「名義貸し」って知っていますか?資格者の名前だけを借りて、あたかもその資格者が在籍して仕事をしているかのように見せる常套手段として使われるものです。この名義貸しが実は薬剤師の間でも行われています。
日常的に薬剤師が名義貸しに関わることはほぼありませんが、裏では名義を貸してもらおうと苦闘する企業がうごめいているのです。今回はこの薬剤師の名義貸しについて掘り下げて見ていくことにしましょう。
もちろん名義貸しは違法であるため、当記事は名義貸しを推奨するものではありません。
薬局薬剤師
薬剤師の名義貸しの実態
名義貸しは、他人事のようで意外と身近にあるものです。薬剤師の平均時給が2,000円前後であることから、薬剤師を1人雇ってフルタイム出勤させるだけで1ヶ月30万円ほどもかかってしまいます。
薬剤師の名前が必要というだけで、毎月30万円も払っていられないと考える企業が名義貸しによって薬剤師の名前だけ借りてしまおうとするのです。
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薬剤師の名義貸しとは?
薬剤師の名義貸しが行われるパターンとしては、薬剤師の常駐が必要ないけれども業務上薬剤師の名前が必要となる場合に多く行われる傾向にあります。代表的なものに医薬品卸の管理薬剤師が挙げられます。
医薬品卸で働く場合、薬剤師が直接患者さんにお薬の説明をすることはありません。しかし業務上必ず薬剤師が必要です。そのため薬剤師の名前を借りて登録だけしておき、必要なときに年に数回だけ出社してもらうのです。
薬剤師が毎日出勤する必要はないけど、企業が運営していくための手続き上で薬剤師の名前が必要だから、名前だけ貸してくれないかな?というのが薬剤師の名義貸しです。
薬局薬剤師
薬剤師 転職サイトでも名義貸しについては話題になることがあります。
名義貸しの依頼相場
公開できる情報でもないため、調べても相場データは出てきません。
聞き込み調査・実際に名義貸しの打診が来た内容から察するに、相場は1ヶ月で5万円前後のようです。実際に名義貸しをしたことのある方の話を聞いていると、月3万円で貸していたという話もありました。
毎月何もしなくても5万円もらえると考えるとオイシイ話のように聞こえますね。ただし名義貸しは後でも説明しますが違法ですので、頼まれても断りましょう。
薬剤師以外の名義貸しだと相場はいくら?
名義貸しが行われているのは薬剤師だけではありません。さまざまな資格で名義貸しが存在しています。
相場は次のとおりです。
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- 医師:3~5万円
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- 看護師:3~5万円
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- 宅建:3~5万円
- 一級建築士:10万円
実際にあった名義貸しの依頼
薬剤師の名義貸しについて記事を書いている筆者も、実は名義貸しの依頼を受けたことがあります。まさか自分が名義貸しの渦中に巻き込まれるなんて思ってもいませんでしたし、実際に依頼されるまで薬剤師の名義貸しがあること自体知りませんでした。
どのように名義貸しを頼まれたのか、私の体験をご紹介します。
名義貸しの事例
私はクラウドソーシングサイトに登録してお仕事をしている、ちょっと変わった働き方をしている薬剤師です。ある日、いつも使っているクラウドソーシングサイトからお仕事を依頼したいと以下のメッセージが届きました。
はじめまして。○○と申します。
貴殿が薬剤師免許をお持ちということでご相談の連絡をさせていただきました。当社では化粧品の輸入販売を手がけようとしています。
その際に総括製造販売責任者として申請時に薬剤師さんを置く必要があるのですが、総括製造販売責任者として名前をお借りできる薬剤師さんを探しています。
総括製造販売責任者としてお名前を1年間借りること、あと万が一監査等あれば同席して頂く必要があるのですが、そのような依頼というのは可能なのでしょうか?
送られてきたメッセージほとんどそのままです。「総括製造販売責任者として名前をお借りできる薬剤師さんを探しています」とバッチリ書かれていますね。名義貸しです。
このメッセージに対して監査に同席する場合の交通費は出るのか、報酬としてはいくらを想定しているのかを聞いてみました。返事は以下の通りです。
報酬については、年1回程度何かしら対応して頂く費用(交通費別途)込みで5万円程度/年ではいかがでしょうか?
名義貸し+何が発生するか分からない都度対応込みで、5万円というお答えでした。
最終的にはもちろん名義貸しをお断りしたのですが、安い金額で名前だけ借りようとする企業があることに愕然としました。
ちなみにこのメッセージを送ってきた方、別の薬剤師にも声をかけていたようで、そちらの薬剤師と名義貸しの契約を交わしたそうです。名義貸しする薬剤師を目の当たりにした瞬間でもありました。
名義貸しが化粧品関連の企業からよく必要とされる理由とは?
名義貸しをしてくれる薬剤師を探している企業は、化粧品会社で多く見られます。
なぜなのか?
