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アドヒアランス・服薬厳守度向上のコツは?慢性疾患の治療継続・改善には薬剤師の服薬指導が鍵を握る。

アドヒアランス向上とは?慢性疾患の治療継続・改善には薬剤師の服薬指導が鍵を握る。

「患者さんがきちんと薬を飲んでくれない」「服薬指導をきちんと聞いてくれない」「残薬が合わないことが多い」など、患者さんの薬のことでお困りのことはありませんか?

いくら伝えても薬を飲んでくれないだけでなく、病院にもきちんと来ない。医師も困っているケースもあるでしょう。

そんなときは、アドヒアランスの向上を目指すことで、改善のきっかけが得られるかもしれません

この記事では、アドヒアランスの概要やその改善方法について、解説していきます。

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アドヒアランスがそもそも何なのか、どうすればアドヒアランスを向上させるための服薬指導の方法などを紹介します!

アドヒアランスとは

アドヒアランスとは
まずはじめに、アドヒアランスとは何かということを知っておかなければいけません。またアドヒアランスと間違いやすい言葉にはどのようなものがあるのかについても、みていきましょう。

アドヒアランスの定義を知ろう

アドヒアランス(adherence)は、直訳すると「執着」「固守」という意味の言葉ですが、医療業界では「患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること」という意味で用いられます。

患者さん本人が治療の選択や決定に積極的に参加して、服薬の必要性や意義を理解することで、高い治療効果を発揮させることを目的としています。

「この薬を1日3回飲んでください!」というだけでは、患者さんの理解や同意は得られません。

「治療を行わないと、○○という病気になる可能性があります。この薬を1日3回飲むことで、発症する確率を○○%低下させることができますよ。」と、治療の必要性を伝え、本人から積極的に治療に参加してもらうようにしましょう

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アドヒアランスとは、患者さん自身が治療へ積極的に参加し、治療を進めていくことです。

コンプライアンスとの違いとは

アドヒアランスとよく似た言葉に、コンプライアンス(compliance)というものがあります。

コンプライアンスは、一般的には「法令遵守」の意味で用いられますが、医療業界では「服薬遵守」のことをあらわしてています

患者さんの服薬の是非を問うものですが、医療従事者から患者さんに対する一方的な指示であり、患者さんの理解や意思は必要とされません。

以前はコンプライアンスのみが着目されていましたが、最近ではアドヒアランスの方が重要視されるようになりました。

患者さん自らの意思で積極的に医療に参加することが、より良いコンプライアンスをもたらすことにもつながるのです。

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コンプライアンスとは、決められた用法用量通りに服薬することです。

コンコーダンスとの違いとは

コンプライアンスと並んで有名な言葉に、コンコーダンス(concordance)というものがあります。

こちらは直訳すると、「一致」「調和」という意味をあらわしますが、医療業界におけるコンコーダンスは、英国で生まれた考え方です。

「患者さんとのパートナーシップにもとづいた、薬の処方と服薬のプロセス」としてあらわされ、医療従事者と患者さんとの協力関係が基盤となっていることが特徴です。

アドヒアランスは、もともとコンプライアンスの向上のために志向された考え方であり、「治療方法に患者さんがどれほど従っているか」に注目しています。

一方で、コンコーダンスは患者さんの主体性に注目しており、「患者さん本人を主体として、両者の考えを尊重し合う」ことに主眼を置いているのです。

言葉意味
アドヒアランス患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること。
コンプライアンス服薬遵守のこと。飲み忘れることなく服薬していくこと。
コンコーダンス患者さんとのパートナーシップにもとづいた、薬の処方と服薬のプロセスのこと。
ポイント!
WHO(世界保健機関)や英国以外の諸国では、アドヒアランスの考え方が一般的ですが、コンコーダンスも非常に重要な考え方です。

アドヒアランスが低下する原因

アドヒアランスが低下する原因
患者さんが治療へしっかりと参加してくれれば、私たち医療従事者が頭を悩ませることも少なくなります。しかし現実は、なかなか思うように治療を進められないことが多いものです。

