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薬剤師のフィジカルアセスメント・医療行為はどこまで可能!?意義・講習・法律・厚労省基準・問題点について解説していきます。

薬剤師はどこまで医療行為に踏み込んでいいのでしょうか。「患者に触れてはいけない」と言われてきた薬剤師も、最近では「フィジカルアセスメントをできるようになるべき」という流れができつつあります。

しかしこのフィジカルアセスメントも、度を過ぎれば医療行為として見なされてしまう可能性があることも否定できません。薬剤師なら知っておきたいフィジカルアセスメントに関する法律や問題点、実践方法などをここではご説明します。

薬局薬剤師

薬剤師がどこまで介入していいのか、どこまでできるようになるべきなのかをご紹介します!

※本記事は、2021月6月14日現在でのスタンスであり、今後の法改正等により状況が大きく変わることもあり得ます。あらかじめご了承の上記事を読み進めていただけると幸いです。

薬剤師も注目すべき「フィジカルアセスメント」とは?

今後薬剤師にはフィジカルアセスメントのスキルが求められる
「フィジカルアセスメント」は薬学部の授業でも取り上げられるようになってきました。具体的にどのようなものをフィジカルアセスメントというのかをまずは見ていきましょう。

フィジカルアセスメントの意味

フィジカルアセスメントのフィジカルとは、“体”や“肉体”を意味する単語です。アセスメントは“評価”という意味を持ちます。つまりフィジカルアセスメントとは、体の状態を評価することです。問診・視診・触診・聴診・打診の5つによってフィジカルアセスメントをしていきます。

薬剤師が患者さんの体の状態を把握することで、副作用が起きていないかや処方されたお薬が適正に使用されているかなどを把握することが可能です。

薬局薬剤師

フィジカル(体)をアセスメント(評価)するのがフィジカルアセスメントです。見たり触ったりすることで患者さんの状態を把握します。

薬剤師もフィジカルアセスメントができる時代に

薬剤師=調剤というイメージが強いですが、そうも言っていられない時代がすぐそこまで来ています。超高齢社会の日本の医療をどう支えていくのかが重要視されている今、薬剤師も少しずつ「できること」「やるべきこと」を広げていかなければなりません

もちろんフィジカルアセスメントも例外ではなく、患者さんをより細かく見れるようになることで薬剤師の能力や質を高め、臨床現場に活かせるようになることが期待されています。とはいえ実際にフィジカルアセスメントをしている薬剤師を見かけることはあまりないかもしれません。

どうでしょう、あなたの周りにフィジカルアセスメントをしている薬剤師はいますか?実は私が知っている薬剤師の中に、聴診器を使って患者さんの状態を見ている薬剤師が1人だけいます。

県内でも大きな病院に勤めているその薬剤師は、聴診器を使って心臓の音を聞くことで薬が効きすぎたり逆に効いていなかったりしないかをチェックしているのです。これは立派なフィジカルアセスメントですよね。

薬局薬剤師

フィジカルアセスメントのスキルをつけるために講習に参加している薬剤師も今まで何人か見かけました。じわじわとフィジカルアセスメントをできる時代が近づいてきています。

薬剤師は医療行為ができない

薬剤師が医療行為をするのは医師法違反
フィジカルアセスメントができる薬剤師が必要とされるのは紛れもない事実です。しかし薬剤師は、法律によっていわゆる医療行為ができないと定められています

フィジカルアセスメントをして法律違反をしてしまうことのないよう、医療行為のルールについて押さえておく必要があるでしょう。

「医業」や「医行為」は医師のみができる

薬剤師がやってはいけないこと、それは医業や医行為にあたるものです。

医業や医行為とは
〈医業〉
医行為を業として行うこと

〈医行為〉
人体に危害を及ぼすもの、危害を及ぼすおそれのある行為のこと

医業や医行為の決まりについては、医師法第17条に以下のように記載されています。

医師でなければ、医業をなしてはならない。
(参考:医師法)

つまり医業は医行為を業として行うことなので、医師以外の者が医行為をしてはいけないということです。

医行為に該当しないもの

どういったものが医行為に該当するのかよりも、何なら医行為に該当しないのかを覚えておいた方が早いでしょう。

「これなら医師でなくてもやっていいんだ」と覚えておくと便利ですよ。以下に紹介する行為は、厚生労働省により医行為ではないと発表されているものです。

  • 体温測定
  • 血圧測定
  • 動脈血酸素飽和度測定
  • 軽微な切り傷、擦り傷、やけど等の処置
  • 皮膚への軟膏の塗布
  • 皮膚への湿布の貼付
  • 点眼薬の点眼
  • 一包化された内服薬の内服
  • 肛門からの座薬の挿入
  • 鼻腔粘膜への薬剤噴霧
  • 坐薬挿入
  • 点鼻
  • 市販浣腸の挿入
  • 爪切り
  • 口腔ケア

