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薬剤師が絶対に避けたい「調剤過誤」調剤ミス例・訴訟事例・防止策も含めて学びましょう

「薬剤師が犯した調剤過誤にはどのような事例があるの?」
「調剤過誤を起こすとどういった責任を問われるの?」

薬剤師として働いていると、万が一何か起こったときにことが気になってしまいませんか?とくにヒヤリ・ハットをした日には「このまま人生が終わるところだた…」と冷や汗をかくこともあるかもしれません。

薬剤師は人の命を預かる職業でもあることから、重い法的責任を負っています

そんな薬剤師が「調剤過誤」を起こしてしまうと、患者さんからの信用を失ってしまうだけでなく、免許にキズが付きかねません。

そこで今回は、薬剤師が絶対に避けたい調剤過誤や、調剤ミスの例、訴訟事例、防止策をご紹介します。

薬局薬剤師

どういうときに調剤過誤がおこりやすいのか、実際にどのような過誤がこれまでにあったのかを詳しくご紹介します!

薬剤師による医療過誤とは

薬剤師による医療過誤
薬剤師がかかわる医療過誤には、調剤事故調剤過誤ヒヤリ・ハット事例という3つの類型があります。

これらは、平成17年11月に日本薬剤師会によって定義されたことでも話題となりました。内容について、順にみていきましょう。

調剤事故

調剤事故は、医療事故の一つであり、調剤に関わるすべての健康被害が発生した事例をあらわしています。

薬剤師に過失がなくても、患者さんに健康被害が発生していれば、調剤事故として扱われます。

調剤過誤

調剤過誤は、調剤事故の中でも薬剤師の過失によって起こったものをあらわしています。

直接的な調剤の間違いだけでなく、薬剤師の説明不足や指導間違いによって健康被害が発生した場合においても、薬剤師の過失としてとらえ、調剤過誤として扱われます。

少し古いデータになりますが、平成13年から平成20年のまでに起きた調剤過誤の件数は以下の通りです。

年度調剤過誤の件数
平成13年45件
平成14年47件
平成15年38件
平成16年18件
平成17年27件
平成18年33件
平成19年33件
平成20年27件
参考:平成21年度 日本薬剤師会に報告された調剤事故等報告事例を元に作成

薬局薬剤師

一般的に「調剤ミス」といわれる調剤の間違いのほとんどは、この「調剤過誤」のことをあらわしています。

ヒヤリ・ハット事例

ヒヤリ・ハット事例とは、患者さんに健康被害が発生するに至らなかったものの、“ヒヤリ”としたり、“ハッ”とした出来事のことをあらわしています。

ハインリッヒの法則においても有名で、1つの重大事故の背後には29の軽微な事故と、300ものヒヤリ・ハット事例が存在するといわれています。

患者さんが薬剤を服用する前に過誤に気づいた場合でも、このヒヤリ・ハット事例に該当します。

過去に起きたヒヤリ・ハットのうち、とくに共有する必要があると判断されたものは日本医療機能評価機構のホームページに随時掲載されているので、ぜひこちらもご覧ください。

ヒヤリ・ハットと調剤過誤の違い

調剤過誤とヒヤリ・ハットとの違いは、実際に過誤に至ったか至らなかったかという点です。

ミスをしたまま患者さんの手にお薬が渡ったら調剤過誤、患者さんへ渡す前にミスに気がついたらヒヤリ・ハットと扱うことが一般的になっています。

薬局薬剤師

ヒヤリ・ハットとはいえ、患者さんの手に害があるかないかの違いだけなので本当に怖いですね…。

調剤事故や調剤過誤における薬剤師の責任

調剤過誤を起こした際の薬剤師の責任
調剤事故や調剤過誤が原因で、患者さん側と医事紛争に発展した場合には、薬剤師は民事上の責任刑事上の責任行政上の責任の3つの責任を問われる可能性があります。

それぞれの内容について、確認していきましょう。

民事上の責任

患者さんに健康被害を与えてしまった場合には、民法に基づく不法行為責任あるいは債務不履行責任として、民事上の責任を追及されます。

患者さん側の金銭的救済のために、損害賠償責任を追及されることが一般的です。

刑事上の責任や行政上の責任を問われなくても、民事上の責任を問われることは十分に考えられます。

薬局薬剤師

民事上の責任とは簡単に言うと損害賠償責任のことです。

刑事上の責任

調剤事故などによって患者さんに傷害を与えた、または死亡させた場合には、業務上過失致死傷罪(刑法第211条)に問われる可能性があります。

(業務上過失致死傷等)
第211条 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

~刑法より抜粋~

そのほか、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)薬剤師法に触れる場合においても、これらの刑事責任に問われることがあります。

