「一人だとミスしないか心配」
「調剤も鑑査も自分一人だから、ストレスがたまる」
本来なら複数人でやるべき業務を一人で行う一人薬剤師には、さまざまな悩みや不安がつきまといます。
もし何か重大なミスをしてしまったら…と、一人だと何かと不安になりますよね。私も調剤室にいる薬剤師が自分ひとりになったときは、とても不安でした。
今回は一人薬剤師でもうまく業務を回す方法、休憩の取り方、メリットやデメリットなどをご紹介します。
薬局薬剤師
この記事の目次
一人薬剤師はデメリットが多い
わざわざお伝えすることでもないかもしれませんが、一人薬剤師で薬局を回すことはいくつものデメリットが付きまといます。
自分自身への負担も大きいですし、時には患者さんへ迷惑をかけてしまうこともあるものです。
調剤から鑑査まで一人で行う必要がある
一人ということはつまり、調剤から鑑査、服薬指導まですべて自分一人でこなさなければなりません。調剤事務員さんがいない場合はレセプトの入力も業務に含まれます。
本来ならレセプトの入力、調剤、鑑査はすべて別々の人が担当するのが望ましいとされています。しかし一人薬剤師の場合は、すべて一人で対応するのです。
ワンオペでこなすと防げるミスも、気がつけたはずのミスも見過ごすことになる可能性が高くなるため調剤過誤のリスクが高まります。
疑問点を聞けない・知識が増えない
一人薬剤師ということはもちろん、周りに薬剤師が自分以外一人もいない状況です。そのため聞きたいことがあっても誰にも相談することができません。
すべて自分で調べる必要があります。どんなに経験を積んだ薬剤師でも仕事中にわからいことは必ず出てくるもの。
誰にも聞けず、自分一人で調べなければいけないのは少々怖いものです。
誰にも聞けないこともあり、自身が成長できないことに不安を抱く方も多いです。実際に知恵袋にはこのような投稿がありました。
薬剤師が勉強するには?
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やっぱり、大きな薬局に転職したほうがいいですか?引用:知恵袋
他の薬剤師たちの知識を吸収できないのは、なかなかツライものですよね。
薬局薬剤師
クレーム対応もすべて自分一人
厄介なのがクレーム対応です。「責任者を出せ!」と言われても他に誰も出せません。
クレーム対応というのは基本的に、クレームを受けた張本人とはまったく別の誰かに間に入ってもらうことで収束を迎えやすくなるもの。
一人で対応していては火に油を注ぐことになりかねません。
休みを取りたいときは代理を見つける必要がある
薬局を開けている日にどうしても休みを取りたいとき、一人薬剤師の場合は代わりに入れる薬剤師を見つけなければなりません。
代理の薬剤師を見つける責任が薬局の経営者にあるのか、それとも薬剤師自身にあるのかによっても休みの取りやすさは変わりますが、複数の薬剤師がいる薬局と比べると、どうしても希望日に休みを取りにくくなります。
休憩にゆっくり入れない
お昼ごはんを食べようと思っても、いつ患者さんが来るかわからないのでゆっくり食べることはとても難しいです。
結局、患者さんが途絶えずにお昼を食べられなかった経験がある一人薬剤師も少なくありません。
お昼ごはんすらまともに食べられない日が毎日のように続くと考えると、憂鬱になってしまいます。
実際にワンオペで薬剤師をしている人の声
ワンオペ営業をしている薬剤師の声をいくつか集めてみました。一人薬剤師の切実な心の声をご覧ください。
https://twitter.com/Takafuku23/status/1092173842401746944
定時ですが、まだ薬歴1枚も書けてません。#一人薬剤師
— さく (@za_yi) November 22, 2017
昼めしin
+6分 レンチンしたミートソーススパを一口食った所で呼び出し。やたらめんどくさい処方が続いて舞い込む。
+60分 昼めし復帰。スパ冷え冷えカチカチにつき、捨てて新たにチン。昼めしぐらいゆっくり、温かいまま食いたい。#一人薬剤師 #つらい pic.twitter.com/aQI8rZnWoy
— さく (@za_yi) May 11, 2017
一人薬剤師で日数の多い一包化はツライですね。定時なのに薬歴がまったく書けていないのは一人薬剤師もはや一人薬剤師あるある。
お昼休憩もろくに取れないままワンオペを続ける薬剤師も少なくありません。
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一人薬剤師にはメリットもある
調剤ミスが増え、休憩もなかなか取れない一人薬剤師。しかし一人薬剤師は悪いことばかりではないのです。人によっては一人薬剤師の方がいい!と思われる方もいます。