ただし、それぞれの項目で医行為に該当しないための条件があります。詳しい条件については以下の画像を参考にしてください。

医療行為 条件
※画像をタップすると拡大できます。

参考:在宅医療にかかわる薬剤師の患者に対する直接接触行為に関する研究─法的妥当性の認識と抵抗感─

薬局薬剤師

上記の医行為に該当しないものは、条件を満たせば薬剤師でも大丈夫だと考えられます。在宅に行ったときに「どこまで薬剤師がしていいんだろう?」と疑問に思ったときは上記を参考にしてみてください。

医行為のうち相対的医行為は看護師でも可

医行為は医師しかしてはいけない!という考えは、実は半分正解で半分間違いです。医行為には絶対的医行為と相対的医行為の2種類があり、相対的医行為に該当するものなら医師でなくても行うことができます。

絶対的医行為と相対的医行為
〈絶対的医行為〉
医師のみが行えるもの

〈相対的医行為〉
診療の補助として看護師も行えるもの

看護師は医師の手となり足となり動いていく職種です。そのため薬剤師とは違い、特定の医行為でしたら看護師でも行えるのです。病院に行くと看護師が点滴や注射をしてくれることからも、看護師が患者さんに行える行為が多いことがわかります。

看護師の裁量に関しては保健師助産師看護師法に記載されています。

この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しく
はじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。

参考:保健師助産師看護師法 第5条

薬剤師の独占業務は「調剤」のみ

一方で薬剤師がやってもいいとされているのは基本的に調剤のみです。看護師のように医師の手足の代わりに動けることは基本的にありません。

薬剤師の医療行為

参考:薬剤師の行う医療行為に関する医事法学的研究

上の図を見てもわかるように、薬剤師の独占業務として認められているのは調剤業務のみです。具体的には以下の行為が可能になっています。

  1. 薬剤の種類、投与量、投与方法、投与期間等の変更や検査のオーダーについて、医師・薬剤師等により事前に作成・合意されたプロトコールに基づき、専門的知見の活用を通じて、医師等と協働して実施すること
  2. 薬剤選択、投与量、投与方法、投与期間等について、医師に対し、積極的に処方を提案すること
  3. 薬物療法を受けている患者(在宅の患者を含む)に対し、薬学的管理(患者の副作用の状況の把握、服薬指導等)を行うこと
  4. 薬物の血中濃度や副作用のモニタリング等に基づき、副作用の発現状況や有効性の確認を行うとともに、医師に対し、必要に応じて薬剤の変更等を提案すること
  5. 薬物療法の経過等を確認した上で、医師に対し、前回の処方内容と同一の内容の処方を提案すること
  6. 外来化学療法を受けている患者に対し、医師等と協働してインフォームドコンセントを実施するとともに、薬学的管理を行うこと
  7. 入院患者の持参薬の内容を確認した上で、医師に対し、服薬計画を提案するなど、当該患者に対する薬学的管理を行うこと
  8. 定期的に患者の副作用の発現状況の確認等を行うため、処方内容を分割して調剤すること
  9. 抗がん剤等の適切な無菌調製を行うこと

引用:薬剤師によるフィジカルアセスメントの実践

つまり薬剤師は、医行為に抵触することなくフィジカルアセスメントをするよう注意しなければならないのです。

薬剤師が予防接種の注射をするべきか否か

新型コロナウイルスの予防接種が可能になったことから、ワクチンの接種が進められています。しかし、ワクチンを接種する打ち手が不足していることが課題です。

そこで「薬剤師も予防接種をできるようにしよう」との声がワクチン接種担当を兼務している河野太郎氏の声から出ました。

薬剤師も予防接種ができるようになれば、薬局やドラッグストアでも接種できるようになる可能性があるほか、打ち手の不足を大きく改善することができるでしょう。

ついに薬剤師でも注射できる時代が来るのか?と期待をもちましたが、やはり医師法という壁が立ちはだかり残念ながら実現しそうにはありません「医行為ができない薬剤師にはやらせるべきではない」「不慣れな薬剤師から注射されたくない」といった声まであります。

海外では薬剤師でも予防接種ができることから日本でもいつかできようになりたいものです。

薬局薬剤師

注射する側としては活躍できませんが、ワクチンの調製をする人手もたりていないため、裏方として活躍している薬剤師が多いようです。

海外の薬剤師事情はどんな感じ?日本との違い・海外ボランティア・海外で働くにはどうしたらいい?

