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薬剤師のためのEBM・医学(医療)論文検索・読み方の解説。初心者はどこからはじめるべき?

薬剤師のためのEBM・医学(医療)論文検索・読み方の解説。初心者はどこからはじめるべき?

薬剤師をしていると、ときどきこんなことを思うことがありませんか?「EBM(エビデンスにもとづいた医療)を実施するために、もっと詳しいデータを論文で調べたい」と。

また単純にちょっと気になることを論文で調べてみたいと思う現場もありますよね。

しかし、論文を読もうと思っても英語ばかりで内容がわからず、結局読むのを止めてしまう方も多いでしょう。

そこで今回は、医学論文を読んでみたいけど読み方がわからない論文初心者のために、簡単に読める論文の読み方をご紹介していきます。

薬局薬剤師

論文は英語がわからなくても実は読めるんですよ!英語が苦手でも論文を読む方法をご紹介します!

そもそもEBMの意味とは?薬剤師がEBMを実践するために必要なこと

EBMを実践したい薬剤師は医学論文を読もう!まずEBMの意味とは?
とくに病院で働いている薬剤師の方は、このEBMという単語をよく耳にする機会が多いでしょう。論文の読み方に入る前にまずはEBMについて簡単にご説明します。

EBMの意味

EBMとは“Evidence Based Medicine”の頭文字を取ったもので「根拠(エビデンス)にもとづく医療」のことです。

患者さんの治療をしていくにあたり、可能な限り根拠のあるデータにもとづいて患者さんに最良の医療を提供していこうというものです。

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根拠にもとづいた医療の根拠となる部分が論文に書かれているため、EBMを実践するにあたり論文を読む必要があるのです。

EBMを実践するために必要なこと

EBMを行うためには、以下のようなある程度決まった流れがあります。

STEP.1
問題を具現化する
患者さんの治療をしていく上で生じた問題や疑問を明確にします。どういう患者さんにどんな薬を投与すると、どのような影響があるの?といった具合に疑問を明確化すると後で論文を探しやすいです。
STEP.2
情報を集める
問題や疑問を解決するために情報を集めます。
STEP.3
情報を吟味する
論文に書いてあることが本当に正しいのか、根拠のある内容なのかを吟味します。
STEP.4
患者さんに適用する
集めた情報を実際に患者さんの治療に適用します。もちろん必要に応じて患者さんへ許可が必要です。
STEP.5
フィードバックをする
1~4までの過程をもう一度振り返り評価し、今後の治療にさらに活かしていきます。
ポイント!
日経DIで以前「症例から学ぶ 薬剤師のためのEBM」というコラムが連載されていました。EBMを実践するためのヒントや考え方、患者さんとどう対応すべきかなどが書かれている記事です。とても参考になるので、こちらもぜひ目を通してみてください。

論文に書いてあることがすべてではない

EBMを実践する上で、論文を読むことは必要不可欠です。

しかし論文に書いてあるから必ず正しいとは言えません。後で紹介するPECO/PICOを意識した読み方も大事になりますし、何よりも目の前にいる患者さんのことを第一に考えることがもっとも重要です。

論文に書いてあるからという理由で目の前の患者さんに「その薬は効きません」といったようなことを言ってしまっては、本当によい治療はできませんよね。

EBMのもとで治療をしていくことは大切ですが、論文の結果だけを活かしても患者さんのための医療は提供できません。

最善の結果に導けるように、論文の知識を生かして患者さんが望むこと、必要なことを提供することが大切です。

薬剤師なら知っておくべき!世界の論文を検索する方法

薬剤師の論文検索にはPubMedがオススメ!PubMedの検索方法もご紹介
EBMを実践するためには、論文を読む必要性が必ず出てきます。論文を検索できるデータベースはいくつかありますが、中でも有名なのが「PubMed(パブメド)」です。

生命科学や生物医学に関する論文を多く扱っています。

PubMedがオススメの理由

PubMed
参考:Home – PubMed – NCBI

PubMedには

  • 世界中の論文2,500万件以上から検索可能
  • abstract表示機能があるため、論文の要旨を確認できる
  • 厳密な検索ができる(検索する単語が単数形なのか複数形なのかで検索結果が異なる)

