「医療刑務所で薬剤師はどんな仕事をするの?」
「どうすれば医療刑務所で働けるの?」
調剤薬局や病院で働く薬剤師が多いこともあり、医療刑務所で働いている薬剤師の話を身近で聞くことはあまりありません。そのため、医療刑務所の仕事内容や働き方などについて疑問に思っている方も多いでしょう。
そこで今回は、医療刑務所で薬剤師がどのような仕事を任されるのか、どうすれば働くことができるのかなどをご紹介します。
薬局薬剤師
この記事の目次
医療刑務所に薬剤師が必要な理由、安全性や待遇は?
刑務所は国の施設なので、基本的には刑務所に勤務する薬剤師は公務員です。
薬剤師の仕事は公務員自体が少ない現状がありますが、そんな中で「刑務所 薬剤師」や「医療刑務所 薬剤師」も候補の1つであることを覚えておくと、転職先の選択肢が増えます。
なぜ医療刑務所で薬剤師が必要なのか
刑務所には私たちが思っているよりも多くの高齢者がいます。そのため健康を管理するためにも医療従事者の手が必要になるのです。
刑務所によっては囚人の平均年齢が50歳を超えています。この年齢になると高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病をもっている方も少なくありません。神戸刑務所では2018年時点で65歳以上の方が全体の17%もいたそうです。
参考:刑事拘禁制度改革実現本部ニュース
刑務所に入っているからと行って健康管理をないがしろにすることはできないため、医師や看護師、薬剤師などの医療従事者が勤務しています。
医療刑務所には刑務所では対応できないような疾患をもった方が入所してくるため、とくに医療施設や従事者の数が充実していることが特徴です。
八王子医療刑務所では2017年時点での受刑者の平均年齢は57歳だと公表されており、医師11名と看護師69名が治療にあたっています。
参考:年間50名が所内で死亡。八王子医療刑務所「遺骨」の行方
薬局薬剤師
医療刑務所以外にも似たような働き先はある?
刑務所の薬剤師の勤め先は「医療刑務所」が代表的ですが、他にも刑務所関連の各施設や少年施設においても薬剤師の仕事があります。
もし医療刑務所で働きたい時に求人広告が見つからなければ、「刑務所全般」まで対象を広げて求人を探してみてください。
医療刑務所の安全性は?
刑務所には犯罪を犯した受刑者が収監されているため、イメージ的には「危険性」をどうしても意識してしまうもの。
しかし実際のところは、厳重なセキュリティに囲まれた施設であり、さらに警護官まで付いているので安全と思ってもらって問題ありません。
薬局薬剤師
本当に待遇はいいの?
薬剤師の刑務所求人は待遇がよいと言われています。
基本的に求人の内容次第ですが、手厚い福利厚生や週休2日といった休日ペースなど、魅力的な求人情報があるのは確かです。公務員なのでカレンダー通りに休めるのもメリットですね。
しかし応募要項で、「経験のある人」となっている求人も多いので、経験を加味するとやや待遇に物足りなさがあるかもしれません。
他の勤め先の待遇をぶっちぎるほど魅力かといわれると、個々による判断基準などによってケースバイケースかなといった印象です。
医療刑務所で働く薬剤師の仕事内容や必要なスキル
医療刑務所と聞くと、特別な仕事があるように感じるかもしれません。しかし、仕事内容は一般的な薬剤師とほとんど同じです。
主な仕事内容は?
刑務所における薬剤師の仕事内容は、基本的に一般的な薬剤業務と大きくは変わりません。
当然ながら、医療刑務所のように医師や看護師など、薬剤師以外の医療従事者も在籍している職場もあるため、どちらかというと「調剤薬局よりは病院に近い」かもしれません。
他には、やはり刑務所という独特の雰囲気に強烈なインパクトがあり、厳重なセキュリティの施設内を行き来すること自体が日常生活ではありえない体験となります。
薬局薬剤師
必要なスキルや資格は?
