薬剤師として働く際に「年収」は気になるポイントです。
「今の自分にとって適正な年収なのか」
「もっと年収を上げる方法は無いのか」
と考えることもあるでしょう。
また「他の人はどのくらいもらってるんだろう?」「今の薬局の管理薬剤師の年収って?」と疑問に思うこともありますよね。
ここでは薬剤師の性別や職場別でどれくらい年収が変わるのかを、厚生労働省のデータをもとにご紹介します。
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薬剤師の年収データをチェックしよう
まずは、厚生労働省や国税庁の資料を参考にして、薬剤師の平均年収を知りましょう。
薬剤師の平均年収は?
年収とは、毎月の給与と賞与(ボーナス)を合計した、年間の給与総額のことをあらわしています。
所得税や都道府県民税、社会保険料などが差し引かれるため、実際の手取額はもっと少なくなってしまいますが、おおよその目安となります。
まずは、厚生労働省が令和1年に発表した、平成30年の薬剤師全体の年収データをみていきましょう。
平成30年 薬剤師平均年収(全体)
項目 | 平均値 |
---|---|
平均年齢 | 40.3歳 |
平均勤続年数 | 8.2年 |
平均所定内労働時間 | 162時間/月 |
平均残業時間 | 11.3時間/月 |
平均残業代 | 2.4万円/月 |
年間賞与 | 89.6万円 |
平均年収(残業代込み) | 553.7万円 |
上記の表から、薬剤師の平均年収は 553.7万円であることが読み取れます。
同じ平成30年のデータを見てみると、薬剤師以外の職種も含めた給与所得者の平均年収は306.2万円であることから、一般的な職業よりも高給であることがわかります。
国税庁平成30年賃金構造基本統計調査 結果の概況より
しかし、同じ6年制課程の国家資格を有する医師の平均年収が1,230万円であることを考えると、少し物足りないと思ってしまう方もいるかと思います。
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男性薬剤師と女性薬剤師の平均年収の違い
賃金構造基本統計調査には、性別ごとの年収データも出ています。
男女においてどのような差があるのか、見ていきましょう。
平成30年 薬剤師平均年収(男性)
項目 | 平均値 |
---|---|
平均年齢 | 39.35歳 |
平均勤続年数 | 7.78年 |
平均所定内労働時間 | 166時間/月 |
平均残業時間 | 13時間/月 |
平均残業代 | 3.5万円/月 |
年間賞与 | 88.5万円 |
平均年収(残業代込み) | 590万円 |
平成30年 職種・性、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額より計算
平成30年 薬剤師平均年収(女性)
項目 | 平均値 |
---|---|
平均年齢 | 40.9歳 |
平均勤続年数 | 8.5年 |
平均所定内労働時間 | 162時間/月 |
平均残業時間 | 10.3時間/月 |
平均残業代 | 2.8万円/月 |
年間賞与 | 90.2万円 |
平均年収(残業代込み) | 531.8万円 |
男性薬剤師の平均年収は 590万円、女性薬剤師の平均年収は 531.8万円であることが読み取れます。
薬剤師以外の一般的な職種では、出産や育児に伴うブランクや退職が影響するため、女性の平均年収は男性に比べて大きく劣ることが多いです。。
しかし、薬剤師は資格職であるため仕事を見つけやすく、すみやかに復職することができるので、男女の差があまりあらわれないのです。
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平成30年 企業規模別の年収
企業規模 | 平均年収 |
---|---|
10人以上 | 543.6万円 |
10~99人以上 | 608.8万円 |
100~999人以上 | 531.3万円 |
1,000人以上 | 530.9万円 |
店舗数が多い大手企業ほど年収も高い、となんとなくイメージをもっている方は多いと思います。しかし実際は、企業規模が小さいほど年収は高くなる傾向にあるのです。
もっとも年収が高いのは、労働者数が10~99人の企業で608.8万円でした。労働者数がもっとも多い1,000人以上の規模の年収はまさかの最下位の530.9万円です。
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職種ごとの年収
薬剤師の年収は職場が変わることでも大きく変化します。
- 調剤薬局:約450~700万円
- 病院:約380~700万円
- ドラッグストア:約500~1,000万円
- 企業:約500~1,000万円
年収の下限値が新卒、上限値が管理薬剤師や薬剤部長、管理薬剤師などに出世した場合の年収と考えてください。
この枠に当てはまらない場合もありますが、多くの企業はおよそ上記の範囲で年収が設定されています。
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年収アップを希望するなら別の職種も検討しよう
ここまで薬剤師の平均年収を見てきた中で、自身の年収との差はどれくらいだったでしょうか?
