「働き方改革」がすすめられる現在の日本では、多様な働き方が認められるようになりました。
薬剤師も例外ではなく、正社員以外にもパートや派遣、フリーランスなど、さまざまな働き方が注目されています。
また労働人口の減少や高齢化に伴い、深刻な人手不足に悩まされる薬局も増えつつあります。
この記事では、そんな薬剤師と薬局をマッチングさせるサービスとして新たに登場した「スキマde薬剤師」について、くわしく解説していきます。
この記事の目次
話題の新サービス「スキマde薬剤師」とは?
まずは「スキマde薬剤師」の概要についてみていきましょう。
薬剤師と薬局のマッチングサービス
「スキマde薬剤師」とは、株式会社Alkana(アルカナ)が運営する、薬剤師と薬局のマッチングサービスです。
「この時間だけ働きたい」薬剤師と「この時間だけ働いてほしい」調剤薬局を結んでくれるサービスで、面接応募なしに直感的な操作で利用できることが特徴です。
また公式サイトによると、下記の3点が選ばれるポイントとして挙げられています。
- 選考なしで即日採用
- 薬剤師の自由な働き方
- 薬剤師は無料、薬局は一律料金の定額制
2019年には働き方改革関連法案の一部が施行され、薬剤師の働き方も変わりつつあります。
そうした中で、自由な働き方をサポートしてくれる「スキマde薬剤師」は、非常に魅力的なサービスとして期待されています。
薬剤師は無料、薬局も半年間無料で利用可能
「スキマde薬剤師」は、薬剤師はすべて無料で利用できることが特徴です。
また、薬局は料金が変動することのない、一律料金の定額制となっているため、派遣薬剤師を頻繁に受け入れている薬局においては、大きなメリットがあると考えられます。
また、サイトの代表者のTwitterによると、マッチングにより2,000円のキャッシュバックなども検討されているため、実質8,000円で利用できる可能性もありますね。
図が見にくいので再アップ pic.twitter.com/VJCF66vqSA
— 河村卓哉【スキマde薬剤師】のサイト運営 (@pharma_com) February 29, 2020
現在は愛媛県のみ利用可能
注目のサービスである「スキマde薬剤師」は、現在のところは愛媛県においてのみ利用可能となっています。
スタートしたばかりのサービスということもあり、まだまだ登録されている薬局や薬剤師も限られます。
しかし今後は、東京や関西、福岡を中心に展開していくことが発表されています。
日本全国どこでもサービスが利用できるようになれば、まったく異なる土地を旅行しながら、スキマ時間で薬剤師の仕事をできるようになるかもしれませんね。
「スキマde薬剤師」を活用するメリットとは
これまで薬剤師がダブルワークをおこなう場合やフリーランスで働く場合には、パート薬剤師や派遣薬剤師という仕組みを利用することが一般的でした。
「スキマde薬剤師」を活用するメリットには、どのようなものがあるのでしょうか?
メリット①│選考なしで即日採用
パート薬剤師や派遣薬剤師のように、あらかじめ選考や面接を受ける必要がないため、スムーズに働き始められます。
応募の際に、薬局で使用している電子薬歴や仕事内容を確認できるので、ミスマッチが起こりにくいことも特徴です。
薬局側も、即戦力になれる薬剤師が来るので、教育の必要がないというメリットがあります。
メリット②│従来の派遣会社と比べ手数料が低価格
従来の派遣会社では、派遣の際に毎回、一定の割合の手数料を支払う必要がありました。
手数料ついては、労働者派遣法によってマージン率の公表が義務付けられており、30~40%程度が一般的といわれています。
一方で、「スキマde薬剤師」は、薬局側が月額一万円を支払うことで利用できるため、非常に低価格で利用できることが特徴です。
メリット③│単発勤務など短日の案件が見つけやすい
「スキマde薬剤師」は名前の通り、スキマ時間で勤務できること目指したサービスです。
一定の期間で契約を結ばなくてはならないパート薬剤師や派遣薬剤師とは異なり、単発勤務などの案件も豊富です。
また勤務して欲しい時間を自由に設定できるため、「半日だけ」などの短日の案件も見つけやすいと考えられます。
メリット④│年収アップやスキルアップなど多くのメリットがある
「スキマde薬剤師」を利用することで、本業以外の収入を得られることから、年収アップが期待できます。
薬剤師の時給は高額であるため、月1~2回の勤務であっても、数十万円を得ることもできますね。
また普段とは異なる薬局で働くことで、薬剤師としてのスキルアップも目指せます。
希望する診療科や薬局の規模の選択もできるため、ミスマッチが起こりにくいことも特徴です。
「スキマde薬剤師」を利用する場合の注意点
さまざまなメリットのある「スキマde薬剤師」のデメリットには、どのようなものがあるのでしょうか?