というメリットがあります。世界中の莫大な論文の中から検索できるので欲しい論文がきっと見つかるでしょう。

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論文検索といえばパブメドですね。大学の講義で使い方を教わった方も多いのではないでしょうか。

論文検索にはGoogle Scholarもオススメ


参考:Google Scholar

PubMedでは生命科学や生物医学に関する論文しか見られませんが、Google Scholar ではさまざまな分野の論文を検索できます。

Google Scholarの特徴はとしては

  • 引用元数順に表示される
  • 期間をしぼって検索できる(例:1980年~2018年)
  • 日本語で検索すれば日本語の論文がヒットする
    (ただし日本語の論文の引用元数は英語のものと比べると圧倒的に少ない)

などが挙げられます。

PubMedもGoogle Scholarも論文検索用のデータベースとしては非常に有名ですので、お好きな方を使うとよいでしょう。

ポイント!
Google ScoLarをよく使われる方は、Chromeのアプリ「Google ScoLarボタン」をぜひ使ってみてください。わざわざサイトを開かなくても、ワンタッチで論文検索ができるようになります。
薬剤師の論文検索に便利なGoogle ScoLarボタン
参考:Google Scholar ボタン

簡単に研究結果を知りたいなら「多目的コホート研究」は必見!

簡単に研究結果を知りたいなら「多目的コホート研究」は必見!
参考:国立研究開発法人 予防研究グループ

予防に特化した研究にはなりますが、予防研究グループが公表しているこちらのサイトでは、さまざまな多目的コホート研究の結果を自由に閲覧できます。

すべて日本語で書かれており、文章量もそこまで多くないため簡単に読むことが可能です。「禁煙語に体重増加が5kg以内だと循環器疾患の発症リスクが減る」など、日々の服薬指導にも活かせる内容が多く掲載されています。

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ガッツリと論文を読むことなく、さらりと毎日の仕事に活用できる情報を知りたい方はパブメドやGoogle Scholarよりも多目的コホート研究がもっともオススメです!

しかし論文の9割は英語。英語が苦手な場合はどうすればいい?

論文アレルギーの方が論文の何が嫌かって、内容が英語で書いてあって読むのが大変だし意味がわからないことですよね。

読もうと思っても書いてあることが頭に入ってこないのです。

そんなときは論文をGoogle翻訳にコピペして翻訳してしまってもよいでしょう。

※GoogleChromeブラウザでの、表示中のページを翻訳する機能も便利です。

最近の翻訳システムはかなり優秀なので、思っているよりもきちんとした文章に訳してくれます。

試しにGoogle翻訳で「The Effect of Ibuprofen on Postoperative Opioid Consumption Following Total Hip Replacement Surgery.」の論文の一部を翻訳してみましたが、意味がほとんど通じる翻訳になりました。


※画像をタップすると拡大できます。

ただ意味はわかるものの、完璧な訳ではないので詳しく読み込みたい場合はやはり英語の文章に戻って読みなおしましょう。

ポイント!
英語が苦手な方にオススメなのは、最初に翻訳された論文を読みざっくりとした内容を頭の中に入れた上で、英語の論文を読み始めるという方法です。先に日本語で読んでおくことで、英文にも馴染みやすくなります。

PubMedでの簡単な検索の流れ

PubMedでの検索方法
PubMedの検索は英語で行います。検索できる論文のほとんどが英語なので、英語で検索するのがもっとも効率がよいです。

検索する際に知っておくと便利なルールがあるので、代表的なものをここではご紹介します。

英単語を調べるなら!
医学関連用語の英単語検索はライフサイエンス辞書が便利!普通の辞書では出てこないような専門用語でも検索できます。

PubMedで論文を検索すると非常に多くの記事がヒットします。

ある程度は検索でしぼらないと、必要な論文を探す手間がかかってしまうので、いくつか検索ルールを知っておくとよいでしょう。

・熟語で検索したい場合

熟語で検索したい場合は“ ”(ダブルクォーテーション)で囲って熟語を囲ってから検索します。すると別々の単語ではなく熟語として検索可能です。

〈例〉“anti histamine”