化粧品の製造販売業をするためには総括製造販売責任者を置かなければなりません。この総括製造販売責任者になれる条件は以下のように決められています。
一 薬剤師
二 旧制中学若しくは高校又はこれと同等以上の学校で、薬学又は化学に関する専門の課程を修了した者
三 旧制中学若しくは高校又はこれと同等以上の学校で、薬学又は化学に関する科目を修得した後、化粧品の品質管理又は製造販売後安全管理に関する業務に三年以上従事した者
四 厚生労働大臣が前三号に掲げる者と同等以上の知識経験を有すると認めた者
薬剤師でなくてもなれるのですが、薬剤師以外の方が総括製造販売責任者になるにはいくつかの条件があるため薬剤師を総括製造販売責任者としておくことが多いのです。
化粧品メーカーの悩み
薬剤師の名義貸しについて悩んでいる化粧品関連企業側の声を見つけたので1つご紹介いたします。
化粧品の輸入をしたいのですが、薬事法の認可を取るため薬剤師さんの名義貸しが必要です。名義貸しをしてくれる薬剤師さんを探していますが、なかなか探し切れません。良い方法を教えて下さい。行政書士さんに確認すると管理薬剤師さんでは都道府県に登録済みなので駄目だそうです。
資格保有者で使っていない方、パート、アルバイトの方を探したいのですがハローワークや求人広告などで求人を出すわけにもいかず良いお知恵を貸して下さい。知人のコネクションにも当たりましたが、なかなか探し出すのは難しい次第です。よろしくお願いします。
引用:知恵袋
どうやらこの方は薬剤師の名義貸しが違法なのを知らない様子です。このように企業側が違法だと気が付かずに薬剤師を探しているケースもあります。
【結論】薬剤師の名義貸しは「違法」です!
冒頭でも言いましたが、薬剤師の名義貸しは立派な法律違反、違法です。もちろん薬剤師だけにかかわらず医師や看護師、弁護士などの名義貸しも違法となります。
薬機法によって薬剤師の名義貸しは禁じられている
名義貸しが違法になる旨は、薬機法にしっかりと記載されています。
はっきりと、誰が見てもわかるように名義貸しは禁止だと書いてありますね。月に何万円かお金が入るからといって、決して名義貸しをしてはいけません。のちのち後悔するのは自分です。
おすすめ薬剤師転職サイトおすすめの16社を徹底比較【最新ランキング】
名義貸しをした薬剤師にはどんな影響がある?
名義貸しが違法であること以外にも、薬剤師が名義貸しをするデメリットがあります。名義を貸すということは、実際に働いているかどうかはさておき、名義を貸した薬剤師がそこの企業で働いていることになります。
もし名義貸しをした薬剤師が管理薬剤師なら薬機法違反です。薬機法にも書かれている通り、管理薬剤師は兼業ができません。
ほとんどの病院や調剤薬局が副業・兼業禁止であることから、名義貸しをすることで今勤めている会社のルールに反してしまう危険性もありますね。下手したら仕事を解雇されてしまうこともあるでしょう。
名義貸しの断り方
もしもあなたが「月に5万円あげるので名義を貸してほしい」と言われたらどうしますか?お金に目がくらんでしまう気持ちもわからなくはないですが、キッパリと断らなければいけません。
断るときは正直に「名義貸しは違法だからできない」と断るのがスマートでしょう。名義を貸して欲しいといてくる相手が、もしかしたら名義貸しの違法性を知らない可能性もあります。
ですので、違法であることを伝えた上で断ることが1番です。
薬局薬剤師
行政処分・欠格事由の対象となり得る業務を職場で強制されていませんか?
薬剤師法違反の関与、強制に要注意
現在の職場で、「無資格調剤が行われている」「調剤報酬の水増し報酬をしている」「違法販売を行っている」ということはありませんか?
これらが発覚してしまうと、薬局が業務停止処分を受けるだけでなく、加担した薬剤師に対してもペナルティが科せられます。
また、忙しすぎるブラック薬局に勤めている場合にも、注意が必要です。違法行為が無くても、調剤過誤が原因で行政処分が科せられることもあります。
絶対に、気付いた時点で改善を促すか、職場から逃げるべきです…!
少しでもマズイと思ったら、転職エージェントの担当者に相談を!
これらの心当たりがある場合には、少しでも早く他の職場への転職を考えましょう。
「これってどうなんだろう?」というグレーな事例についても、転職エージェントに相談することで判断してもらうことができます。
薬剤師免許を失ってしまっては、元も子もありません。何か問題が起こる前に、転職エージェントに相談しましょう。
まずはこの3社に登録すれば、情報量は十分です!
登録後は、自分の働き方や悩みを理解してくれて、必要な情報を与えてくれるエージェント・担当者を探しましょう^^
※無資格者の方はご登録いただけません悪質な事業者の場合、退職代行サービスを検討してでも職場を変えるべき
当サイト経由でも、退職代行を使って転職活動を進める方は増えてきています。
幸い、薬剤師に代表される医療系の職種は次の仕事も見つかりやすいので、転職サイトに登録して求人を探しつつ、「退職代行で一刻も早く悪質な職場から撤退する」というやり方はある意味賢いやり方。
▼EXITという退職代行会社は業界大手で、早くからこのサービスを提供しており実績も豊富です。LINEでも相談可能。
薬剤師も退職代行を使って大丈夫!引き止めで退職できない方・トラブルが怖い方こそオススメです。業者・法律についても調べました!
まとめ
目先の報酬に釣られて名義貸しをしてしまう薬剤師が残念ながらいます。法律違反であることはもちろん、名義を貸した相手に何かあった場合、自分が責任を取らされる危険性も否定できません。
私のようにクラウドソーシング経由で名義貸しを頼まれたり、友人知人から頼まれたりするケースがあります。6年間も苦労して大学に通い、国家試験に合格してやっと取得した薬剤師の資格を安々と誰かに貸してしまわないようにしましょう。
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