海外と日本とでは薬剤師の地位が違うと聞いたことがありませんか?基本的に海外の薬剤師のほうが日本の薬剤師よりもできることが多いと言われています。
「海外の薬剤師は予防接種の注射ができると聞いたけど本当?」
「どうすれば海外で薬剤師として働けるの?」
ここでは海外の薬剤師が気になる方に向けて、海外と日本の薬剤師の違い日本人の薬剤師が海外で働く方法などをご紹介します。
薬局薬剤師
この記事の目次
海外で薬剤師になる方法
日本では、薬剤師になるためには「6年制の薬学部卒業」+「国家試験合格」が必要です。
海外でも日本と同じように各国のルールが設けられており、その国の法律に沿って薬剤師を目指さなければなりません。
そのため日本で薬剤師の資格を取得しているからといって、好きな国へ行って薬剤師の仕事ができるというわけではないのです。
アメリカの場合
アメリカで薬剤師になるためには、大学院博士課程で学位を取得して、薬学博士号を取得しなければなりません。このプログラムは4年制が多いですが、「3年制」や「6年制」といったプログラムもあります。
プログラムを終えると、北米薬剤師免許試験と薬局法学試験の両方に合格しなければなりません。
すでに日本で薬剤師資格を持っている場合でも、アメリカで薬剤師になるためには大学課程を修了する必要があります。
アメリカは州ごとに薬機法が存在するため、ここも日本とは大きく異なる点でしょう。
大学に入り直す以外にもう1つアメリカの薬剤師になる方法があります。FPGEEと呼ばれる試験に合格し、さらにTOEFULで必要な点数を取得するとアメリカの薬剤師国家試験を受けられるようになるのです。これに合格すればアメリカで薬剤師免許を取得できます。
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韓国の場合
韓国で薬剤師になるためには、6年制の大学を卒業してから国家試験に挑み、合格することで薬剤師になることができます。
すでに日本で薬剤師資格を持っている場合、韓国の大学を卒業する必要はなく、国家試験に合格すれば薬剤師として働くことができます。
日本とアメリカの違いに比べると、韓国はかなり日本に近いシステムです。
海外各国における薬剤師になる方法を調べるには?
海外で薬剤師になることを検討している方は、目的国の言葉を勉強していると思います。
基本的に海外サイトを使って情報を調べることができますし、メールや電話で各国の行政機関へ問い合わせるのも1つの方法です。
また、日本大使館がある国においては、日本大使館へ連絡することでも薬剤師事情を教えてもらえるかと思います。
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海外で働く薬剤師の仕事内容
アメリカで働く薬剤師の年収をご存知でしょうか。なんとアメリカの薬剤師は平均で1,300万円以上ものお給料を貰っています。日本の薬剤師の平均年収が550万円くらいなので、倍以上ありますね。
これほどにまで年収に差があるのは、アメリカと日本とで薬剤師に許可されている行為が異なるからです。日本の薬剤師がまだ許可されていない海外薬剤師の仕事をいくつか見てみましょう。
リフィル処方せん
日本でも導入しようという声があがっているリフィル処方せんは、アメリカではすでに浸透しているシステムです。日本では処方せんは1度しか使えない上に、有効期間が処方日を含めて4日しかありません。
しかしリフィル処方せんであれば医師が指定した回数なら何度でも使えますし、期限もほとんどの処方せんで1年間有効となります。リフィル処方せんがあれば初回のみ医師の診察を受け、あとは病院に行くことなく指定の回数分のお薬を薬局で貰えるのです。
病院に行くことなく何度もお薬を貰えるということはつまり、薬剤師がその間、患者さんの病態を見ておく必要があるということ。保険制度の違いも背景にありますが、薬剤師の信頼が高いからこそ定着しているシステムと言えるでしょう。
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予防接種ができる
アメリカでは州によって違いはあるものの、基本的にインフルエンザの予防接種も薬剤師が行います。日本の薬剤師が患者さんに針を刺すことなんてないので、これは驚きですね。
患者さんに簡単な問診票に記入してもらえば、薬局やドラッグストアにいる薬剤師でも予防接種を普通に打ってもらえます。
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処方権がある
日本だと薬剤師は医師が処方したお薬を調剤することしかできませんが、イギリスやアメリカでは薬剤師の処方権が認められています。
しかし処方権を得るにはいくつかの条件をクリアする必要があるということで、すべての薬剤師が処方権を持っているわけではありません。
限られた薬剤師だけとはいえ、薬剤師も処方できるのは日本にはない大きな特徴です。
薬剤師が海外で働くメリット
日本の常識が海外ではまったく通じないことは、とくに珍しいものではありません。海を超えた土地で働くことで、さまざまなメリットを得られるでしょう。
海外の薬剤師の立場がわかる
日本と海外とでは、薬剤師の立場が大きく異なります。とくに医療先進国であるアメリカとは大きな差があるでしょう。アメリカの薬剤師の平均年収が1,300万円あることからも、業務内容に差があることは一目瞭然です。
予防接種をしたりリフィル処方せんを扱ったり、薬剤師を頼りにして健康相談をしに来てくれる方と対応したりと、日本では見られない光景が普通に広がっています。