「平均年収よりも少なかった」「平均年収よりはもらっているけど、満足していない」ということもあるでしょう。
平均年収を見て自分の年収を改めて見直してみると、「もっと年収を上げたい!」という気持ちが高まるのか、実際に年収アップを希望する薬剤師が転職市場を賑わせています。
薬剤師の就業先は業種によって平均年収が大きく異なるので、年収アップを目指すのであれば、業種転換を目指すことがおすすめです。
一般的には上でも少し触れたように、病院<調剤薬局<ドラッグストア≦製薬会社といわれているので、転職エージェントを活用して、より給与水準の高い業種への転職を検討してみてください。
自分と違う職場が、どれくらいの条件の求人を出しているのか?を見ることはキャリアアップ・将来を考える上でとても重要な一歩です。
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登録後は、自分の働き方や悩みを理解してくれて、必要な情報を与えてくれるエージェント・担当者を探しましょう^^
※無資格者の方はご登録いただけません保険薬局における管理薬剤師と一般薬剤師の年収差とは
続いては、保険薬局ではたらく薬剤師の年収について、みていきましょう。
こんなにも違う、管理薬剤師と一般薬剤師
こちらは令和1年に行われた、第22回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告の結果です。
P278の機能別集計等の中で、保険薬局における職種別常勤職員1人平均給料年(度)額等が公表されています。
職種 | 平均給与年度額(①) | 平均賞与(②) | 平均年収(①+②) |
---|---|---|---|
管理薬剤師 | 6,747,395円 | 776,385円 | 7,523,780円 |
一般薬剤師 | 4,158,266円 | 604,233円 | 4,762,489円 |
平均年収でみると、管理薬剤師は7,523,780円で、一般薬剤師は 4,762,489円となっています。
なんと、管理薬剤師と一般薬剤師の間に約280万円以上の開きがあるんですね。
管理薬剤師の給与が安いといわれる大手チェーン調剤でも、管理薬剤師に昇格すると100万円以上の昇給が期待できることを考えると、管理薬剤師と一般薬剤師の年収差も頷けるでしょう。
管理薬剤師にならずに一般薬剤師として年収アップを目指すのは、限界があるかもしれませんね。
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薬局の規模によって異なる管理薬剤師の年収
先ほどの資料のP279では、保険薬局の店舗数別の管理薬剤師の年収も公表されています。
店舗数 | 平均給与年度額(①) | 平均賞与(②) | 平均年収(①+②) |
---|---|---|---|
1店舗 | 7,934,034円 | 316,771円 | 8,250,804円 |
2~5店舗 | 7,520,429円 | 532,878円 | 8,053,307円 |
6~19店舗 | 6,496,557円 | 841,769円 | 7,338,326円 |
20店舗以上 | 5,706,624円 | 1,096,002円 | 6,802,625円 |
合計 | 6,763,677円 | 754,794円 | 7,518,472円 |
1店舗や2~5店舗だけの薬局では、管理薬剤師の年収はなんと800万円を超えています。全体的にみても、小規模の薬局の方が管理薬剤師の年収は高い傾向にあります。
つまり今働いている職場が大手チェーン調剤の方は、小規模の薬局に転職することで年収がアップする可能性が非常に高いといえるでしょう。
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年収アップを希望するならまずは管理薬剤師を目指そう
ここまでご説明したとおり、一般薬剤師と管理薬剤師の年収には、大きな開きがあります。
逆に言えば管理薬剤師になることで、年収が大幅にアップする可能性もあるということです。
保険薬局で働く薬剤師が年収アップを目指すのであれば、まずは管理薬剤師を目指してみましょう。
管理薬剤師を経験することは、薬剤師としてキャリアアップをしていくためにも、非常に重要です。
管理薬剤師の仕事内容・なるための方法は、別のページで詳しくご説明しているので、参考にしてください。
管理薬剤師の仕事内容や役割・条件(要件)とは?職場別の勤務時間・忙しさ・給料についてもまとめてみた。メリット・デメリット、管理者の兼務・副業の注意点も
※この記事も、別のページも、「管理薬剤師」の経験を積んだものが執筆監修を行っていますので是非参考にしてくださいね^^
勝ち組薬剤師になる方法とは?