行政上の責任

厚生労働省などの行政が、薬剤師法8条2項にもとづいて薬剤師に与える処分や罰則が、行政上の責任です。

(免許の取消し等)
第8条 2 薬剤師が、第五条各号のいずれかに該当し、又は薬剤師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる。
一 戒告
二 三年以内の業務の停止
三 免許の取消し

~薬剤師法より抜粋~

具体的には、一定期間の免許の停止薬剤師の資格取り消しといった処分が行われます。

処分を受けたものは、再教育研修を受けなくてはならないことが規定されています。

ポイント!
薬局に対しても薬機法第75条によって、薬局許可取消、業務停止の行政処分が行われることがあります。

調剤過誤の具体例とは

実際にあった調剤過誤の例

どのような種類の過誤が多いのか

公益財団法人日本医療機能評価機構の事業の一つに、「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」というものがあります。

その第23回集計報告によると、調査の対象となる薬局で多かった調剤ミスは、下記のとおりでした。

  • 数量間違い(1,094例)
  • 規格・剤形間違い(1,030例)
  • 薬剤取違え(966例)
  • 処方せん監査間違い(384例)
  • 薬袋の記載間違い(251例)
参考:薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 第23回集計報告

これらの結果から、調剤ミスの大半は数量間違いや薬剤の取違え、規格・剤形の間違いであったことがわかります。

数量や薬剤を取り間違ってしまうことは、期待された治療効果を発揮できないだけでなく、最悪の場合患者さんを死に至らしめてしまいます

薬局薬剤師

医薬品の専門家として、患者様の命を預かっているということを意識して、業務にあたるようにしましょう。

「使えない」と言われたくない!新人薬剤師のあるべき姿勢とコミュニケーション・ステップアップに必要なこと。ミスが多くて辛い時期をどう乗り越えるか?

調剤過誤が起こった具体例

数量の取り間違い

アサコール錠400mg 6錠 分3毎食後 28日分(計168錠)の処方に対して、アサコール錠400mg 252錠を調剤し、そのまま交付。

28日経過後にまだ残薬があることを患者より問い合わせを受け、調剤過誤が発覚しました。

アサコール錠400mgの最大量である、1日9錠の28日分と誤認したことが原因と考えられます。

薬剤の取違い

アルマール錠10mg 2錠 分2朝夕食後の手書きの処方せんに対して、アマリール錠1mgを調剤。

薬剤交付時に「糖尿病の薬」であることを説明した際に、患者さんが間違いに気付き、調剤過誤が発覚しました。

手書き処方せんであるため識字が難しく、薬剤名を読み間違ってしまったことが原因と考えられます。

規格の取り間違い

ヒダントール錠25mg 4錠 分2朝夕食後と書かれた処方せんに対して、ヒダントール錠100mgを調剤し、そのまま交付。

副作用の訴えがあり、在庫を計算した際にミスが発覚しました。

調剤を担当した薬剤師が、複数規格の存在を十分に理解していなかったことが原因と考えられます。

注意
フェニトインはわずかな増量でも急に血中濃度が上昇し、中毒症状を呈するため、とくに注意が必要な医薬品です。

参考:新任薬剤師のための調剤事故防止テキスト(第二版)

レセプトへの入力ミス

2019年6月に、調剤事務員が間違って「ワーファリン 0.5mg 1.5錠」を「ワーファリン 1mg 1.5錠」と入力し、入力ミスに気が付かないまま薬剤師が調剤し、患者さんが脳出血を起こす事故が起こりました。

処方せんではなく、入力された情報を見て調剤したため起こった事故です。

訴訟に発展した事例とその判例

薬剤の取違えによる訴訟例

2008年6月に、高血圧治療のために通院していた96歳女性が、薬剤師の調剤過誤によって死亡しました。

医師は頻尿の治療薬である「バップフォー」の錠剤90日分の処方を指示しましたが、薬剤師は誤って血圧降下剤の「バソメット」の錠剤90日分を投薬、患者は服用から41日を過ぎて脳梗塞で倒れ、1カ月後に死亡しました。

誤って調剤されたバソメットの1回量が通常の4倍だった点などを踏まえ、「不必要な薬を服用させられ、典型的な副作用である脳梗塞で死亡したと認めるのが相当」として、2,500万円の支払いが命じられました

