薬剤師は女性の割合も高く、家庭と仕事を両立させるためにも、パートや派遣という働き方が注目されています。
また現代の社会では、男性も女性も関係なく家庭に入ることが当たり前になりつつあるため、男性であっても正社員という枠にとらわれない、新しい働き方を選択する方も増えているものです。
薬剤師は時給が高い職種であり、非正規社員であっても、正社員と変わらない条件で働く方もみられます。
この記事では、薬剤師のパートと派遣の違いや、それぞれのメリットについて解説していますのでぜひ参考にご覧ください。
薬局薬剤師
詳しく薬剤師のアルバイト、平均時給は○○円!時給が高い求人の特徴とは?ドラッグストアは土日・夜間出れる有資格大学院生に人気のバイト
この記事の目次
パートと派遣薬剤師の違いとは
パートと派遣は、どちらも非正規の働き方ですが、その仕組みは大きく異なります。詳しくみていきましょう。
パートと派遣はどう違う?
パート | 派遣 | |
---|---|---|
雇用契約先 | 企業 | 派遣会社 |
勤務時間 | 自由に選べる | 自由に選べる |
有給休暇 | あり (ただし取りづらい) | あり (パートより取りやすい) |
雇用期間 | 退職を希望しない限りずっと働ける | 一定の期間しか働けない |
時給 | 2,000円~ | 2,800円~ |
社会保険 | 勤務時間によっては入れる | 派遣会社の条件を満たすと入れる |
パート
パートとは「パートタイマー」の略で、非正規雇用の代表的な働き方です。パートの他にもアルバイトという働き方もあります。こちらはドイツ語の「Arbeit」を語源としたもので、原則的にはパートと同義です。
薬剤師におけるパートでは、一か所の薬局や企業と直接雇用契約を結び、原則的には同じ場所で勤務をおこないます。正規労働者(正社員)よりも短い時間で働くことが特徴です。
派遣
一方で、派遣とは企業が派遣会社に依頼することで従業員が派遣され、業務をおこなう形態のことをあらわしています。従業員は派遣会社と契約を結び、派遣会社の社員としてはたらきます。
薬剤師における派遣では、薬剤師専門の派遣会社に登録をして雇用契約を結び、さまざまな薬局やドラッグストアに出向いて勤務をおこないます。派遣会社に直接出社するのではなく、派遣先で働くことが特徴です。
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派遣薬剤師の3つの働き方とは?
派遣薬剤師と一口にいっても、3つの働き方があることはご存知でしょうか。
- 一般派遣(レギュラー派遣)
- 単発派遣(スポット派遣)
- 紹介予定派遣
個人のニーズやライフスタイルにあわせて、最適な働き方を選びましょう。
一般派遣(レギュラー派遣)
他の職業でもよくある派遣としてイメージされるのが、こちらの一般派遣(レギュラー派遣)です。
具体的な定義はありませんが、2~3か月程度を目安に契約を結び、更新の合意があれば契約を延長、折り合いがつかなければ契約満了をもって終了となります。
一定期間は同じ職場で働けるので、未経験の科目であっても、問題なく働けます。
案件が終了しても、派遣会社の社員としての籍は残るので、他の派遣先を紹介してもらったり、後述の単発派遣で働くことも可能です。
詳しく【徹底解説】派遣薬剤師の転職でおすすめ派遣会社・時給相場・メリット・デメリットなどまとめました!