いったい何がアドヒアランスの低下を招いているのでしょうか。

副作用が心配

薬を飲むことについて「怖い」「できたら飲みたくない」と考えている方もいます。とくにこれまでに飲んだことのない新しい薬だと、副作用が心配になる方もいるでしょう。

服薬への恐怖心がある方は、なかなかスムーズに治療を進めることができません。薬剤師がいかに恐怖心を取り除けるアプローチをできるかが鍵となるでしょう。

薬を飲むことが難しい

「粉薬はむせて飲みにくい」「錠剤は喉につっかえてしまう」と、薬を飲み込むことが苦手な方もいます。小さな子供には飲みやすい剤形で出すような配慮がされることが多いのですが、年齢を問わず飲みにくさを感じてる方はいるものです。

「錠剤は飲みにくくないですか?」などと聞いてみると意外と「ちょっと飲みづらくて…」と返ってくることがあるので、確認してみましょう。

効果を感じられない

薬を飲んでもなかなか効果を実感できないこともあります。「飲んでもムダ」と思っている方は、なかなか積極的に服薬してくれないかもしれません。

薬によっては効果が出るまでに数週間ほどかかるものもあるため、薬剤師がうまく説明することが大切です。

薬の管理能力が低下している

とくに認知機能が低下している高齢者では、薬をうまく管理できていない方が見られます。

薬を飲んだかどうかを忘れたり、用法用量を誤って認識しているため服用量を間違ったりしていることがあるのです。このような患者さんには周りのサポートはもちろん、用法用量とおりに服薬できるよう一包化やお薬カレンダーなどの活用が望まれるでしょう。

薬の数が多い

何種類もの薬が処方されていると、その気はなくてもうっかり飲み忘れたりタイミングを間違えてしまったりするものです。

数が多いために服用するのが面倒になり、やめてしまう方もいます。

アドヒアランスの低下がもたらす結果とは

アドヒアランスの低下がもたらす結果とは
アドヒアランスが低下してしまうと、どのようなことが起こってしまうのでしょうか。

実際に起こりうる内容を、いくつかご紹介します。

期待した治療効果が発揮されない

アドヒアランスの低下によっておこる最大の問題は、期待した治療効果が発揮されないということです。

脳梗塞の再発予防や、心疾患における各種イベントの予防などで用いる薬は、アドヒアランスの低下が死につながることもあります。

高血圧や高脂血症などの慢性疾患で用いる薬も、きちんと服用できなければ、さらなる疾患の発症を引き起こす要因になりかねません。

薬物治療は、医師がおこなう治療の中でも、重要な役割を担っています。よって薬は、正しく服用することが強く求められています

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薬物治療をより良いものにすることは、薬剤師にとって使命ともいえます。治療効果を正しく評価できないことにもつながるため、服薬指導の際には、アドヒアランスを意識しましょう。

