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オーソライズドジェネリック(AG)とは?先発医薬品や一般ジェネリックとの差・薬価・メリット・デメリットをまとめました

オーソライズドジェネリック(AG)とは?先発医薬品や一般ジェネリックとの差・薬価・メリット・デメリットをまとめました

「オーソライズドジェネリック(AG)」は、先発医薬品の信頼性と後発医薬品の経済性の2つを両立させた医薬品として、非常に重要視されています。

研究開発費が低く抑えられることから、先発医薬品と比べると薬価が安く患者さんの負担軽減や医療保険財政の改善に役立つことが特徴です。

「普通のジェネリック医薬品とオーソライズドジェネリックは何が違うの?」
「そもそもオーソライズドジェネリックって何?」

と疑問に思っている方にむけて、この記事では、国内におけるジェネリック医薬品の流れやオーソライズドジェネリックの特徴について詳しくご紹介します。

薬局薬剤師

オーソライズドジェネリックのメリットやデメリット、経営者の視点から見たオーソライズドジェネリックの落とし穴についても紹介しているので参考にしてみてくださいね。

オーソライズドジェネリック(AG)とは

オーソライズドジェネリック(AG)とは
後発医薬品を普及させるための方法の一つとして、オーソライズドジェネリック(AG)があります。

直訳すると「許諾を受けたジェネリック」という意味ですが、実際にはどのようなものなのでしょうか。

一般的なジェネリック医薬品との違い

ジェネリック医薬品とオーソライズドジェネリックとの大きな違いは、原薬や添加物などにあります。

オーソライズドジェネリックとは

オーソライズドジェネリックとは、先発医薬品を販売しているメーカーが特許権を許諾することで、製造方法や原薬、添加物を同一として発売することが認められている医薬品です。

主成分だけでなく添加物や製造方法まで先発医薬品と同じなので、ジェネリック医薬品に抵抗がある方でも使いやすいのが特徴です。

ジェネリック医薬品とは

ジェネリック医薬品とは、先発医薬品の特許および再審査期間の満了後に発売される、先発医薬品と同一であると認められた医薬品です。

通常、この場合の特許とは「物質特許」を指していますが、医薬品の特許の仕組みは複雑で、製造方法製剤技術に特許を取得している場合もあります。

これらの特許が残っている場合は、物質特許が切れていても、 同じ製造方法で作ることはできません。

また原薬や添加物の調達方法が異なる場合には、有効成分以外の成分が一部異なることが一般的です。

下記の表にそれぞれの違いをまとめたので、確認しておきましょう。

 オーソライズドジェネリック(AG)一般的なジェネリック
有効成分同一同一
原薬同一異なる場合がある
添加物同一異なる場合がある
製造方法同一異なる場合がある
効能・効果基本的には同一※基本的には同一※
※再審査対象の適応症を除く

薬局薬剤師

オーソライズドジェネリックは先発と添加物や製造方法まで同じもの、ジェネリック医薬品は有効成分のみが同じものなのですね。

代表的なオーソライズドジェネリックの一覧も合わせて載せておきます。

AGの商品名AGの社名先発品名先発社名
ブロナンセリンDSファーマバイオメディカルロナセン大日本住友製薬
シロドシン第一三共エスファユリーフキッセイ
シロドシンOD第一三共エスファユリーフODキッセイ
ゲフィチニブ第一三共エスファイレッサアストラゼネカ
ベポタスチンベシル酸塩二プロタリオン田辺三菱製薬
オルメサルタン第一三共エスファオルメテック第一三共
セフジトレンピボキシルMeiji SeikaファルマメイアクトMeiji Seikaファルマ
レバミピド大塚工場ムコスタ大塚製薬
バラシクロビルアスペンバルトレックスGSK
レボフロキサシン第一三共エスファクラビット第一三共
バルサルタンサンドディオバンノバルティス
フェキソフェナジン日医工アレグラサノフィ

オーソライズドジェネリックのメリットとは?