単発派遣(スポット派遣)
単発派遣(スポット派遣)は、読んで字のごとく、1回ごとの単発で派遣される働き方です。
インターネットやメール、電話などで折り合う案件を探し、派遣会社を通じて申し込みます。
基本的には1日限りの契約で働くので、どこの職場でもすぐに業務ができる経験やスキルが求められます。
パートと組み合わせて、空いた日だけ単発派遣を入れることもできるので、人気の働き方です。
紹介予定派遣
派遣のな中でもおもしろい働き方が、こちらの紹介予定派遣です。
転職の際に薬局の雰囲気を知りたいと思う方は多いですが、実際に現場で働いてみないと、その薬局の様子を正確に知ることはできません。
紹介予定派遣では、派遣として働きつつ、双方の合意があればそのまま正社員になることができるのです。
薬局側にも、正式に採用する前に人柄を確認したり、現在いるスタッフとの相性をみることができるので、メリットがあるといえます。
薬剤師がパートで働くメリット・デメリットとは
パート薬剤師は派遣と違い、何年も同じ職場にとどまって働けます。そのため派遣とは違うメリットやデメリットがあることが特徴です。
メリット
パートで働くメリットについて、みていきましょう。
- 安定した給与が見込める
- 慣れた薬が多いので業務の負担が小さい
- 人間関係を毎回築く必要がない
- 自宅から近い職場で働ける
パートでは多くの場合、曜日や時間を決めて定期的に働くこととなります。派遣では、タイミングによっては仕事がなかなか見つからないこともありますが、パートではその心配はありません。
また、毎回同じ職場で働けることもあり調剤経験のある薬が中心となるため、精神的に楽という特徴もあります。人間関係もある程度できてしまえば、気をつかうこともなくなるでしょう。
職場も選べるので、自宅から近い職場で働けば通勤の負担も小さく、お昼休みに家に帰って家事をこなすこともできますね。
デメリット
- 求人の多くは調剤薬局またはドラッグストア
- どんなに長く務めても出世は難しい
- 福利厚生は期待できない
どうしてもパート薬剤師の求人は調剤薬局かドラッグストアに限定されてしまいます。病院の求人はほとんどありません。病院で働きたい方には不向きな働き方だと言えます。
辞めない限りは同じ職場で働けるのですが、何年働いても時給が大幅に上がったり役職がついたりすることはないでしょう。契約時点の条件で働き続けることになります。
勤務時間が長い方であれば健康保険や厚生年金の加入対象となりますが、福利厚生もさほど期待できません。
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薬剤師が派遣で働くメリット・デメリットとは
派遣薬剤師はとにかく自由がききやすいことが特徴の働き方です。こちらもそれぞれのメリットとデメリットを見ていきましょう。
メリット
一方で、派遣で働くことにもさまざまなメリットがあります。
- 高単価の求人が多い
- さまざまな科目の薬に触れられる
- 人間関係で失敗しても取り返しがつく
- 自分の意向ではたらき方を変えることができる
- スケジュール管理がしやすい
派遣では、一般的に高単価の求人が多いといわれています。とくに繁忙期と言われる冬場では、時給にして4,000円を超えるような求人もみられます。
あちこちの薬局で働くため、さまざまな科目に触れることができます。キャリアアップのためにも、有効なはたらき方といえますね。期間を決めた勤務であるため、人間関係で失敗してもあとあと問題にならないことも、人気の理由の一つです。
また派遣の最大のメリットは、自分の意向ではたらき方を変えられることです。「冬場はガッツリはたらいて、春に長期の海外旅行に行く」といったメリハリをつけることもできますね。
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デメリット
- 同じ職場で長く働くことはできない
- 派遣先が変わるたびに仕事内容も覚え直し
- 患者さんとの距離を縮めにくい
派遣薬剤師が同じ職場で働けるのは原則1年です。そのため派遣先が変わるたびに新しく仕事を覚え直さなければなりません。
患者さんとの信頼関係をじっくり築いていくのも難しくなるでしょう。やっと距離を縮められたころに派遣先が変わる…なんてこともあります。
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パート・派遣薬剤師の求人を実際に見てみよう
どのような条件で求人が出ているのか、実際に募集が出ているものをいくつかご紹介します。
パートの求人
