平成28年4月より、「かかりつけ薬剤師」制度が新しくスタートしました。
かかりつけ薬剤師となるためにはさまざまな要件をクリアしなくてはなりません。中でも最大のハードルが、研修認定薬剤師の取得といわれています。
所定の単位を集めなくてはなりませんが、仕事の都合や家庭の事情によっては苦労することもありますね。そんなときには、e-ラーニングの受講を検討してみてはいかがでしょうか。
この記事では、かかりつけ薬剤師や研修認定薬剤師の仕組み、効率的な単位の取得方法について、解説していきます。
薬局薬剤師
研修認定薬剤師の取得方法
かかりつけ薬剤師となるためには、研修認定薬剤師を取得することが必須条件となっています。取得する方法をみていきましょう。
研修認定薬剤師を取得する流れとは
研修認定薬剤師を取得するためには、次の5つの手順を踏まなくてはなりません。
研修認定薬剤師の認定をおこなうプロバイダーは現時点で30の団体があります。ここでは代表的な日本薬剤師研修センターの例を挙げてご説明していきます。
まずは薬剤師研修手帳を購入しましょう。日本薬剤師研修センターのページから公益財団法人 日本薬剤師研修センターに申請をおこない、手帳代550円+送料140円+郵便振替手数料を支払うことで入手可能です。
次に受講シールを40単位分集め、認定手数料を振り込んで研修手帳とともに申請書を提出することで、研修認定薬剤師として認定されます。
単位を集めるための条件には、「最長4年以内、毎年5単位以上」という縛りがありますが、1年ごとの上限単位は設定されていません。
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研修認定薬剤師の単位はどうやって集めるの?
認定薬剤師の単位を集めるためには、どのような方法があるのでしょうか。
単位を集めるためには、所定の研修会や学会に参加することが代表的な方法です。地域の薬剤師会やメーカーが主催する研修会においても、単位として認められているものもありますね。
研修会は、90分の研修で1単位をもらえるものが一般的です。無料のものもありますが、受講料として1,000円~3,000円程度が必要となります。40単位を集めようとすると、合計で40,000円~120,000円と、かなりの金額が必要となってしまいます。
自宅で、職場で、通勤中に!どこでもできるe-ラーニングの魅力
研修会で単位を集めようとすると、かなりの費用がかかってしまいます。講習費用だけでなく、会場への交通費がかかることにも、注意が必要です。
また研修会の多くは、業務終了後の夜間や休日におこなわれているため、家庭のある方にとって参加はハードルが高いといえますね。
そんなときには、e-ラーニングで単位を集めることがオススメです。e-ラーニングであれば、空いた時間に自宅や外出先など場所を選ばずに受講できるので、忙しい方にもピッタリといえます。
m3.comのe-ラーニング研修
ここでは、e-ラーニングのなかでも人気の高い、m3.comのインターネット研修についてご紹介します。
m3.comとは
m3.comは、エムスリー株式会社が運営している医療系総合サイトで、インターネットを利用した医療関連サービスに特化しています。
「薬キャリ」という転職サイトを運営していることでも有名で、調剤薬局やドラッグストアだけでなく、病院や企業においても、数多くの求人案件を取り扱っていることが特徴です。
医療系ニュースの確認や薬剤師掲示板として活用する方も多いですが、研修認定薬剤師を取得するためのe-ラーニングにも定評があります。
88%off!?格安の単位取得プラン
m3.comのe-ラーニング(m3ラーニング)の人気の秘密は、何といっても価格の安さです。
2020年3月時点で、33単位を取得するためにかかる受講料は、33,605円→4,000円となっています。
セットになっていないものでも、3単位で1,000円の講座もいくつかあるので、うまく組み合わせれば数千円で研修認定薬剤師の単位が集まりそうですよね。
ただしこの価格には、落とし穴があります。ここまで読んでいただいた方は、必ず次の章の注意事項にも目を通してくださいね。
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m3ラーニングの落とし穴とは!?