  • 先発医薬品よりも安価
  • ジェネリック医薬品に不安感を抱く方でも使いやすい

オーソライズドジェネリックは、先発医薬品と同一品質のジェネリック医薬品でありながら、新薬開発のコストがかからない分、先発医薬品よりも安価です。

他社から発売されているジェネリック医薬品に比べて信頼性が高く、ジェネリック医薬品の品質を不安視される方にも受け入れられやすいという特徴があります。

ジェネリック医薬品の不安
参考:大日本住友製薬グループのオーソライズド・ジェネリック|大日本住友製薬 医療関係者向け

上のアンケート結果を見てわかるように、実はジェネリック医薬品を不安に思う方の72.6%は、効き目や副作用について不安をもっています

ジェネリック医薬品だと添加物や原薬、製造方法が異なることもあることから、効果が同じではなかったり先発医薬品とは違った副作用の出方をしたりする可能性もあるのです。

しかしオーソライズドジェネリックなら、原薬も添加物も製造方法も同一なので、効果や副作用に不安がある方でも使いやすくなっています

「これまで先発医薬品でコントロールがうまくいっていた」「前に他社のジェネリック医薬品で副作用が出た」という方には、訴求力が高いでしょう。

また先発医薬品を販売しているメーカーの子会社や関連会社が製造販売を行うため、これまでに蓄積された臨床試験データなどを受け継いでいることもあります。

医師も「オーソライズドジェネリックなら変えても良いよ」と言ってくれるケースも多いので、ジェネリック医薬品を患者さんにオススメする際に、メリットがあるのです。

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以前は特許切れよりも早く発売できるというメリットもありましたが、最近では先行発売による独占販売が問題視され、他社のジェネリック医薬品と同時期に発売されるようになりました。

オーソライドジェネリックにはデメリットもある

先発医薬品と同一品質のオーソライドジェネリックですが、メリットだけでなくデメリットもあります。

  • 先発医薬品とまったく同じ剤形しかない
  • 種類が少ない

ジェネリック医薬品とは違い、オーソライドジェネリックは先発医薬品とまったく同じ剤形で製造されます。そのためジェネリックならではの剤形違いがありません。

飲みやすいように口腔内崩壊錠(OD錠)にするなどの工夫ができないのです。

また種類が非常に少ないのもデメリットです。オーソライズドジェネリックはまだわずかしかありません。

そのためオーソライズドジェネリックを使いたくても使えない状況も起こりえます。

なぜメーカーはオーソライズドジェネリックを発売するようになった?

さまざまなメリットがあるオーソライズドジェネリックですが、すべての医薬品において発売されているわけではありません。

むしろ、オーソライズドジェネリックがある医薬品は数えるほどしか無く、ほとんどの医薬品は一般的なジェネリック同士が競争をしているという現状があります。

オーソライズドジェネリックがあまり普及していない理由としては、日本市場の特徴である、ジェネリック医薬品への置き換えが遅いということがあります。

国民皆保険による日本の医療制度では、患者さんの自己負担は1~3割となるので、ジェネリック医薬品に置き換えても価格の差があまり実感できません。

医師が先発医薬品を推奨すれば、患者さんの多くは先発医薬品を選択してしまうため、営業活動をしっかりと行って先発医薬品のシェアを維持する方が、製薬会社の利益につながりやすかったのです。

しかし近年では、医療費抑制のため、国が主導してジェネリック医薬品の普及を推進するようになりました。製薬会社の営業活動だけでは後発医薬品の流れを阻止できなくなってきたので、オーソライズドジェネリックが普及するようになったのです。

ポイント!
国が医療費削減のためにジェネリック医薬品の使用を推進している影響で、先発医薬品の売上が落ちてしまう可能性があります。これを危惧した先発メーカーが、せめて自社の系列会社に売上を流そうと考えた結果できたのがオーソライズドジェネリックです。

参考:後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用促進について|厚生労働省

医療業界におけるジェネリック医薬品の流れ

医療業界におけるジェネリック医薬品の流れ
今でこそ、ジェネリック医薬品の存在は誰もが知るものとなりました。しかしジェネリック医薬品が普及するためには、非常に長い期間を要してきたということはごご存知でしょうか?

まずは医療業界におけるジェネリック医薬品の流れについて、みていきましょう。

かつてはほとんど普及していなかったジェネリック医薬品

ジェネリック医薬品が広く認知され、普及するようになったのは、この10年の間といわれています

かつては、アメリカ合衆国・イギリス・ドイツなどの国では7割以上のシェアを有していながら、日本では1割前後にとどまっていました

ブランド志向の高い国民性に加えて、医療現場におけるパターナリズム(家父長主義)が原因と考えられています。

患者レベルまで適切な情報が伝わらず、医師の収入に直結しやすい高薬価の先発医薬品が選択されてきたのです。

またゾロ医薬品とよばれていた時代には粗悪な製品も多く、効果に明らかな差があるものも多かったことも、ジェネリック医薬品の普及が遅れた理由の一つです。

「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」の策定

医療業界では話題になることも多いですが、「2025年問題」という言葉をご存じでしょうか?