基本的に医療刑務所で薬剤師の仕事をするには「薬剤師資格」が必須であり、あとは各施設の求人内容に記載されている通りです。
ネット上では、「国家Ⅰ種・国家Ⅱ種」が必要という情報も散見されますが、これは法的に絶対に必須となる条件というわけではなさそうです。
「法務省(矯正局)」に問い合わせたところ「簡単な作文の試験があったり、面接に比重を置いているところもあるかと思います」という回答でした。
そのため医療刑務所で働くために必要なスキルや資格は求人に記載されている通りと考えておいたほうがよいでしょう。
また、求人に試験有りと記載されている場合にその概要を知りたいなら、各施設へ直接電話で問い合わせをしても構わないようなので、遠慮なく採用に向けて疑問を払拭してみてくださいね。
薬剤師が医療刑務所で働くメリット・デメリット
医療刑務所で働くという経験は、一生を通しても貴重な経験です。しかしさまざまな経験ができる一方で、デメリットもあります。
医療刑務所で働くメリットとデメリットを見ていきましょう。
医療刑務所で働くメリット
- 給料が安定している
- 唯一の経験ができる
- 残業が少ない
刑務所という日常ではなかなか経験できない環境で働けるのもメリットです。ほとんど受刑者と会うことはないので、安全性でも問題ありません。
残業もほとんどなく休みもカレンダー通り貰えるので、プライベートの時間もしっかり確保できます。
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医療刑務所で働くデメリット
- 患者さんと直接触れ合う機会が少ない
- 転勤や異動がある
- 医療刑務所は全国に4つしかない
受刑者の方と直接会わないということはメリットでもありデメリットでもあります。受刑者と会えないということはつまり、服薬指導ができないということ。
処方せんに疑義がないかを確認し、調剤するのが主な仕事となります。そのため服薬指導を通して患者さんの病態をチェックし、最適な治療薬を提案するといった業務はできません。
ただし人と関わらない仕事を求めている方からすれば、刑務所の仕事は向いていると思います。メリットとなるかデメリットとなるかはその人次第です。
また公務員は異動が多いので、同じ職場で長く働きたい方にも向かないでしょう。医療刑務所が全国に4つしかないことから、刑務所で働きたいと思っても働けないこともあります。
薬局薬剤師
日本の医療刑務所は4つしかない
医療刑務所というのは医療施設が整えられた刑務所なので、医療従事者の勤め先としては刑務所関連の中でもっともメジャーです。
今のところ、医療刑務所は日本全国に次の4つしかありません。
- 八王子医療刑務所
- 岡崎医療刑務所
- 大阪医療刑務所
- 北九州医療刑務所
八王子医療刑務所の求人内容
- スキルや経験:不問
- 応募資格:薬剤師
- 給与:244,060円~309,955円
- 手当:通勤手当上限55,000円など
- 休暇:土日祝、年間120日
「総務部」・「処遇部」・「医療部」という組織構図になっており、薬剤師は医療部で勤務します。
「転職ナビ」に掲載されている求人情報では、月給が約300,000万円、福利厚生も通勤手当や住居手当など充実しており、土日祝が休みで年間は120日あります。
公務員ならではの待遇が用意されているので、残業が少なく休みもしっかり取れる職場を希望しているなら最適ですね。
岡崎医療刑務所の求人内容
- スキルや資格:1年以上の調剤業務経験
- 応募資格:薬剤師
- 給与:216,400円~391,300円
- 手当:通勤手当上限55,000円など
- 休暇:土日祝、年間120日
「転職ナビ」では、給与が200,000円~400,000円、通勤手当や不要手当など福利厚生が充実しており、こちらも休暇が土日祝の年間120日です。
大阪医療刑務所の求人内容
- スキルや資格:経験者
- 応募資格:薬剤師
- 給与:273,900円~300,520円
- 手当:通勤手当上限55,000円など
- 休暇:土日祝、年間120日
「転職ナビ」では、給与が273,900円~300,520円、福利厚生は交通手当や地域手当など充実、休みは土日祝の年間120日です。
北九州医療刑務所の求人内容
- スキルや資格:薬剤師としての経験
- 応募資格:薬剤師
- 給与:210,200円~331,200円
- 手当:通勤手当上限55,000円など
- 休暇:土日、年間120日
「転職ナビ」では、給与が210,200円~331,200円、通勤手当や世帯入居住宅などの福利厚生、休暇は土日の年間120日という求人内容があります。
毎回の公募において求人内容には差が出てきますが、どの医療刑務所も待遇は同じような内容です。
給与は薬剤師の平均と似たような水準ですが、そこに福利厚生や得られる経験を加味して検討すると、刑務所ならではの魅力を見出しやすくなります。
また医療刑務所で働くためには、「求人を見つけられるかどうか?」と「採用枠の狭さ」が難関となりやすいので、定期的に求人をチェックしながらいつでも応募できる準備をしておくことが大事です。
薬剤師の求人は医療刑務所じゃなくても見つかる
医療刑務所でしか薬剤師の求人がないと思ってしまいがちですが、実は普通の刑務所でも薬剤師の募集はあります。
下の求人はハローワークに掲載されていたものです。
参考:山口刑務所(ID:35010-00627901)の求人
山口刑務所は医療刑務所ではなく、普通の刑務所です。刑務所にも囚人の健康を守るために医師が配置されています。そのため調剤業務が発生するのです。こちらの求人にも「薬の調剤業務」と書かれていますね。
医療刑務所は全国に4か所しかありませんが、刑務所はあちこちに多くの数があります。刑務所で働いてみたいと考えている薬剤師は、医療刑務所だけではなく刑務所も視野に入れてみると良いでしょう。
刑務所関連の求人を見つけやすい薬剤師転職サイトはある?
刑務所関連の薬剤師求人も、やはり転職サイトが便利そうです。
しかし、2020年1月時点において「マイナビ薬剤師・0件」・「薬キャリ・0件」・「ファーマキャリア・0件」という結果になっており、そもそも募集人数が少ないというのが大きな要因になっていそうです。
上記で医療刑務所の薬剤師求人を紹介しましたが、もしかするとハローワークの方が刑務所系の薬剤師求人は見つけやすいかもしれません。
実際に「薬剤師 刑務所 求人」と検索すると転職サイトではなくハローワークの求人がいくつか引っかかります。
こういう時こそ転職エージェントに相談!
転職サイトの公開求人で刑務所案件が見つからない場合、転職エージェントに頼ってみましょう。
転職サイトでも刑務所の求人はとても少ないですが、キャリアアドバイザーに相談することで刑務所の薬剤師求人の現状や需要についても情報を把握できるため、将来の転職に向けても参考になります。
思い通りに求人が見つからないことも大いにあり得ますが、それでも公務員として高待遇な福利厚生や残業の少ない日々を想像すると、本気で刑務所に努めてみたいという方にとっては探してみる価値は大いにあります。
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