注意点①│出来立てのサービスのため案件が少ない
「スキマde薬剤師」は出来たばかりのサービスであるため、薬剤師や薬局から十分に認知されているとはいえません。
サービスに登録している薬剤師や薬局の数もまだまだ少なく、案件は非常に限られているのが現状です。
2020年3月現在では、愛媛県のみでサービスが提供されているため、利用エリアが限られることもデメリットの一つですね。
ただし、今後は東京や関西、福岡を中心にエリアを拡大していくことや利用者が増えていくと考えられるので、今後の改善が期待されています。
注意点②│メッセンジャーでのやり取りが必要
従来の派遣会社では、派遣先とのやり取りをエージェントに任せることが一般的でした。
交渉や質問もエージェントが代行してくれるため、忙しい薬剤師であっても問題なくサービスが利用できるという特徴があります。
一方で、「スキマde薬剤師」は低価格で利用できるサービスであるため、原則としてエージェントのサポートは受けられません。
メッセンジャーを用いて自分でやり取りする必要があるため、本業が忙しく時間を確保できない方は、注意が必要です。
注意点③│確定申告が必要となる場合も
「スキマde薬剤師」を利用して本業以外に収入を得た場合には、確定申告が必要となるケースもあります。
具体的には、本業以外の収入(「スキマde薬剤師」を含めたパートやアルバイトの収入と、その他の所得を合算したもの)が1年間で20万円を超える場合に、確定申告が必要です。
※上記の収入が20万円以下であっても、他の控除を受けるために確定申告をする場合には、申告が必要となります。
注意点④│以下の薬剤師は副業が禁止されているため利用不可
さまざまなメリットのある「スキマde薬剤師」は、残念ながら下記に該当する薬剤師は、サービスを利用できません。
どのような薬剤師が該当するのか、順にみていきましょう。
公務員薬剤師
公務員薬剤師は、「国家公務員法」や「地方公務員法」によって、原則として兼業が禁止されています。
よって国の薬事行政に関わる国家公務員の薬剤師はもちろん、保健所や公立病院で働く地方公務員の薬剤師においても、「スキマde薬剤師」を利用することはできません。
独立行政法人などの準公務員の薬剤師においても、規定が設けられている場合が多いので、利用は難しいと考えられます。
管理薬剤師
管理薬剤師は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」の7条3項により、薬事に関する兼業が禁止されています。
薬局の管理者(第一項の規定により薬局を実地に管理する薬局開設者を含む。次条第一項において同じ。)は、その薬局以外の場所で業として薬局の管理その他薬事に関する実務に従事する者であつてはならない。ただし、その薬局の所在地の都道府県知事の許可を受けたときは、この限りでない。
「スキマde薬剤師」を利用して薬剤師として勤務する場合には、上記の「その他薬事に関する実務」に該当すると考えられます。
管理薬剤師の兼業は重大な法律違反となるため、絶対におこなわないようにしましょう。
会社の規則で禁止されている場合も
公務員薬剤師以外、つまり企業や調剤薬局、ドラッグストアで働く薬剤師であって、管理薬剤師に該当しない場合には、法律による副業の制限はありません。
ただし企業によっては、就業規則などの社内規定により、兼業(副業)が禁止されている場合もあります。
「スキマde薬剤師」を利用したいと考える場合には、あらかじめ就業規則に目を通して、兼業の可否を確認するようにしましょう。
また就業規則には明記されていないものの、暗黙の了解として兼業が禁止されている場合もあるので、注意が必要です。
まとめ
この記事では、薬剤師と薬局のマッチングサービスとして注目の「スキマde薬剤師」について解説していきました。
薬剤師と薬局のマッチングサービスとしては、従来より派遣会社がその役割を担ってきました。現在は情報通信技術の発達により、今までにないサービスも登場するようになりました。
この記事の執筆時点では、利用が可能なのは一部の地域に限られますが、今後はエリアの拡大も予定されています。
働き方改革により、薬剤師の働き方も変わりつつあるので、ぜひ一度登録してみてはいかがでしょうか。