一見すると研修認定薬剤師の取得において、コストパフォーマンスの良さそうなm3ラーニングですが、重大な落とし穴があります。
単位申請には1講座(3単位)ごとに600円の交付手数料が必要
33単位で4,000円と思われがちですが、実は単位申請には1講座(3単位)につき、620円(税込)の交付手数料が必要となります。
よって33単位を取得するためには、620円×11講座=6,820円の交付手数料が別途必要です。講習代の4,000円と合わせると、10,820円を支払わなくてはなりません。
m3ラーニングだけでは研修認定薬剤師の取得は不可能
もう一つの注意点として、m3ラーニングだけでは研修認定薬剤師の取得は不可能といういことがあります。
単位の発行を行う薬学ゼミナール生涯学習センターにアクセスすると、次の内容が記載されています。
当センターの認定評価委員会が審査し承認したe-Learningによる学習は、想定学習時間90分につき1単位とし、新規認定申請時28単位、更新認定申請時は21単位を上限とします。
つまりm3ラーニングでは、新規申請時の40単位のうち、28単位までしか利用できないのです。
残りの12単位は別の方法で単位を集めなくてはならず、他のe-ラーニングや研修会に参加しなければなりません。
このことも踏まえた上で、他のeラーニングとも比較してうまく活用してみましょう。
m3ラーニング | MPラーニング | メディカルナレッジ | |
---|---|---|---|
単位発行対象の講座数 | 不明 | 717講座 | 1,139講座 |
受講料(税抜) | 2,475円(1講座/3単位) | 16,500円(新規取得コース) | 19,800円(120講座コース) |
プロバイダー | 一般社団法人 薬学ゼミナール生涯学習センター | 公益財団法人 日本薬剤師研修センター | 公益財団法人 日本薬剤師研修センター |
11講座4,000円で受講できるプランが2021年9月時点ではおそらくなくなってしまったため、m3.comの割安感は残念ながらなくなってしまいました。
eラーニングにはこの他にMPラーニングやメディカルナレッジが運営するものもあります。こちらもそれぞれ実際に体験してみたレビューを書いていますので、ぜひ参考にご覧ください。
かかりつけ薬剤師はなぜ必要?
そもそもかかりつけ薬剤師になることには、どのようなメリットがあるのでしょうか。時間や費用をかけてまで取得するメリットはあるのでしょうか。
かかりつけ薬剤師とは
かかりつけ薬剤師とは、薬や健康についての豊富な知識と経験を持ち、患者さんのニーズに合った相談に応じられる薬剤師のことをあらわしています。
ひとりの薬剤師がひとりの患者さんの服薬状況をまとめて管理することにより、薬の重複や飲み合わせを防ぎ、薬を安心安全に服用していただけるようになります。
薬のことだけでなく、身近な医療の専門家として患者さんの健康や医療の相談に乗り、国民の健康に貢献することが期待されています。
かかりつけ薬剤師のメリット
かかりつけ薬剤師には、さまざまなメリットがあります。ここでは、代表的な例をみていきましょう。
服薬情報の総合的な把握ができる
複数の医療機関にかかっている患者さんにおいては、かかりつけ薬局を利用することで、服薬を総合的に管理することが可能となります。継時的に服薬情報を把握することで、処方にミスがあった場合にも、早期に発見することが期待されています。
重複投薬の防止につながる
胃薬や便秘薬などの補助的な薬剤は、医薬品による副作用をおさえる目的で、複数の医療機関から重複して処方されることもあります。かかりつけ薬剤師が処方された医薬品をまとめて把握することで、重複投薬を防げます。
地域の医療の窓口となる
現代の医療においては、疾患ごとにかかるべき医療機関が細分化されており、患者さんが自身の判断で適切な医療機関をみつけることは難しくなりつつあります。薬剤師が窓口となり相談にのることで、適切なアドバイスをおこなうことが期待されています。
転職時にプラスポイントとなる
かかりつけ薬剤師になると、請求できる点数も増えます。薬局の信頼性とともに収益増加にもつながるため、資格を持っていると転職で有利になる可能性があるのです。
調剤報酬改定で薬局の運営が厳しくなってきている今、収益増加に関与できるかかりつけ薬剤師の資格は十分なアピール要素となります。
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かかりつけ薬剤師のデメリット
かかりつけ薬剤師になると、業務上の負担も増えるため、人によっては「かかりつけ薬剤師を辞めたい」と考えるようになる方もいます。
休日や夜間でも対応する必要がある
患者さんとかかりつけ薬剤師の同意を得られた場合、患者さんに勤務表と連絡先を渡さなければなりません。困ったときは24時間いつでも連絡できるようにするためです。
そのためいつ患者さんから連絡が来るかわかりません。休みの日や夜中に電話が来ることもあるでしょう。