副作用が増えてしまう

薬の中には安全域(薬の量を調節できる範囲)が狭く、正しい用法・用量で服用しなければ、重大な副作用を引き起こしてしまうものもあります。

間違った薬を飲んでしまうことで、思わぬ副作用を引き起こしてしまうこともあるでしょう。

また一度副作用を経験してしまうと、薬に対する不信感があらわれてしまい、アドヒアランスのさらなる低下につながることもあります。

このような負のスパイラルをまねかないためにも、アドヒアランスの向上は非常に重要です。

医療コストの増加につながる

アドヒアランスが低下してしまうと、前述のとおり期待された効果が発揮されず、副作用を引き起こすリスクにもなってしまいます。

本来であれば治っているはずの病気も、再燃・再発を引き起こしてしまうこともあります。副作用によって、さらなる治療が必要となることもあるでしょう。

さらに服薬状況が悪いと、医師が治療効果を正しく評価できず、不必要な薬を処方してしまったり、適切では無い用量を処方してしまうという可能性もあります。

これらの結果として、医療コストが増加してしまうことがあるので、注意が必要です。

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薬剤師がアドヒアランスを改善する方法とは

アドヒアランスの改善方法とは
アドヒアランスの重要性はここまでご説明したとおりですが、アドヒアランスを改善するためには、どのようなことができるのでしょうか。

薬剤師の立場で取り組めることを、いくつかご紹介します。

服薬の必要性を理解してもらう

薬を忘れずに飲むことは、専門知識のない人にとっては負担です。薬を飲むことの意義がわからなければ、きちんと治療を継続することは難しいでしょう。

そんな患者さんのアドヒアランスを向上させるためには、服薬の必要性を理解してもらうことが重要です。

「今飲んでいるお薬は何のために服用しているのか」「服用しないとどんなデメリットが生じるのか」ということをきちんと説明して、患者さんが自分から薬を飲みたいと思える状況に導きましょう。

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一方的な指示だけでは、患者さんは納得してくれません。患者さんの意見を尊重しながら、服薬の意義を伝えましょう。

アドヒアランスを妨げる要因を見つける

時には、患者さんの意見に耳を傾けて、アドヒアランスを妨げる要因を見つけることも重要です。

「薬を飲みたいけど、多すぎてよく分からない」「喉につかえて苦しくて、服薬が大きな負担になっている」など、問題が生じている場合もあるのです。

「多すぎてよく分からない」という場合には、アドヒアランスの問題ではなく、薬を管理する能力に問題がある可能性があります。一包化や服薬ロボット、お薬カレンダーの使用を検討してみましょう。

「喉につかえて苦しい」という場合には、嚥下力が低下していることが問題であると考えられます。OD錠や細粒への剤型変更を、医師に提案してみましょう。

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患者さんのニーズをみきわめ、医師や他の医療従事者との橋渡しを担うことが、薬剤師には求められているのです。

患者さんの周りにも協力してもらう

とくに高齢者は、多くの医薬品を毎日のように服用しています。70歳以上の方だと平均で6種類以上もの薬を飲んでいるそうです。ここまで多いと、年齢に関係なく飲むのが億劫に感じてしまうのではないでしょうか。

もし高齢者の周りに身近な方がいるのであれば、その方の手を借りるのも良いでしょう。飲み忘れも防げますし、なぜお薬を飲み忘れてしまうのか、なぜ飲みたがらないのかなどの情報をその方から得られます。

薬剤師が患者さんと良好なコミュニケーションを築く

アドヒアランスの向上を目指すためには、患者さんとホンネで話せる関係性を築くことが必要不可欠です。

相手のことを信用していなければ、アドバイスを聞いたり、悩みを打ち明けたりすることはありません。日ごろからしっかりとコミュニケーションをとり、お互いの顔の見える関係を築くようにしましょう

薬を処方する医師もコミュニケーションを大切にして、さまざまな方法で患者さんに治療の重要性を説明しますが、医師は多忙なもの。患者さんの薬の悩みまでをカバーすることは、なかなかできません。

そこで薬に関する問題は、薬の専門家である薬剤師が患者さんのかかえている悩みを聞き出して、アドヒアランスの向上につなげましょう

患者さんと良好なコミュニケーションを築く服薬指導

良好なコミュニケーションを取る方法
アドヒアランスを向上させるには、いかに患者さんと良好なコミュニケーションを築けるのかが大切です。しかし「どうすれば良いコミュニケーションを取れるの?」とお悩みの方も多いはず。

患者さんにとっても薬剤師にとっても良いコミュニケーションを取れるコツをいくつかご紹介します。

【例文あり】新人薬剤師必見!服薬指導時にはココを気をつけろ!薬歴を書くための5つのポイントとは!?SOAPだけじゃない…?