・前方一致検索をしたい場合

検索する単語に幅を持たせたい場合は*(アスタリスク)を語尾につけます。下の例の場合、「age*」と検索することで「aged」と「aged」の両方をヒットさせることが可能です。

〈例〉age*→aged、 aged

・複数のキーワードで検索したい場合

欲しい情報を手に入れるためには複数のキーワードで検索することが多いです。そのような場合はスペースで区切るか、and検索を使いましょう。

〈例〉allergic arthritis、allergic and arthritis

最低限覚えておきたい英単語

論文を読む上で、絶対に知っておくべき単語があります。それが見出しとなる単語です。もう一度「The Effect of Ibuprofen on Postoperative Opioid Consumption Following Total Hip Replacement Surgery.」の論文を見てみましょう。

この論文だと「OBJECTIVE」「METHODS」「RESULTS」「CONCLUSION」をまずはチェックしましょう。

  • OBJECTIVE:要約
  • METHODS:方法
  • RESULTS:結果
  • CONCLUSION:結論

それぞれこのような意味です。これらの単語を知っておけば、どのパラグラフに何が書かれているかがわかりますね。

「何が書かれているか概要がわからない状態」で読む場合と、「書かれている内容がわかる状態」で読んだときの理解度は大きく変わりますので、見出しに使われる単語は覚えておくと便利です。

この他に「Experiment:実験」、「Discussion:考察」も覚えておくとよいでしょう。

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論文を読み進めるとき、必ずしも上から順に読む必要はありません。まずOBJECTIVE(要約)でなぜ実験をしようと思ったのか、これからどういう実験をするのかを押さえ、次にRESULTS(結果)をいきなり読んでしまってもいいわけです。読みやすい順序を自分で見つけてみるのもいいですね。

実際に論文を読んでみよう!初心者はPECO/PICOを意識すると一気に読みやすく

医学論文初心者の薬剤師でも簡単に論文が読める方法!初心者はPECO/PICOを意識しよう!
では実際の論文を使って、読む練習をしてみましょう。

論文を読むときには必ず「PECO/PICO」に注目しながら読みます。PECO/PICOに注目することで論文の理解が一気に深まります。

論文初心者のための入門書籍もありますので、本格的に論文を読みたい方はこちらも参考にしてみてください。

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PECO/PICOとはいったいなんのこと?

PECO/PICOとは以下の頭文字を取ったものです。

  • P:Patients、Population、Problem→患者
  • E/I:Exposure、 Intervention →暴露/介入
  • C:Comparsion→比較
  • O:Outocome→結果

2文字目がEなのかIなのかによってPECOと呼んだりPICOと呼んだりします。PECOやPICOを簡単に言い換えると以下のような感じです。

  • P:誰が、誰に
  • E/I:何が原因で、どんな治療を行うと
  • C:何と比べて
  • O:どういう結果になるか

つまりどういう患者さんに○○という治療をすると、○○を使ったときと比べてどうなの?というのを表したものですね。

PECOやPICOを意識した論文の読み方は、論文を読む上で基本的なこととなりますのでぜひこれらを意識して読んでみましょう。

PECO/PICOを意識して実際に論文を読んでみよう

ではさっそく実際にPECO/PICOを意識して論文を読んでみましょう。

今回は関節リウマチや腰痛の患者さんにセレコキシブを使ったら、他のNSAIDsを使うよりも心血管のリスクは上がるのか?というのをテーマに見ていきます。

まずはPECO/PICOの設定です。

  • P:関節リウマチや腰痛で患者は
  • E/I:セレコキシブを飲むことは
  • C:他のNSAIDsを飲むときに比べて
  • O:心血管リスクのイベントを上昇させるのか

それぞれ当てはめると上のようになります。ではこの疑問を解決するために今回は以下の論文を読んでみましょう。

(参考:Risk of cardiovascular events in patients receiving celecoxib: a meta-analysis of randomized clinical trials.