患者さんからの電話の頻度はそこまで多くはないものの、いつ電話が来るかわからない状況は意外とストレスに感じるものです。
薬局薬剤師
かかりつけの取得をノルマとしている薬局もある
中には「薬剤師1人につき○○人のかかりつけ患者を取得するように」と、上からお達しが出ている薬局もあります。
時にはノルマを達成するためにかかりつけの契約を結ばなければなりません。ノルマのためにかかりつけになるのが嫌だと感じることもあるでしょう。
かかりつけ薬剤師の要件
かかりつけ薬剤師となり、「かかりつけ薬剤師指導料」を取得するための要件には、どのようなものがあるのでしょうか。
- 薬局の勤務経験が3年以上あること(※1)
- 薬剤師認定制度認証機構の研修認定薬剤師を取得していること
- 勤務先の薬局に1年以上在籍していること
- 勤務先の薬局に週32時間以上勤務していること(※2)
- 医療に関わる地域への取り組みをおこなっていること
※2 育児などのために短時間勤務を行う場合、週24時間以上かつ週4日以上勤務していること
かかりつけ薬剤師となるためには、一定の経験や知識、実績が必要とされています。薬剤師として3年間の実績があり、研修認定薬剤師を取得することが必須条件とされています。
また勤務先の薬局で継続して1年以上はたらいていることや、週32時間以上勤務していることが必要です。2018年度改定では、育児や介護をしている方への配慮がなされました。
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【コラム】実際にm3.comのe-ラーニングを受講した筆者の体験談
m3ラーニングをご紹介するにあたり、実際に私も購入・受講してみました。
購入から受講まで
はじめに購入から受講までの流れを解説していきます。
※私はm3.comに既に登録していましたが、未登録の方は無料の会員登録が必要となります。
上部の「臨床・学習」タブの中にある、「m3ラーニング」をクリックしましょう。
ここでは、先ほどご紹介した「m3ラーニング11講座まとめ買いセット」を4,000円で購入してみます。
支払方法としては、現在のところクレジットカード決済のみが利用可能となっています。
メールのリンクから受講できますが、直接m3.comにアクセスして受講することも可能です。
購入自体は非常に簡単で、特に困ることはありませんでした。インターネットで買い物をしたことのある方であれば、問題なくすすめていけると考えられます。
支払方法は現在のところクレジットカード決済しか対応していないので、カードを持っていない方や、勤務先に支払いの控えを提出したい方にとっては、不便かもしれません。(他社のものでは、コンビニ決済が可能なものもあります。)
気になる講義の内容は?
次に、実際に講義を受けていきましょう。
90分で1単位が目安ですが、講義1つあたり70分前後なので、残りは確認テストの時間でしょうか。
パートごとにクリックしなくてはならないのは、流しっぱなしにすることへの対策と考えられます。
確認テストはどのような内容なのでしょうか…?
「全て正しい」や「全て誤り」という選択肢もあるので、消去法というわけにはいかないようですね。
8点以上が合格のようです。何度でも挑戦できるので、あせらず頑張りましょう。
久しぶりのテストだったので緊張しましたが、なんとか合格できて一安心です。
講義の内容をきちんと聞いていたから合格できましたが、他の作業をしながらなんとなく受講したのでは、合格できない程度の難易度でした。
受講を終えた感想は?
その後2つの講義を受講して、合計3つの確認テストに合格しました。ひとまずは1講座を受講して、3単位を獲得しました。やはり自宅で単位を集められることには、メリットがありますね。
地域の薬剤師会の研修会にも参加しており、私の地区では薬剤師会会員で1,000円、非会員で3,000円の参加費用が必要となります。
会場が2駅離れた場所となるため、電車代も往復で500円程度必要となることを考えれば、e-ラーニングで単位が取得できれば金銭的にも時間的にも助かります。
小さい子供がいる方や、残業が多く仕事の都合がつかない方にとって、e-ラーニングは非常にオススメできる方法と考えられます。
ただしm3ラーニングだけですべての単位を取得することはできず、その点についての説明もわかりにくいため、ある意味では不親切であると感じました。
この辺りが改善されていけば、さらにm3ラーニングは価値のあるものになっていくのではないでしょうか。
まとめ
かかりつけ薬剤師や研修認定薬剤師の仕組み、効率的な単位の取得方法について解説していきました。
この記事ではm3.comのm3ラーニングを中心にご紹介しました。そのほかにもさまざまな団体がe-ラーニングをおこなっています。
かかりつけ薬剤師を維持していくためにも、3年ごとに30単位以上(年間5単位以上)の受講が必要とされており、e-ラーニングを利用する方は今後も増えていくと考えられます。
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