参考:マイナビ薬剤師 2020年11月時点
最高時給が3,000円なので、相場と比べると高い時給設定になっています。正社員だと最大年収620万円まで可能です。
パートでもフルタイム勤務すれば年収576万円になるため、柔軟な働き方ができそうですね。
参考:マイナビ薬剤師 2020年11月時点
こちらはウエルシア薬局の求人です。パートの時給は2,600円からと相場よりは高めになっています。
ウエルシア薬局は24時間営業の店舗を増やしていっているため、自分の好きな時間帯に働けることが大きな特徴でしょう。
派遣の求人
参考:薬キャリ 2020年11月時点
企業名非公開となっていますが、こちらは薬キャリで「派遣薬剤師×病院」で検索してヒットした求人です。
最大時給3,500円と、パート薬剤師では到底手が届かないような高時給で募集されています。
病院でも派遣薬剤師なら高時給で働ける良い例です。
参考:薬キャリ 2020年11月時点
最低でも時給3,900円、最高時給4,500円と高時給で募集されている調剤薬局の求人です。
勤務日が月・火・水・金となっているので、週休3日でしっかり稼ぎたい方に向いていますね。
人気の薬キャリ薬キャリの口コミ・評判やメリット!薬剤師転職サイトの中でも秀逸で薬剤師の半数が登録
なぜ薬剤師はパートや派遣が人気なのか
一般的な職業であれば、正社員を選択する方が圧倒的に多く、パートや派遣はさほど人気はありません。
しかし薬剤師の世界では、パートや派遣の人気が高いことが知られています。理由をみていきましょう。
高時給であるため効率的に働ける
厚生労働省の報告によると、2020年現在の最低賃金は、全国平均で902円と公表されています。
上記はあくまで最低賃金ですが、特別な資格を必要としない通常の仕事では、パートや派遣の時給は1,000円前後といわれています。
一方で、統計局のデータによると、薬剤師のパートの平均時給は2,367円と報告されています。
参照:令和元年賃金構造基本統計調査 短時間労働者・職種別
また以下の記事でご紹介しているとおり、薬剤師の平均年収は514.9万円、給与所得者の平均年収は421.6万円です。
データで見る、薬剤師の性別・職場別での年収の違い。正社員でも一般薬剤師と管理薬剤師では差がこんなに…?勝ち組薬剤師になるため年収を上げる方法とは…?
これらをまとめると、下記の通りとなります。
薬剤師以外の給与所得者 | 薬剤師 | |
---|---|---|
正社員平均年収 | 421.6万円 | 514.9万円 |
正社員時給換算(A)※ | 1,996円 | 2,437円 |
パート時給(B) | 1,000円前後 | 2,367円 |
差額(A-B) | 約996円 | 70円 |
一般の仕事では、正社員とパートの収入差は大きく、パートだけで生計を立てることはあまり現実的ではありません。
しかし、薬剤師ではパートの時給が高く、正社員と比べても遜色がありません。働き方の選択肢として、パートや派遣を選択することも、十分に可能といえるのです。
薬局薬剤師
さまざまな職場を経験できる
薬剤師の中には、複数のパートや派遣を組み合わせて、ダブルワークやトリプルワークをおこなう方もいます。
正社員としてはたらいてしまうと、同じ薬局内の勤務が中心となりますが、パートや派遣であれば、さまざまな職場を経験することができます。
今後はかかりつけ薬剤師として、あらゆる領域を経験している薬剤師が求められることを考えると、スキルアップの手段としてオススメです。
そのほかにも、普段は病院薬剤師としてはたらいている方が、調剤薬局でパートや派遣をするなど、他業種との組み合わせもOKです。
残業や休日出勤を行う必要がない
正社員で働くことのデメリットの一つとして、残業や休日出勤をしなくてはならないということがあります。
ケガや病気は24時間365日いつでも起こる可能性があるので、臨機応変に対応することは薬剤師の職責ともいえます。
しかし介護や育児に追われているなど、特別な事情がある方にとっては、残業のない職場ではたらきたいと考えることもありますね。
そんな時には、パートや派遣として働くことで、勤務する時間を自分の意志でコントロールすることがオススメです。
まとめ
薬剤師のパートと派遣の違いや、それぞれのメリットについてご紹介しました。
薬剤師は正社員にこだわらなくてもしっかりと稼げるので、ライフスタイルに合わせて雇用形態を選ぶことが可能です。
「子どもが小さいうちはパートで昼間だけ働く」「開業資金を貯めるために派遣でガッツリ稼ぐ」「スキルアップのためにパートを組み合わせる」など、自分に合った働き方を見つけましょう!