人間関係に悩まない
自分一人しかいないので、人間関係に悩まなくて済むというメリットもあります。
一人であるがゆえにすべての責任を自分一人で負うことになりますが、誰にも文句を言われることなく自分のペースとやり方で仕事を進めることが可能です。
スキルを高められる
すべての業務を自分一人で行う必要があるため、調剤に関わることは自分で何でもできるようになります。
医師への疑義照会や廃棄管理、レセプト入力や回収対応など何でもお手のものです。
年収の高い職場が多い
一人薬剤師の職場は基本的に年収が高めなことが多いです。ワンオペでの営業が大変だということは募集をかける側もわかっているんですね。
そのため年収が高めに設定されています。実際の求人を見てみましょう。
※画像をタップすると拡大できます。
参考:薬キャリ 2020年5月時点
薬キャリで「一人薬剤師」と検索して出てくる求人の多くは、年収600万円以上でした。上記の求人のように年収700万円を超える求人も多く見つかります。
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一人薬剤師は「違法状態」に注意
デメリットとメリットとがそれぞれある一人薬剤師ですが、気にするべきことは他にもあります。
それが法律違反です。一人薬剤師をすることで法律違反を犯してしまうリスクも高まります。
労働基準法違反になる可能性
一日中一人で調剤の対応を行わなければならない場合、おそらくお昼休憩もろくに取れないことがほとんどでしょう。
労働時間が8時間を超える場合は必ず60分の休憩を取る必要があります。
しかし一人薬剤師だと患者さんが来ないスキマ時間にちょこちょこ休憩を取るケースもあります。トータルで60分休憩を取れていない場合も多いです。
60分間の休憩が取れないことはもちろん労働基準法違反。さらに5分や10分休憩を繰り返すような細切れな休憩は、そもそも休憩を取っているとみなされないことも。
調剤事務員の扱いも注意
厚生労働省からの通知により、調剤事務員のピッキングが違法ではなくなりました。しかし調剤事務員がピッキングをするには薬剤師の目の届く範囲で行う必要があります。
また水剤や散剤の計量、混合も不可です。忙しいあまり、調剤事務員が本来やってはいけない調剤を押し付けることにならないように注意しなければなりません。
【厚労省通知】薬剤師以外(調剤事務など)、のピッキング・一包化の実施が可能に!薬剤師法に照らし、「調剤行為」の範囲を再定義してみた。
一人薬剤師で切り抜ける方法
一人薬剤師が本来、推奨されるべき働き方でないことは、ほとんどの薬剤師が認識しているはずです。
しかし経営上のやむを得ない理由により一人薬剤師の店舗はどうしてもできてしまいます。
すでに一人薬剤師として働いている場合、どういった対策ができるのでしょうか。
過誤を防ぐ設備を整える
まず過誤による被害を起こさないために、調剤を行う環境を整えます。
一人薬剤師の店舗に限って紙薬歴だったり調剤過誤の防止システムが整っていなかったりしますので、まずは環境から見直しましょう。
過誤防止のためにシステムを導入してほしいと上に持ちかけると、導入してくれるケースもあります。
バーコード調剤過誤防止システム
散剤を調剤する場合、あると安心なのがバーコードによって医薬品を管理するシステムです。
ラベルについているバーコードを読み込ませながら調剤を行うことで、何を何g使用したのかが紙に印字されて出てきます。
散剤は瓶から出すと何が何だかほとんどわからなくなるため、バーコードでの管理システムがあると安心です。
カメラ監査指導
ワンオペ中に一番気になるのって、鑑査ではないでしょうか。ここでミスを見逃すとそのまま患者さんへ間違ったお薬を提供してしまう原因になります。
鑑査をスルーしないために、遠隔でカメラを使って鑑査してもらうシステムを導入している店舗もあるのです。調剤したお薬をカメラに映し、第三者から鑑査をしてもらいます。
DI室を活用する
職場によってはDI室が完備されているところもあります。時間内であれば電話をかけるとすぐに対応してくれますので、DI室が完備されている場合はとことん使い倒しましょう。
いくら調べてもわからないことでもDI室に相談するとすぐに答えが返ってくる場合があります。
患者さんを巻き込んで監査
ワンオペ営業の場合は、患者さんを巻き込むことも大事です。
いつもと同じ処方であっても、しっかり中身を見せ、数を確認することで「これ、この前のお薬と違う気がする」と指摘してもらえることがあります。
過誤が増えてきたらエリマネに相談!