患者さんにスピード感を合わせる

急いでいる患者さんにゆっくり喋ったり、逆にゆっくり話したいと思っている患者さんにせかせか喋ってしまっては良いコミュニケーションは取れません。お互いのスピード感が合わないので、会話をすることにストレスを感じてしまいます。

できるだけ患者さんが話すスピードと同じになるようにこちらも話しましょう。これを「ペーシング」と呼びます。

また患者さんと同じペースで話しつつ、本当に伝えたい大事なところは少しだけペースを落としたり抑揚をつけたりすると重要な点を相手に覚えてもらいやすくなりますよ。

「自分のことを話している」と思わせる話し方をする

誰かと話すとき、「あ、これは自分に関係ある話だからしっかり聞いておかないと」と思ったことがありませんか?自分に関係ない話は耳をすーっと通り過ぎても、関係のある話だとしっかり聞かなくてはと思うはずです。

これは患者さんも同じ。「この薬剤師は私に関係のあることを話しているんだ」と思ってもらえれば患者さんはしっかり服薬指導にも耳を傾けてくれます。

相手が悩んでいること、気になっていることを掴み、それについて交えながら話すことで話をしっかり聞いてもらいやすくなりますよ。

急いでいる人には結論から伝える

「急いでるから早く薬をちょうだい!」
「服薬指導はいいから、薬だけください」

薬剤師なら一度や二度はこんなことを患者さんから言われた経験があるかと思います。こういうとき、どのように対応したらいいのか困りますよね。

そのようなときは絶対に伝えなければならないことだけを最初に伝えてしまいます。そこで患者さんが「どうして?」と食いついてきたら詳しく説明するチャンスですし、食いついてこなかったとしても最低限の情報は患者さんに提供することが可能です。

とはいえ「急いでいる」「薬だけちょうだい」系の患者さんはなかなか対応が難しいことも多いので、場数をこなしていくことも大切かもしれません。

待たされている時間は実際の時間の3倍長く感じることを意識する

待たせている側の人間と、待たされている側の人間とでは時間の流れ方が違います。待たされている側は実際の時間の3倍も長く時間を感じているのをご存知でしょうか。

実際は5分しかかかっていなくても、薬を待っている患者さんは15分に感じていることもあるのです。

つまり薬剤師があまり待たせていないと思っている患者さんでも、患者さん自身は「長いこと待たされた!」と思っている可能性もあるんですね。

そんな状況の中で薬剤師がゆっくり服薬指導を始めたらどうでしょう。「待たされた挙げ句長々と説明された」と患者さんは思ってしまいます。

こう思われてしまっては患者さんが薬剤師の話をしっかり聞ける状況はすでに崩れてしまっています。どんなに少ない時間でも患者さんに待ってもらっていることを意識して行動することが大切です。

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待っている側は実際の時間よりも長く待たされていると感じてしまうものです。「長いこと待たせている」という意識を常にもっておくようにしましょう。

「開いた質問」と「閉じた質問」をうまく活用する

開いた質問とは患者さんに何かについて詳しく話してもらう質問、閉じた質問は「はい」か「いいえ」だけで答えられる質問です。

患者さんの状態について詳しく知りたいときに「○○の副作用は出ていませんか?」と聞くと「はい」か「いいえ」の答えしかわかりません。しかもわかるのは○○の副作用についての有無だけです。

しかし「お薬を飲んでいて調子はどうですか?」と聞けば、「実は○○が気になっていて…」と新たな情報を引き出すことができます。

「開いた質問」と「閉じた質問」は聞き出したい情報を患者さんに話してもらうのにも使えますし、急いでいる方に服薬指導をするときにも使える手法です。

急いでいる方には簡単に答えられる閉じた質問をすると、スピーディーに対応できます。

まとめ

アドヒアランスを向上するには薬剤師がどう関与するかが大切
アドヒアランスの重要性について、解説していきました。

近年では高血圧や高脂血症、糖尿病などの生活習慣病の増加を背景に、お薬を服用する機会は増えつつあります。

しかしながら、生活習慣病の初診患者さんの治療継続率は低いことも知られており、アドヒアランスの重要性が叫ばれています。

薬物治療がますます複雑化している今、薬剤師の役割はますます大きくなりつつあると言われています。

この記事を参考にして、患者さんにより良い治療を受けてもらえるように、日々の業務に取り組みましょう。

薬局薬剤師

アドヒアランスは服薬指導の方法を少し意識するだけでも大きく変わります。今日からでもできるので、ぜひ挑戦してみてくださいね。