「薬剤師の免許を持っているから」という理由だけで、本当にやりたいことを諦めてはいませんか?
薬剤師とまったく関係ない仕事へキャリアチェンジする選択肢があることも忘れてはいけません。
薬剤師の転職についてネットで検索しても「病院→調剤薬局」のような例ばかりです。しかし「薬剤師→新しいキャリア」への転職があってもいいはず。
今後の働き方について悩んでいる薬剤師の方に向けて、ここでは免許にとらわれない働き方や、周りからキャリアチェンジを止められたときの対応方法までご紹介しています。
実際に薬剤師として働くことを辞めた筆者の体験談も載せていますので、ぜひ参考にご覧ください。
薬局薬剤師
この記事の目次
薬剤師免許にとらわれない働き方
薬剤師免許を手にした方のほとんどが薬剤師として働いています。
薬剤師がになるために資格を取得したのだから、この流れ自体なんら不思議なものではありません。
しかし資格があるからといって、薬剤師として働き続ける必要はないのです。
薬剤師になった方の中には「昔から薬剤師に憧れていてなった方」と、「なんとなく薬学部に行って免許を取った方」とがいるかと思います。この記事を書いている筆者は後者の“なんとなく派”です。
ふらりと薬剤師になった方の中には「このまま薬剤師として働き続ける人生でいいの?」と悩まれている方もいるでしょう。筆者の私も同じことに悩み、そして薬剤師として働くことを辞めました。
調剤薬局、病院、ドラッグストア、企業だけが薬剤師の職場ではない
まずは以下の表を見てみてください。
薬剤師数(人) | 構成割合(%) | |
---|---|---|
薬剤師の総数 | 311,289 | 100 |
薬局の従事者 | 180,415 | 58.0 |
医療施設の従事者 | 59,956 | 19.3 |
介護保険施設の従事者 | 832 | 0.3 |
大学の従事者 | 5,263 | 1.7 |
医薬品関係企業の従事者 | 41,303 | 13.3 |
衛生行政機関または保健衛生施設の従事者 | 6,661 | 2.1 |
その他 | 16,856 | 5.4 |
調剤薬局とドラッグストア、病院の3か所に薬剤師の77.3%が集中しています。次いで医薬品関係企業が13.3%です。その他の業務に従事する方はわずか2.1%しかいません。
薬剤師免許を取得した後に薬剤師として働かないことの方が珍しいのです。
この数字を見ると、薬剤師の就職先は調剤薬局かドラッグストア、病院、企業の4か所しか選択肢がないの??と思ってしまいますよね。就職先の選択肢の狭さが、そのまま人生の選択肢を狭めているような気さえします。
とはいえ100人いたら約5人は免許を持ちながら、薬剤師として働いてません。これを多いと見るか少ないと見るかは人それぞれです。
ただこの数字から薬剤師以外の働き方もあることを覚えておいてほしいと思います。
詳しく【徹底解説】派遣薬剤師の転職でおすすめ派遣会社・時給相場・メリット・デメリットなどまとめました!
一般に「薬剤師以外の仕事」とされるもの
どこからを薬剤師以外の仕事と定義するかは難しいところです。調剤もせず、医薬品販売に関わることがない職業を「薬剤師以外の仕事」とするのなら、以下の仕事の名前がよく挙がります。
- 製薬企業(研究・開発・MRなど)
- 衛生行政機関や保健衛生施設
- 大学
- 化粧品メーカー
- 健康食品メーカー
これらが薬剤師以外の仕事と言われるのは、薬剤師免許がなくても就ける仕事だからでしょう。
病院や調剤薬局と比べると従事者が少ないことも関係しています。しかし上記の仕事からは、どこかまだ薬剤師らしさが感じられるような気がするのは気のせいでしょうか。
そこで今回は思い切って、「薬剤師とはまったく関係のない仕事」にフォーカスして紹介していきます。
上で挙げたような仕事については、以下の記事で詳しく解説していますので、こちらを参考にしてみてください。
薬局や病院以外で働く薬剤師の職種や仕事内容・総まとめ!企業(製薬会社・医薬品卸など)・研究・開発・臨床・治験・DIなど…本当にたくさんの仕事があります。
キャリアチェンジとキャリアアップの違い
キャリアチェンジとキャリアアップ、言葉が似ているものの、まったく別の意味をもちます。
キャリアチェンジは、簡単に言うと仕事を変えることです。調剤薬局から病院、病院から企業のように、これまでとはまったく違った職種に変わることを指します。一方でキャリアアップは、同じ職場にいながらもっと上の立場へとのぼっていくことです。薬剤師 転職サイトでも特集されます。
キャリアチェンジもキャリアアップも人生の中で大事な分岐点となりますが、とくにキャリアチェンジは今までとガラリと変わった毎日を送ることになります。
薬剤師以外の仕事へ!ユニークなキャリアチェンジ事例
製薬企業や化粧品メーカーなど以外で、思いっきり薬剤師からかけ離れた仕事に興味はありませんか?
