「製薬会社の薬剤師は年収が高いって聞いたけど、本当?」
「どういった仕事をするのか詳しく知りたい」
製薬企業で働く企業薬剤師の年収は高いという話をよく耳にします。
しかし企業薬剤師とひとくちに言っても実は細かく職種が分かれているものです。今回は企業薬剤師としてよく知られている7つの職種について詳しくご紹介します。
薬局薬剤師
この記事の目次
企業薬剤師は主に7つの職に細分化される
「企業薬剤師」とひっくるめて話が進んでいくことが多いのですが、実は製薬企業での仕事はいくつかの職種に細分化されています。
ここでは主な7つの職種について取り上げました。それぞれの仕事内容と年収をご説明します。
研究職
企業薬剤師といえば研究・開発・MRの名前があがることが多いでしょう。まずは代表的な研究職について紹介します。
仕事内容
研究職では新薬を新しく開発していく仕事をします。新しい医薬品を作れないかを考え、化学物質の有効性を調べていくことが主な仕事内容です。
つまり、まだ世の中に出回っていない新しい医薬品を作り出していく仕事ということになります。
治療薬がなく困っている患者さんのためにも、もっとよい治療役を求めている方のためにも貢献できる仕事です。
年収
初任給は350~450万円程度。能力次第で700~1,000万円も可能です。
20代のうちは企業薬剤師以外の方たちと大きく年収に差はありませんが、早い方ですと30代で大台の年収1,000万円を超えることがあります。
開発職
企業薬剤師といえば開発職も花形の職種です。研究職と仕事内容がごっちゃになっている方もいますが、内容はまったく違います。
仕事内容
開発職は研究職から上がってきた医薬品を市場へ出せるようにするために、臨床試験を行って安全性などを確かめる仕事です。
研究職と違って実験室にこもっての作業はありません。必要な治験データを取り、医薬品の情報を取得していきます。
年収
年収は開発職とほとんど同じです。初任給は350~450万円程度、能力次第で700~1,000万円が目安となります。
開発業務に関わったことのある方が転職で入れば、最初から700万円以上も可能です。
MR
MRは製薬企業で働きたい方が目指すことが多いですね。研究職や開発職はちょっと手が届きにくい感じがしますが、MRはまだ挑戦しやすい職種だと言えます。
仕事内容
MRは医薬品情報担当者のことです。医師や薬剤師に新薬の案内や安全性情報などの情報を提供します。高いコミュニケーション能力が必要とされる仕事です。
朝早く家を出て夜中に帰ってくる生活になることも少なくなく、体力的にもきついことが多くあります。
しかし自分の能力や成績が年収に反映されていくので、若くして高年収を狙うことも夢ではありません。
年収
初任給は400~500万円ほどです。MRは年収が高いイメージが強いですが最初から多く貰えるわけではありません。
しばらくは企業薬剤師以外の薬剤師と変わらないくらいの年収です。しかし成績次第では早くて30代で年収1,000万円も突破可能。頑張れば年収が上がっていく仕事と言えます。
DI
DIとは「Drag Information」のことで、医薬品情報管理という意味です。DI業務はひたすら医薬品の情報と向き合いながら仕事をします。
仕事内容
DI担当者は医薬品の情報を集め管理し、必要とする方へ情報を提供していくのが主な仕事内容です。パソコンに向かって仕事をすることが多くなるでしょう。
また外部から問い合わせがあった際に、正確な情報を伝える役割もはたします。常に正しい情報を収集し、正しく周りに伝えていく責任のある仕事です。
年収
DI担当の場合、年収はやや低めの350~600万円ほどが相場となります。まれに700万円以上の求人もあります。
治験コーディネーター
略してCRCとも呼ばれる治験コーディネーターは、治験をスムーズに進めていくために欠かせない存在です。
仕事内容
治験を依頼する側と依頼される側との間に立って治験の進行をサポートしていきます。
治験を始めるための準備、患者さんへの治験内容の説明、服薬管理や検査への強力など細かく対応していくのが仕事です。
患者さんや医師、看護師、臨床検査技師などさまざまな方とのコミュニケーションが必要となります。
年収
治験コーディネーターは年収300~450万円ほどが相場です。企業薬剤師のなかではもっとも水準が低いと言えます。
しかし治験コーディネーターとして経験を積んでいくことで、年収600万円前後まで上げることが可能です。
薬事業務
薬事業務は高い英語のスキルが必要とされます。さらにパソコンを使っての業務がほとんどを占めているため、パソコン操作もこなさなければなりません。
仕事内容
医薬品や医療機器などを製造販売する際に必要な承認の申請に関わる仕事です。申請するために専用のパソコンソフトを使用するため、パソコン操作に慣れていなければなりません。
申請に必要な書類の信頼性を判断するために英語で書かれている文献を読む必要もあります。また英語で書類作成をすることもあるため、英語のスキルは必須です。
※薬剤師が英語を使う仕事に興味のある方は以下の記事もぜひ参考にご覧ください。
また以下の記事で、薬事申請の仕事についてもっと詳しく説明しています。
【公務員】薬事監視員の仕事内容・年収は?転職求人・資格について。2014年からはネット通販・広告のパトロールを強化中で人材が必要!?