これは、団塊(第一次ベビーブーム)の世代が75歳を超えて後期高齢者となり、超高齢化社会が到来するという問題です。

2025年には国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上となり、医療費が一気に増大することが予測されています

そのため2025年までのなるべく早い段階で、ジェネリック医薬品の使用率を引き上げることが、国の主導によってすすめられてます。

厚生労働省では、平成25年4月に「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」を策定して、取り組みを強化するようになりました。

【2025年問題】高齢化が進む日本で薬剤師がはたすべき役割は?在宅医療・併設複合型の店舗増加・「健康の起点」となることがカギか

後発医薬品(ジェネリック)比率80%を目指す

前項でご説明したロードマップを皮切りに、平成27年6月の閣議決定において、「平成29年央に70%以上とするとともに、平成30年度から平成32年度末までの間のなるべく早い時期に80%以上とする」という目標が定められました。

またこの80%目標の達成時期については、平成29年6月の閣議決定において、「平成32年9月までに、後発医薬品の使用割合を80%とし、できる限り早期に達成できるよう、更なる使用促進策を検討する。」とされています。

平成29年3月時点での後発医薬品割合は73.0%と、これらの目標は順調に達成されつつあります

参考:「平成29年度 調剤医療費の動向」|厚生労働省

今後この流れはさらにすすむと考えられており、実際に80%を超える日も、そう遠くはないでしょう。

【コラム】薬局経営者である私がオーソライズドジェネリックを採用しないワケ

【コラム】薬局経営者である私がオーソライズドジェネリックを採用しないワケ

    • オーソライズドジェネリック(AG)は確かに人気がありますが、私の経営している薬局では、

残念ながら1品目も採用していません

経営者としてだけでなく薬剤師としてに現場に立つ私は、普通のジェネリックより患者受けが良いことも、十分に理解しています。なるほど品質も高いでしょう。

では、なぜAGを採用しないのでしょうか?答えは簡単、価格が高いからです。

「ん?AGと他のジェネリックは同薬価では?」と考えるそこのアナタ。納入価のことはご存じですか?

納入価とは、医薬品卸から薬局に納入される価格のこと。この納入価と薬価の差が、薬価差益というワケです。

例えば1錠当たり薬価100円のお薬の納入価が70円であれば、30%引きです。これに消費税8%(2018年時点)がかかるので、24円程度が薬価差益となるわけです。

AGは高品質なお薬ですが、メーカーはその分強気です。安い価格は絶対に出しません。10~20%引きが限度でしょう。

では、そのほかのメーカーのジェネリック医薬品はどうなのでしょうか?メーカーにもよりますが、大型商品であれば30、40%引きはザラなもの。中には、直販で60%引きなんてものもあります。

100円のお薬が、40円で買えてしまうわけです。それが月に10,000錠出たりしたらどうでしょう?薬価差益だけで、数十万円ですよ。

なので経営者の立場であれば、オーソライズドジェネリックを安易に選ぶことはできないのです。

薬局薬剤師

オーソライズドジェネリックは薬価差益が少なく薬局の利益にあまり貢献しないため、経営者目線では喜んで受け入れるとはいえないものなのですね。

まとめ

オーソライズドジェネリックについて、解説していきました。オーソライズドジェネリックとは、先発医薬品と同じ原薬や製造方法を採用しているのに薬価が安い医薬品のことです。

最近では、Meiji Seikaファルマが主力医薬品である「メイアクトMS」のオーソライズドジェネリックを発売して、話題となりました。

今後は、さまざまな医薬品においてオーソライズドジェネリックが発売されていくと考えられています。

薬剤師として働く以上、患者さんに対してジェネリック医薬品の説明を適切にできることは、必要不可欠です。

薬局薬剤師

患者さんにとってはいいことばかりのオーソライズドジェネリック。積極的に採用できる環境が整ってくれるといいですね。

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