海外で働くことで、日本の薬剤師にたりないもの、改善すべきことがより明確化されるでしょう。もちろん同時に日本の薬剤師が優れていることも実感できます。
語学の勉強ができる
海外での勤務に興味がある方の中には、英語が好きだったり、これから語学力を磨きたいと思ったりしている方も多いのではないでしょうか。
日本を出れば当然、使われている言語が違うので自然と語学力もアップできます。日常会話にプラスして薬剤師の業務に必要な医療系の単語にも触れられることが特徴です。
実は海外で語学をマスターすると、日本に帰ってきてからも仕事に活かすことができます。たとえば観光客の多い地域だと英語が使えることは、大きなプラスポイントとなるでしょう。
海外の方が多く来られる薬局でも英語が話せる薬剤師がいないことも珍しくないため、間違いなく即戦力となります。
身につけた語学力を副業にも活かせる
近頃では副業に興味をもつ方も増えてきました。薬剤師で副業をしている方を探してみると意外といるものです。
英語力を身につけられれば、翻訳のお仕事を副業にできます。英語から日本語にしたり、日本語を英語にしたりするお仕事です。
翻訳の副業はネット環境さえあれば簡単に始められるので、帰国後に英語力をキープするためにも始めてみてはどうでしょうか。
海外の薬剤師として働く方法
日本で薬剤師として就業している状況において、基本的に海外へ転勤となることはまずありません。
これは日本と海外では薬剤師事情が異なることが主な理由です。
自分で海外勤務を選択した転職
薬剤師の海外勤務は、自分で海外勤務を選択するケースがほとんどです。
他職業と違うところは、目的国の言葉を話せたとしても薬剤師の仕事ができるわけではないため、家族が海外へ転勤することに伴って自分も海外で薬剤師の仕事をするといったケースは少ないでしょう。
世界には発展途上国も含めてさまざまな国があるため、日本の薬剤師資格があればそのまま働くことができる国があるかもしれませんが、そうした国へ間接的な理由でいくことになり従事するというのも稀だと思います。
海外の薬学部を卒業する
働きたいと思っている国の大学を卒業するのは、もっともメジャーな方法です。日本の薬学部を卒業した後に海外の大学へ入り直すのもよいですし、初めから海外の大学へ入るのもよいでしょう。
日本の薬科大学を卒業してから海外に行く場合は、一部の単位が免除になることもあります。
大学で勉強している間に語学力もつきますし、周りの学生と同じように就職活動もできるのが大きなメリットです。
海外ボランティアやワーキングホリデーなど
- ボランティア
- ワーキングホリデー
- インターンシップ
ボランティア
ボランティアとして海外で薬剤師の仕事をする場合、基本的には「応募条件」を確認するだけで可否を判断できます。
「青年海外協力隊」なら、「受け入れに必要な条件」が記載されているので、それを満たすことができるなら参加できます。
たとえば、東ティモールディリ国立病院のボランティアなら、薬剤師の実務経験3年以上・病棟での業務支援や助言が可能なこと・病院勤務経験2年以上が条件です。
選考選定の言語については記載がないため、定員に満たない場合、語学力を問わないのかもしれません。
「国境なき医師団」もボランティアでは有名な団体です。
こちらは以下のように応募条件が記載されているます。
- 求める人物像に記載されている資質をそなえている(必須)
- 2年以上の臨床経験(必須)
- 総合病院での勤務経験(必須)
- マネジメント・監督・教育の経験(必須)
- 海外での経験
- フランス語またはアラビア語でのコミュニケーション
- 在庫管理の経験
国境なき医師団で活動したい場合は、まず総合病院で経験を積んでいくのがもっとも近道となるでしょう。英語ではなくフランス語やアラビア語の習得も必要となります。
ワーキングホリデー
ワーキングホリデーとして海外で薬剤師の仕事をするのは、実際のところかなり難しいです。
まず、ワーキングホリデーは国によって年齢制限(大体が30歳)があるので、20代前半でワーキングホリデーを検討するのが一般的です。
日本で薬剤師の資格を取得してから海外へ行くなら、6年間は日本で過ごすことになるため、時間的にワーキングホリデーは非現実的な方法となります。
ワーキングホリデーを語学留学として検討する方が多いと思いますが、海外で薬剤師の仕事をすることを決めているなら、目的国によってはもっと早い段階で語学をマスターしておく方がいいかもしれません。
たとえば、アメリカで薬剤師になるならアメリカの大学を卒業する必要があるため、中高生の頃から英語を勉強しておき、大学の進路を決める時にはアメリカの大学を検討できるのが理想ですよね。
日本で薬剤師の資格を取ってからアメリカで薬剤師の資格も取る場合、語学学習する期間を除いても、実際に薬剤師として働き始めるのは30代~40代になってしまいます。
インターンシップ
インターンシップも、各イベントごとに参加条件等を確認していきましょう。
「仕事の観察」や「雰囲気の体験」という意味では、対象国における薬剤師資格が必須ではないので、ボランティアやワーキングホリデーに比べると選択肢は多いかもしれません。
「プロジェクトアプロード」では、発展途上国などで薬局等の仕事を観察したり補助できるといったインターンシップがあります。
薬剤師資格などの参加条件はとくにないので、費用を用意することができるなら誰でも参加できます。
薬剤師が海外勤務する上で絶対に必要なもの
- 資格
- ビザ
- 語学力
- お金
- 異国でもやっていく強い気持ち
基本的にもっとも大事なのが「計画」なので、なるべく早い段階から計画を立てて準備を進めるほど、その国で薬剤師として働ける日も早くなるでしょう。
「お金」が最大の悩みかも・・・?