長くて読む気が起こらないという方もいるかもしれませんがPECO/PICOだけ意識して読んでみてください。すると以下の文章を抽出できるはずです。

P:Patient data were derived from studies in osteoarthritis, rheumatoid arthritis, ankylosing spondylitis, low back pain, and Alzheimer’s disease.
(患者のデータは変形性関節症、関節リウマチ、強直性脊椎炎、腰痛、およびアルツハイマー病の研究に由来している。)

E/I:To determine whether the cyclooxygenase-2 selective inhibitor celecoxib affects CV risk
(シクロオキシゲナーゼ2選択的阻害薬のセレコキシブが心血管リスクに影響するかどうか)

C:analyzed in patients treated with celecoxib, placebo, or nonselective NSAIDs
(セレコキシブ、プラセボ、非選択的NSAIDsによって治療される患者で分析された)

O:Dose of celecoxib, the use of aspirin, or the presence of CV risk factors did not alter these results.
(セレコキシブ、アスピリンの使用、または心血管リスク因子の存在は、これらの結果を変えなかった)

これらを簡潔にまとめると、

変形性関節症、関節リウマチ、強直性脊椎炎、腰痛、およびアルツハイマー病の患者にセレコキシブを投与することで心血管リスクに影響が出るのかどうかを、セレコキシブやプラセボ、非選択的NSAIDsを使って分析した。

だけど心血管リスク因子の存在は確認できなかった。

となります。

論文のほんの一部しか見ていませんが、書いてある内容がだいたいわかりましたね。

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このようにPECO/PICOに当てはまりそうなところだけ抜粋すれば、論文のすべてを読まずに大まかな流れを把握することが可能です。

PECO/PICOに該当する文章を探すコツ

ではPECO/PICOに該当する文章が早く見つかるコツをいくつかご紹介します。すべての論文でこのコツが使えるわけではありませんが、必要な情報を早く見つける手助けになるはずです。

PECO/PICOに関する文章を探すときは以下の単語にとくに気をつけて読んでいきましょう。そうすると必要な情報を拾いやすくなります。

  • P:patient
  • E/I/C:receiving、compared with~、analyse
  • O:outcome、end point、result

正しい情報がわかる薬剤師に!論文を読んで集めた情報を吟味する

EBMを実施するには医学論文を批判的吟味してみよう!
PECO/PICOに当てはめて論文を読めば、必要な情報だけサラっと拾って読めるので意外と読みやすくなりましたね。全部を訳さなくてもいいので読むスピードも上がるでしょう。

さて論文を読んで結果を把握したら、次は「本当にこの情報は合っている?」と吟味する番です。批判的吟味とも言いますね。

この論文ではこの結果になっているけど、何かバイアスはない?研究方法は正しい?盲検化されている?と論文の内容をあえて疑いの気持ちを持って見ます。

これによって論文の内容が本当に正しいのかを判断することが可能です。

ITT解析とper protocol解析の違いとは

医学論文を読むなら知っておこう!ITT解析とper protocol解析の違い
医学論文を読んでいるとITT解析per protocol解析といった単語が時おり出てきます。これはランダム化試験の方法の違いのことです。

ITT解析は試験の途中で薬の副作用などにより脱落した方の数も母数に入れた解析方法、per protocol解析は途中で脱落した方の数は母数から外す解析方法

ITT解析の方が途中で脱落した方の数も入るのでより臨床に近い数字が出ます。しかし母数が大きくなることでお薬の効果が過小評価につながるデメリットもあるので要注意。

医療論文を読む機会が多い方はだいたいの意味は知っておく必要があります。

まとめ

医学論文初心者の薬剤師が論文を読むならPECOやPICOに注目して読もう!
何か調べ物をするとき、EBMに則った治療をしたいときなどに論文を読む機会がやってきます。論文を調べることで確かな情報が得られるため、論文を読めることは大事な能力です。

しかし論文は英語ばかりで読みにくいと感じる方が大半。そのようなときはPECOやPICOに注目して読み進めることで、必要な情報をピックアップしやすくなりますよ。

論文は読み方を習得すると、とたんに読みやすくなりますのでぜひこの機会に論文を読む練習を始めてみましょう。

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薬剤師向けに、このような医療情報を探すための書籍も出ていますので、こちらもぜひ活用してみてください。