅に来て健康管理や指導をしてくれる、非常に便利なサービスです。
しかし、まだまだ制度の認知度が低いことや、対応できる施設がそれほど多くないことから、十分に活用されているとは言い切れません。
今後の薬剤師は、これまで以上に在宅医療において力を発揮することが求められているため、これらの指導における概要や役割を知ることも大切です。
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