薬剤師が取っておくと何かと役立つ、薬機法の資格もあります。
年収
薬事申請に関わる業務は年収が非常に高い傾向にあります。低くても500万円ほど、外資系だと1,000万円を超えるものも。
1,000万円超えは少しレアですが、それでも700~900万円ほどの求人はすぐに見つかります。
品質管理
販売しようとしている医薬品や化粧品を、本当に販売しても大丈夫?と品質を検査するのが品質管理の役目です。
仕事内容
品質管理は商品を作りはじめてから完成するまでのすべてのプロセスで、品質をチェックしていくのが仕事となります。
商品の製造に使う原材料や製造途中から商品の完成までを管理しなければなりません。化学的な試験を行いますので、実験や化学好きな方に向いているでしょう。
年収
品質管理の年収はよそ400~600万円ほどです。求人を探すと400万円台からの募集が多く見られます。
企業薬剤師は年収だけ見ると勝ち組だが…
薬剤師の平均年収は約580万円。そう考えると研究職や開発職、MRや薬事業務は年収1,000万円超えの可能性もあるため数字上は完全に勝ち組です。
でも本当に企業薬剤師はよい働き方と言えるのでしょうか。
MRは高年収だけど正直しんどい?
企業薬剤師の職種の中でもとくにMRは正直に言って体力的にも精神的にもしんどいことが多いです。
実際にMRとして働いていた薬剤師の話を聞くと、入社して3年も経てばかなりの人が辞めてしまうとのこと。半分残っていたらまだいいほうです。
朝から晩まで働き、休日は医師への接待でゴルフなんて日々を何年も続けなければ高い年収は得られません。
しかし頑張って成績を上げれば大台の年収1,000万円に若くして到達することも可能。
本当にMRの仕事が楽しくてやっているのならいいですが、お金のために働くとなるときついことが多いでしょう。
薬局薬剤師
企業薬剤師の幸福度は低い!?人による。
MRが激務であることはもはや周知の事実ですが、研究職や開発職も仕事が詰まっているときは職場に一日中こもることもあります。
研究や開発が好きで時間を忘れて没頭できるような方からしたら天職、そうでもない方からしたら苦痛に感じるかもしれません。
平均的な薬剤師の年収よりも多く貰える企業薬剤師は、仕事をするモチベーションによって幸福度や仕事に対する満足度が変わります。
企業薬剤師として働くメリット
企業薬剤師で働くメリットには、次のようなものがあります。
- 1,000万円以上の高年収を狙える
- 相性次第では一日中没頭できる
- 福利厚生が充実している
それぞれ詳しく見ていきましょう。
年収1,000万円以上を目指せる
企業薬剤師の仕事の中でも研究職、開発職、MR、薬事申請は年収1,000万円超えの可能性があります。薬剤師で大台突破を目指せる貴重な仕事です。
できるだけたくさん稼ぎたいと思っている薬剤師には、ピッタリな仕事だと言えるでしょう。
仕事に没頭できる
仕事との相性がよければ、一日中没頭して過ごすことも可能です。好きなことを仕事にできるので、毎日が楽しいと言っている企業薬剤師も実際にいます。
さらに一度でも企業薬剤師として経験を積んでおけば、その経験を活かしてさらに年収の高い企業へ転職できるのもメリットです。
福利厚生が充実している
製薬企業の福利厚生は、とても充実しています。たとえば大手企業のタケダだと、次のような福利厚生があります。
- 産前産後休暇
- 育児休暇
- 看護休暇
- ベビーシッターサービスの費用補助
- リフレッシュ休暇
- 保養所
- 独身寮
- 年次有給休暇・特別有給休暇
- 健康保険・雇用保険などの各種保険
- 在宅融資
- 企業年金制度
休暇制度がとても充実していることが特徴です。フレックスタイム制やテレワーク勤務制も導入しているので、プライベートを重視した働き方もできます。
企業薬剤師として働くデメリット
魅力がたくさんある企業薬剤師ですが、次のようなデメリットもあります。
- MRはとくに労働環境が過酷
- 転勤が多い