薬剤師が年収を上げる第一歩としては、管理薬剤師を目指すのが定石です。
ではさらなる高みを目指したい場合は、何をすべきなのでしょうか。
資格を取る
認定薬剤師や専門薬剤師の資格は、薬剤師の知識や経験を証明する大切な資格です。資格を取ったからといってすぐに年収が上がるものではありませんが、持っておくことで信頼性が上がり転職で役立つ可能性があります。
この他にもスポーツファーマシストやサプリメントアドバイザーの資格も持っておくと便利でしょう。健康に関するさまざまな資格を持っておくことで、本職のみならず資格を活かした副業を始めることもできます。
働き方を変えてみる
正社員で働かなくてはいけない、と思っていませんか?薬剤師は正社員ではない働き方の方が高い年収を得られることもあるため、視野を広げて働き方をもう少し見てみることも大切です。
たとえば派遣薬剤師であれば、時給4,000円や5,000円といった求人もあります。これくらいの時給でフルタイムで働けば年収900万円前後を目指すことも可能です。
また上でも触れたように副業を始めてみるのもよいですね。土日だけ派遣をしたり自宅でライティングをしたり、ブログを運営したりして月に数十万円も稼いでいる薬剤師がいます。
月に5万円でも給料が増えれば、年収は60万円も増えるので副業も侮れません。
お金、収入だけで人生の成功を判断しないこと
まわりの年収を気にしすぎるのではなく、自分の役割を全うすべく働こう
薬剤師の平均年収は543.8万円と全体平均よりは高いものの、普通の給与所得者とそこまで大きく変わりません。
「せっかく6年間勉強して、難関の国家資格に合格したのに夢が無い」「公務員やメーカーのように昇給していかない」と、悲観することもあるでしょう。
しかし、まわりの年収を気にしすぎることは、今の仕事に悪影響をおよぼしてしまいます。
やりたくないことをして少し高い年収をもらったとしても、それは本当に幸せといえるのでしょうか。
実は年収と幸福度に比例関係がないこともわかっているんですね。アメリカの心理学者が幸福度は年収800万円以上からは上がらないことを発見したのです。
若いうちは目先の年収よりもキャリアアップを優先しよう
年収だけを重視して働こうとすれば、努力次第では20代や30代から高額の年収を目指すことも可能です。
しかし、若いうちは目先の年収にとらわれるのではなく、キャリアアップを優先するようにしましょう。
たしかに個人薬局の管理薬剤師は高額年収ですが、得られる知識や経験は、多店舗展開している薬局には劣ります。
研修会や講演会で勉強をすることもできますが、大手のように会社が費用を負担してくれることも少ないので、参加するハードルは高いでしょう。
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お金を稼ぐ、年収を上げる選択肢はたくさんあることを知っておこう
薬剤師がお金を稼ぐ方法は、なにも業種転換や管理薬剤師だけではありません。
たとえば、副業として医薬品やサプリメントの記事を書いたり、医療翻訳の仕事をしている薬剤師も珍しくありません。
ダブルワークや派遣薬剤師として他の薬局で仕事をすることも、他領域の経験を積めるのでおすすめです。
学校薬剤師や休日診療所の夜間当番アルバイトは、管理薬剤師でも許可がもらえることもあります。
薬剤師とはまったく違う仕事をして、お給料をもらっている方もいるでしょう。
お金を稼ぐ、年収を上げる選択肢は、たくさんあるのです。
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この記事のように、柔軟に考えていけばいいのです。
まとめ
薬剤師の年収について、考えていきました。平均年収と比べて、自分の年収はいかがでしたか?
今の年収に満足している方もいれば、もっと上を目指したいという方もいるでしょう。
しかし、年収を意識することは重要ですが、とらわれすぎることは良くありません。キャリアアップをして実力を高めることで、年収がついてくることもあります。
この記事を参考にして、薬剤師としての今後のキャリアを描いてみてください。
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職種別の出世・年収を上げる攻略方法も随時考えて記事にまとめていきます。