薬剤師がフィジカルアセスメントをする意義

薬剤師がフィジカルアセスメントをする意義とは?
医師法に反するかもしれないリスクがあるのに、なぜ薬剤師がフィジカルアセスメントをすることが求められるようになってきたのでしょうか。それは薬剤師がもう一歩、医療へ踏み込んで活躍できることが求められるようになったからです。

まず薬学部が4年制から6年制に移行した理由を考えてみてください。医療チームの一員として活躍できる薬剤師を育成し、増えつつある薬剤師の業務に対応できるようにする、これが6年制への移行理由です。

ただお薬を患者さんに渡すだけでなく、投薬後の状態まで状態をチェックし治療に介入していく必要が出てきたわけですね。その介入方法としてフィジカルアセスメントが重要視されるようになりました。

ポイント!
将来的には薬剤師も採血できるようにとの声も挙がっています。他に血糖測定もできるようにしてほしいと言われる方も多いですね。薬局で採血や血糖値測定ができるようになればより細かな服薬指導が可能になります。

薬剤師がフィジカルアセスメントをするのは法的にOK?

うっかり医行為をしてしまったら法律違反です。そんな危険性のあるフィジカルアセスメントをそもそも薬剤師は行っていいのか?という疑問の声もあります。医行為はもちろんのこと医師法違反となりますが、医行為に該当しないフィジカルアセスメントを禁止する法律は今の所ありません

しかし禁止されていないからといって、薬剤師がフィジカルアセスメントをしていい理由になるかと言われたら、そうではないのが現状です。フィジカルアセスメントは違法でもないけど、認められているわけでもないという状況が続いています。

参考:薬剤師の行う医療行為に関する医事法学的研究

フィジカルアセスメントを学ぶメリット

フィジカルアセスメントを学ぶことで、間違いなく在宅医療活躍できる薬剤師になるでしょう。超高齢社会が進むに伴い在宅医療の必要性がますます高まると言われている今、残薬の調整だけでなく血圧や脈拍などの情報を集められる薬剤師の必要性が高まっていきます。

薬剤師としてもフィジカルアセスメントを学ぶことで、薬を投与した後のことまで観察していくことが可能です。より踏み入った医療の担い手として活躍できることが、1番のメリットでしょう。

薬剤師がフィジカルアセスメントをする際の問題点

唯一の問題点としては、行き過ぎたフィジカルアセスメントが医師法違反になってしまう可能性があるということです。

患者さんに頼まれて良かれと思ってやったことが、実は医師法違反だったなんてことになりかねません。

またフィジカルアセスメントをするときは、患者さんに了承を得ることも大切です。薬剤師がなぜ患者さんに触れる必要があるのか、触れることでどういったメリットがあるのかを説明しなければ患者さんに「薬剤師に見てもらって何の意味があるの?」と不審がられてしまうかもしれません。

フィジカルアセスメントを学びたいなら講習に参加しよう

フィジカルアセスメントを学ぶなら講習会の参加がオススメ
フィジカルアセスメントをテキストだけで学ぶのはまずムリですので、しっかり技能を身に付けたい方は講習に参加する必要があります。以下のサイトから実施されている講習を探すことが可能です。

上記以外にも、薬学部を持つ大学でフィジカルアセスメントの講習会を行っていることもあります。参加できそうな講習を探してフィジカルアセスメントを学んでみましょう。

まとめ

これからの時代を生きるならフィジカルアセスメントのスキルを磨こう
フィジカルアセスメントは、これからの薬剤師に求められるスキルの1つであることは間違いありません。しかしフィジカルアセスメントの実施について定めている法律が今の所ありません。そのため医行為にあたらないように気をつけながら実施していく必要があります。

フィジカルアセスメントは薬剤師フィジカルアセスメント研究会や日本在宅薬学会、大学などで行われている講習で学ぶことが可能です。医師法に違反せず、より実践的なフィジカルアセスメントを身につけるためにも、講習に参加するのがもっとも賢明な手段でしょう。

薬局薬剤師

これからの時代を生き抜いていける薬剤師になるためにはフィジカルアセスメントの技術を習得することが必須ですが、医師法の関係から積極的に手を出せないのが現状ですね。これからの改革に期待です!

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