これから目的国を決めて資格を取るという状況においては、やはり金銭面が何よりも大きな悩みになるかと思います。
たとえば、日本の薬剤師資格を持っている場合、韓国は国家試験に合格するだけでいいですが、アメリカは大学を卒業する必要があるので学費と生活費を考えると相当なお金が必要です。
日本で薬剤師資格を取るだけでも高額な費用がかかるので、それに加えて「渡航費」や「資格取得費用」などを計算していくと相当な金額になることもあります。
金銭面も含めて早い段階から準備を進めることが本当に大事ですね。
海外における薬剤師の仕事の探し方
海外での薬剤師の仕事探しは、個々の状況(資格の有無など)や国によってベストな方法が異なります。
基本的には目的国へ行ってから仕事を探すのがベターであり、先に仕事を見つけたところで「語学力がない」や「資格がない」といった状況では意味がありませんね。
夢を叶えるためには?
薬剤師として海外で働くという夢を叶えるためには、入念に計画を立てて準備することに尽きます。
たとえば、アメリカで薬剤師の資格を取得して就職活動できる状況になれば、そこからは日本と同じです。すぐに仕事が見つからないこともあるでしょうが、これはもう各国の転職事情に尽きます。
国によって薬剤師の就職率等は異なりますが、それでも仕事が一切ないということはないと思います。こうしたお国事情も含めて「計画」だと思うので、時間をかけて細かいところまでリサーチすることが大事です。
海外勤務の先輩薬剤師が発信する情報を知りたい時はどうすればいい?
転職では先輩薬剤師の意見がとても参考になる場合があります。海外勤務の場合は、やはり現地で知り合った人からアドバイスをもらうのが確実です。
目的国で薬剤師経験があり、さらに日本で薬剤師として活躍している人を身近で探すのは相当な運が必要です。
これから計画を立てていくという状況なら、ネット上でも海外薬剤師に関する情報が色々とあるので、目的国を軸に情報を収集してみてはいかがでしょうか。
また、薬学生の場合なら、各大学が開催している国際交流を活用するのも便利ですね。
日本で海外の薬剤師求人は見つかるの?
- 応募条件:日本の薬剤師資格と就業経験2年以上
- 職種:薬剤師
- 就労国:タイ
- 給与:377~564万円
- 福利厚生:就労ビザやタイの社会保険など
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現状、海外の薬剤師求人は極端に少ないので、本当に自分が働きたい国で薬剤師の仕事をするなら、現地へ行ってから求人を探す方がいいでしょう。
海外にある日本人向けの医療機関を探す
海外の病院にはまれに日本人患者向けの病院もあります。たとえばこちらのシンガポールにあるジャパングリーンクリニックも、日本人のために開設されているクリニックです。
現地に住む日本人や、観光でシンガポールに訪れた日本人をメインで診察しています。ホームページを見てみると薬剤師の求人が掲載されていました。
日本で薬剤師としての経験が5年以上あり、なおかつ英検2級以上の英語力があれば応募できるそうです。ジャパングリーンクリニックの病院に実際に足を運んだことがあるのですが、薬局では日本語があまり話せない現地のスタッフもいたので、それなりの英語力がないと働くのは難しいかもしれません。
しかし大学に行き直したり、試験を受けたりせずに海外で働けるので海外で働きたい方には大きなチャンスと言えるでしょう。