- 患者さんと触れ合えない
では、それぞれのデメリットについても詳しく見ていきましょう。
労働環境が過酷なことがある
企業薬剤師は忙しいことでも有名です。とくにMRは休みも関係なく外回りや接待をする必要があるため、自分の時間を確保できません。
最近だと接待は昔より減っていますが、それでも土日が接待でつぶれてしまうことがあります。
転勤が多い
企業薬剤師はとにかく転勤が多いです。私の知り合いのMRは、県をまたいで何度も転勤になっていました。そのため子どもはしょっちゅう転校しています。転勤が多くてマイホームを建てられないとも嘆いていました。
薬局薬剤師
患者さんと触れ合えない
基本的にどの仕事も屋内でのデスクワークデスクが多く、患者さんと会うことはもちろん調剤業務も経験できない仕事です。
多くの薬剤師が調剤経験を積んでいる中、企業薬剤師は残念ながら調剤のスキルを磨くことはできません。
企業薬剤師になるために身につけたいスキル
企業薬剤師として働くためには、調剤薬局や病院とはまた違ったスキルが要求されます。
求人数が少なく薬剤師に人気の職種ですので、スキルをしっかり身につけて挑むことが大切です。
英語スキル
どの職種で働くかにもよりますが、企業薬剤師として働くためには英語力が必要とされるシーンが多くあります。DIや薬事業務などはとくに英語力が必要です。
企業によってはTOEIC700点以上など、条件を設けていることがあります。目指している職種で英語が必要なようであれば、早めの対策が必要です。
TOEICの対策をするなら、以下の参考書が人気なので、ぜひ手にとってみてください。
[amazonjs asin=”4023315680″ locale=”JP” title=”TOEIC L & R TEST 出る単特急 金のフレーズ (TOEIC TEST 特急シリーズ)”] [amazonjs asin=”B0734RQPXN” locale=”JP” title=”新形式問題対応/音声DL付TOEIC(R) L&Rテスト 至高の模試600問”]コミュニケーションスキル
とくにMRとして働く場合は、コミュニケーションスキルが欠かせません。医師に対して失礼のないような言葉を選びながらも、売り込みはしっかりできるスキルが必要となります。
態度が良くてもトークが下手なだけで売上につながらなくなることも多いので、上手なコミュニケーション能力が要求されるでしょう。
数字を伸ばせるスキル
企業薬剤師は、結果主義なところがあります。どれくらい契約を取れたか、どのような開発に関われたかなどが重視されます。
未経験から企業薬剤師への転職を考えている方は、ぜひ今のうちに数字で確認できる結果を何か出しておきましょう。粗利率を上げた、来店数を増やしたなど何でも構いません。
数字を伸ばすための試行錯誤の過程と結果をアピールすることで、内定も勝ち取りやすくなります。
企業薬剤師の転職に強いサイト
企業薬剤師の求人はもともと数が多くないことから、調剤薬局や病院と比べると、かなり求人数が少ないです。
もっとも企業薬剤師の求人が多い薬キャリでも、全国で約700件の求人しかないため、できれば転職サイトに2~3個登録しておくのをおすすめします。
薬局薬剤師
転職サイト名 | 求人数 |
---|---|
薬キャリ | 719件 |
マイナビ薬剤師 | 365件 |
リクナビ薬剤師 | 290件 |
数ある転職サイトの中でも、上記3つは企業薬剤師の求人数を多く扱っているのが特徴です。企業を目指す方はぜひ参考にご活用ください。
まとめ
製薬企業で働く企業薬剤師は、研究職や開発職、MRなどいくつかの職種に細かくわけられます。
製薬企業で働きたいと考えている方は、自分がどの仕事をしたいのかを考えておきましょう。
企業薬剤師は高年収を期待できる仕事ではあるものの、大変なことも多いため年収だけを見て飛びつくのはオススメできません。
本当にやりたいことがある方に向いている仕事ではないでしょうか。
薬局薬剤師