参照: 医療安全にかかる法的知識の基礎 – 日本薬剤師会

肺炎薬の5倍量投与による訴訟例

2005年11月に、東京都港区の病院にがん治療のため入院していた66歳の男性が、肺炎薬の過剰投与によって死亡しました。

研修医が医薬品集のページを見間違え、規定量の5倍を投薬したことが主な死因とされていますが、薬剤師の責任も認められ、計2,300万円の支払いが命じられました。

「劇薬指定された医薬品で、5倍もの用量の処方箋だったことを考えれば医師に照会すべき義務があった」ことから、調剤や投薬量のチェックなどを担当した薬剤師3人についても、過失が認定されました

参照:日本経済新聞社

調剤過誤を起こした場合の、薬剤師のとるべき対応とは

調剤過誤を起こしてしまったときに薬剤師がするべきこと
万が一、調剤過誤が起こってしまった場合には、どのような対応をとればよいのでしょうか。職場のマニュアルを確認して、いざという時にすみやかな対応ができるようにしておきましょう。

状況の把握

調剤過誤の可能性が疑われた場合には、必要な情報を収集して、事実確認を行わなくてはなりません。調剤の責任者(管理薬剤師、医薬品管理責任者など)に連絡を取り、指示を仰ぎましょう。

患者さんの氏名や連絡先、処方せん、薬歴の内容を確認した上で、下記の項目について確認することが望まれます。

  • 実際に過誤があったのか
  • すでに服用してしまっているのか
  • 健康被害が起こっているのか、またその程度はどうか

これらを把握した上で、患者さん本人処方医に連絡を取り、被害の拡大を防ぎましょう

患者さん、処方医に連絡

実際に過誤があることが分かれば、すぐに被害拡大の防止策を講じなくてはなりません。処方医に連絡をとり、調剤過誤があった事実を正直に伝えた上で、指示を仰ぎましょう

その上で、すみやかに患者さんに連絡をとり、該当する薬剤の服用中止医療機関の受診など、適切な指示を行いましょう。

その際に心がける必要があるのは、誠意をもって被害者やその家族への対応を行うということです。相手のせいにしたり、言い訳をすることは厳禁です。

調剤過誤によって生じた被害に賠償することはもちろんですが、事故を起こしたことを詫び、相手の心情に配慮することも重要です

行政機関に対する報告、弁護士への相談、賠償制度の利用

調剤事故や調剤過誤が起こってしまったら、薬剤師会などの専門機関へ報告を行いましょう

重篤な副作用が起こってしまったり、合併症や後遺症が残ってしまった場合には、所属薬剤師会に相談の上、市町村や保健所に速やかに報告を行う必要があります。

都道府県や保健所から立ち入り検査を求められたら、指示に従って検査に協力しなくてはなりません。

注意
障害が残るなど、長期的な対応が必要となる場合もあります。弁護士への相談や賠償制度を利用して、誠意を持って対応しましょう。

調剤過誤を起こさないために薬剤師がするべきこと

調剤過誤を防止するために薬剤師がするべきこと
調剤過誤は起こそうとして起こるものではありません。そのため普段からいかに調剤過誤を起こさないように気をつけられるかが大切です。

少しでも調剤過誤を起こさず済むように、できることはやっておきましょう。

薬剤師の人員を確保する

バタバタと余裕なく調剤をしている薬局は要注意です。次々と溜まっていく処方せん、患者さんからまだかと急かされるような状況で調剤していると、いつもはしないようなミスをしてしまいます。

心に余裕がない状態での調剤はミスを引き起こす要因です。薬剤師の人数がたりていない場合は人事を管理している人に「このままでは調剤過誤を起こす可能性が高くなるので薬剤師を増やして欲しい」と相談してください。

ポイント!
急な欠員が出て、いつもより少ない人数でなんとか回した後、薬局の経営者に「1人少なくても回るんだね。じゃあ来月から薬剤師を1人減らすね」なんて言われてしまうこともあります。残りの薬剤師でギリギリ回して何とかなった、という状況を知らずに経営者は薬剤師の人数を減らそうとしてくるため、現場目線で物事を見れる目を持った経営者がいるかどうかも大切です。

睡眠をきちんと取る

睡眠不足の状態で仕事に行っていませんか?睡眠不足の状態で脳波を測定すると、実際は起きているにもかかわらず、寝ているときと同じ脳波を示すことがあるとわかっています。