「薬剤師免許を取ったけど、薬剤師として働くのに向いていないみたい…」
「実際に薬剤師として働き始めたら、本当にやりたかったことはもっと違うことだと思い始めた」
薬剤師らしく働くことに悩みを持っている方のために、ユニークな働き方をされている方を集めてみました。
「こういう仕事をしている人もいるんだね!」とぜひ参考にしてください。
腸活サロン経営
参考:パーソナル腸活ROOT ※現在、サロンは閉店しています
薬剤師免許を持ちながら腸活サロンを経営している、たからさん。
腸内環境の悪さと痩せづらさに着目し、キレイになりたい方を日々応援されています。サロンを経営しながら、腸活セミナーを開いたりYouTubeで動画配信をしたりと、多岐にわたって活動されている方です。
「健康を守る」視点を持っていることはどの薬剤師も同じかもしれませんが、まったく違う角度から健康にアプローチしているところがおもしろいですね。
居酒屋
これは私がドラッグストアで働いていたときの先輩薬剤師(Sさん 女性)の話です。当時28歳くらいだったSさんは、バリバリ薬剤師として楽しく働いているように見えました。
ところが一緒に飲みに行ったとき、このようなことをSさんから言われたのです。
「本当はね~飲食店で働きたいんだ。居酒屋とか楽しいだろうな。仕事を辞めて飲食店の経営をしようか迷っている」
飲食店とはまた、薬剤師とかけ離れた仕事だなとぼんやり考えていたら、「今より給料が下がっちゃうかもしれないけど、それでもいい」と続けるSさん。
それから1~2年後、Sさんは本当に仕事を辞めて飲食店のアルバイトとして働きはじめていました。お金よりも、本当にやりたいことを優先するSさんは、薬剤師を辞めてからよりイキイキと働いています。
メディアの運営
こちらも実際に私がお世話になっていた薬剤師の話です。仕事の打ち合わせでとあるメディアの編集者さんとお話をしていたところ、「実は私も薬剤師なんです」と言われました。
掲載する記事を作成したり、編集をしたりする仕事なので、メディアの運営に薬剤師の資格はもちろん必要ありません。
当たり前のように多くの薬剤師が病院や調剤薬局で働く中、このようにインターネットを活用した働き方もあるのだと驚きました。
フリーライター
最後に筆者のキャリアチェンジ事例をご紹介します。もともとドラッグストアで働いていたのですが、冒頭でも触れたように筆者は「なんとなく薬学部に入った」人間です。
そのためか薬剤師として働き続けているうちに、「このまま薬剤師の仕事を続けていていいのだろうか」と考え始めるようになりました。
そこで思い切って薬剤師→フリーライターへ転身したのです。もしもうまくいかなくても1年くらいはどうにか暮らせるくらいの貯金を貯めておいたので、とりあえず挑戦してみようという気持ちで始めました。
薬剤師を辞めたと伝えるとほとんどの方にびっくりした顔をされますが、ドラッグストアで働いていたときよりも楽しく毎日を過ごせています。
薬局薬剤師
薬剤師(薬学部卒業生)の就職先公開!「薬剤師以外の人気就職先」や、資格が前向きに活かせる職業を考えてみた!今後伸びそうな職種は…?新しい働き方も考えてみました
“薬剤師を辞める”と言ったときに周りから言われること
「やりたい仕事をやればいい」と、いくら自分で思っていたとしても周りの環境がそれを許さないことも少なくありません。「薬剤師を辞める」と意思表示したとき、多くの方がある悩みに直面します。
薬剤師を辞めるなんてもったいない
筆者も耳にタコができるほど言われました。
「せっかく薬剤師になったのに何で辞めるの?」
「辞めるなんてもったいない」
とにかく「薬剤師を辞めるのはもったいない」といった意味の言葉を多くの方から言われます。6年も大学に通って、安くない学費を払い必死に勉強して取った資格を使わないとなると、もったいないと思われてしまうのかもしれません。
しかしいくらもったいないと言われても、薬剤師を辞めて働きたいと思っている方からしたら、「やりたくない仕事を続けて人生をムダにする方がもったいない」のです。
周りの反対を説得する方法
薬剤師を辞めると言ったとき、周りの方が100%賛成してくれるとは限りません。むしろ「もったいない」と言って止めてこようとする方の方が多いものです。
中には親から反対されてキャリアチェンジできない方もいるでしょう。このようなとき、どうやって周りを説得したらよいのか悩みますよね。
薬局薬剤師
薬剤師の免許があるからこそ挑戦できる
薬剤師を辞めることに微妙な顔をされたら、「薬剤師だからこそ、他の働き方にチャレンジできるんだよ」と説明しましょう。免許さえあれば、万が一新しい仕事でうまくいかなくても、すぐ仕事にありつけます。
薬剤師のパートをして生活費を維持することだって可能です。もしも免許がなければこうはいきませんよね。資格があるからこそ、チャレンジしやすいことをアピールしてみましょう。
人生をムダにするくらいなら免許をムダにするスタンスで
やりたくない仕事を続けて一生働き続けるのと、本当にやりたい仕事をやるのとでは、間違いなく後者の方が充実した人生を送れます。
「自分の人生は自分が納得できるように生きたい」という熱意を持っておくことが大切です。
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どうしても辞められないときは退職代行
何を言っても仕事を辞められないとき、最終手段として退職代行を使うことも視野に入れておきましょう。退職代行を利用することについては賛否両論ありますが、どうしようもないときは有効な手段です。
薬剤師も退職代行を使って大丈夫!引き止めで退職できない方・トラブルが怖い方こそオススメです。業者・法律についても調べました!