調剤過誤は疲労がたまると起こりやすくなるものです。疲れているときは頭がぼーっとして働かないこともありますよね。
一人薬剤師だと常に気を張っている必要があり、しかも休憩も取りづらいため疲労がどんどんたまります。
結果として調剤過誤を引き起こすことも十分に考えられるため、最近ミスが増えてきた、集中力がなくなったと感じたらすぐにエリアマネージャーに相談してください。
一人薬剤師の方は転職するのが一番
人によっては誰にも干渉されずに働けるので、一人薬剤師が向いている方もいるかもしれません。しかし一人薬剤師はやはり、推奨されるべき状況ではないと言えます。
一人薬剤師の現状を変えることは難しい
一人薬剤師をする必要がある薬局は、安全性や労働者の働きやすさよりも人件費の削減を優先している企業です。人員が集まらなくてやむを得ず一人薬剤師の店舗もあるかもしれません。
どのような背景にしろ「一人薬剤師でやっていくのが原因なので人員を増やしてください!」と言ってもなかなか状況を変えることは難しいものです。
転職して新しい職場でワンオペを終わらせる
環境を変えることが難しいのなら、自ら別の環境へと足を踏み入れるしかありません。
一人薬剤師であることに疑問や苦痛を感じたら、働きやすい職場を探し始めましょう。新たな環境に進んでいくことが一番の方法です。
転職サイトを使って就業環境の悪い職場は省いてもらう
とはいえ自分で転職先を探していると、また同じように一人薬剤師の店舗で働くことになるかもしれません。
日によって一人だったりそうでなかったりする職場もあり、自分でそれを見分けるのは困難です。
そのため求人先の情報をしっかり把握している転職サイトを活用しましょう。一人薬剤師になる可能性のある職場を転職サイトに除いてもらうことで、うっかりワンオペを防げます。
薬キャリに登録してみよう!
ホワイトな一人薬剤師の職場を見つけるコツ
一人薬剤師の職場はどこもブラックかと言われると、そうではありません。職場によっては思っているよりも働きやすいところもあります。
調剤事務員がいるかをチェック
調剤事務員がいるかいないかで、忙しさは大きく変わるものです。処方せんの入力まで自分でするとなると非常に大変ですので、調剤事務員がいるかどうかは必ず確認しておきましょう。
一人いるだけでも、薬剤師が調剤と服薬指導に専念しやすくなるので、作業効率が大きく変わります。
ずっと一人なのか、一人の時間もあるだけなのかをチェック
一人薬剤師と呼ばれる職場には、大きく2つの種類があります。1つは、薬局を開けてから閉めるまでずっと一人の職場。もう一つは忙しい時間帯だけ複数人で対応して、暇なときは一人になる職場です。
一日中一人で対応する薬局だと、休憩すらまともに入れないこともあります。しかしピーク時だけ複数人体制のところであれば、他の人がいるうちに休憩に入れるのでご飯を食べているときに呼び出される心配がありません。
常に一人なのか、一人になる時間もあるだけなのかは確認しておきましょう。
まとめ
一人薬剤師という状況は、リスクを考えるといいことではありません。一人で調剤から鑑査までするため調剤過誤を起こす可能性が高まります。
調剤過誤を起こしにくい環境を整え、DI室を活用することにより一人薬剤師でも対応しやすくなりますが、やはりできれば一人薬剤師という働き方は避けたいもの。
職場の環境を変えることは難しいため、改善案としては転職が現実的でしょう。
一人当たりの処方箋枚数が40枚だと決められてはいますがそれはあくまで平均枚数での話です。限界が来る前に転職も候補に入れましょう。