また睡眠不足だとお酒を飲んだときと同じくらい集中力が低下することもあるそうです。集中力の低下は調剤過誤の確率を上げてしまうため、夜更かしはせずにきちんと睡眠を取りましょう。

薬袋の印刷もしっかり確認する

調剤したお薬も、患者さんへの説明も間違っていなかったのに調剤過誤を起こした例が過去にあります。薬袋の印字が間違っていたのです。

「デパス錠0.5mg 1回 1錠 10回分」と印字すべきところを、「デパス錠0.5mg 1回 10錠」としてしまったため、患者さんが一度に10錠のデパスを飲み意識不明となることがありました。

監査では薬袋に印字されていることが間違っていないことも、もちろん確認しなければなりません。調剤されたお薬の数だけしか見ていないと、このような事故が起こってしまいます。

薬局薬剤師

どうしても睡眠時間を確保できないときは、眠り始めの90分を意識しましょう。最初の90分で深い睡眠ができれば、睡眠時間が短かったとしても質の高い睡眠ができます。ベッドに入ったらスマートフォンを使わない、深酒をしないなど気をつけるとよいですよ。

計数ミスは電卓で防ぐ

忙しいときはついつい暗算で計算してしまいますが、計数ミスをしやすい方は普段から電卓を使いましょう。暗算が苦手な方は電卓を使うだけでミスしにくくなりますよ。

周りが暗算でささっと計算している中、電卓を使うのは気まずいこともあるかもしれませんが、調剤過誤を起こすよりは何倍もマシです。

また計数ミスを防ぐために作られた、「余り計算電卓」というものも販売されています。余り計算電卓を販売しているCASIOによりますと、この電卓を使用することで調剤業務のヒヤリハット件数を70%も削減できたそうです。

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調剤過誤システムを導入する

バーコードを読み取って調剤過誤を起こさないようにするシステムは有名です。散剤の調剤をするときに機械へバーコードを読み取らせ、使った医薬品名をレシートに印刷する方法があります。

また散剤だけでなく、錠剤や貼付剤などすべての医薬品のバーコードを読み取りながら調剤するシステムも開発されています。誤った医薬品を読み込むとブザー音で知らせてくれるので、監査の前の段階でミスに気づくことが可能です。

このように機械の力を借りることで、よりミスの少ない調剤環境を整えられます

ポイント!
日本薬剤師会が「新任薬剤師のための調剤事故防止テキスト」というものを公開しています。薬剤師の経験年数と調剤過誤の起こりやすさや過去にあった過誤の事例、事例ごとミスを防ぐポイントが掲載されているものです。新任薬剤師だけでなくすべての薬剤師に一度は読んでほしい内容となっています。今回ご紹介した調剤過誤の例もいくつかは新任薬剤師のための調剤事故防止テキストからご紹介しています。

具体的な数字を入れて疑義照会をする

処方せんを見て「用量が多いな」と感じたら疑義照会をする、というのは当たり前のことです。

このとき「用量にお間違いはありませんか?」ではなく「通常の10倍ほどの量になっていますが、お間違いはありませんか?」「年齢に対して用量が多すぎるのでご確認お願いいたします」など、緊急性が伝わるような内容で問い合わせましょう。

疑義照会の電話をかけると間に看護師や事務が入ってやりとりされることも多く、やんわりとした言い方では医師に内容が伝わらないことがあるのです。

「○○さんの処方について量が多いかもしれないって問い合わせがきているんですけど…」と言われるのと「通常より10倍くらい多くなっているみたいなんですけど…」と言われるのとでは医師の受け止め方も違いますよね。

できるだけ具体的な数字を入れて疑義照会をしましょう。

まとめ

医療過誤を起こさないように注意、対策をすることが大切
薬剤師がかかわる医療過誤について、ご説明しました。

医療過誤は起こさないことが一番ですが、人間がかかわっている以上、ミスをゼロにすることは難しいものです。ミスは起こるものだと認識して、注意を払いながら業務にあたりましょう

ダブルチェック・トリプルチェックを徹底したり、間違いが起こりやすい事例を把握することも重要です。ヒヤリ・ハット事例を共有することもオススメです。

薬局薬剤師

万が一事故が起こってしまった場合には、決して隠蔽したりごまかしたりするのではなく、真摯な対応を心がけなくてはなりません。一人で抱え込むのではなく、周りに相談して、改善策を見つけましょう。

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