薬剤師がキャリアチェンジするときの注意点
とくに薬剤師以外の職へキャリアチェンジする際は、注意しないといけないことがいくつかあります。私自身がドラッグストアの薬剤師からフリーライターへ実際に転身した際に感じたことをご紹介します。
現場から遠ざかると知識は倍速で抜けていく
1か月や2か月ならまだ良いのですが、数年単位で薬剤師の仕事から遠ざかると、間違いなく知識がどんどん抜けていきます。あの頃は当たり前に思い出せていた薬の成分が出てこなかったり、一般名を忘れてしまったりととにかく知識の抜けを実感することが多いです。
薬剤師として復帰する予定がある方、薬剤師免許を取ったからには薬の専門家でい続けたい方は、キャリアチェンジ後も勉強の手を止めないようにしましょう。あっという間にブランクができてしまいます。
私は自分で勉強するのにも限界があるので、薬剤師のタメになる情報を発信しているTwitterアカウントをフォローして情報を追うことにしています。
個人事業主になるならお金の流れに注意
とても現実的な話をすると、会社員から個人事業主になると住民税も年金も国民健康保険料もすべて自分で払わないといけません。
私がフリーライター1本で生活するようになったときは、これらの支払いだけで月に7万円くらいありました。(前年度の年収によって金額は変わります)
自分で支払う必要があることすら知りませんでしたし、こんなにも負担が大きいことも知りませんでした。
個人事業主になってすぐに稼げるようになる見込みがあるなら大丈夫だと思いますが、そうでない場合はある程度の貯金がないと生活が厳しくなります。
1年くらいは無職でも生きてけるくらいの貯金があると安心
私が薬剤師を辞めたとき、何があっても1年はお金がたりなくなることはないだろうというくらいの貯金を作っておきました。
1年、薬剤師以外の仕事をやって生活が厳しかったらまた薬剤師に戻ろうと思っていたのです。これくらいの貯金があると、とにかく精神的に安定します。
私の場合は薬剤師からフリーランスになったということもあり「明日の仕事があるかどかわからない」くらいの状況でした。
「このままフリーランスでいけるのだろうか」という心配は常にありましたが、貯金がある程度あったおかげでお金の心配は一切せずに過ごせました。もしここにお金の心配も加わっていたらと考えると恐ろしいです。
収入が約束されている仕事に転身するならまだよいのですが、私のようにフリーランスになる場合は貯金がないとだいぶつらいかと思います。
薬剤師のキャリアチェンジは新たな知識や経験との出会い
最後に新しいキャリアを積むメリットを1つお伝えします。それは薬剤師として働いていたら絶対にできないような経験や知識を得られることです。
メディアの運営方法、プログラミング、人を笑顔にする方法など挙げればキリがありません。
フリーライターに転身した私は、文章を使った表現方法の深さ、フリーランスとして生活している方とのつながりを得られました。
まとめ
薬剤師なら調剤薬局や病院、ドラッグストア、企業で働く方がほとんどです。しかし薬剤師免許を取ったからといって、絶対に薬剤師として働かなくてはいけない、という決まりはありません。
薬剤師免許がるからこそ、さまざまなことにチャレンジしやすいのが薬剤師のメリットです。
敷かれたレールからあえて少しズレてみることで、これまで見えてこなかったものが目の前いっぱに広がる楽しさを味わえることかと思います。
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