薬剤師が働く職場といえば、調剤薬局や病院、ドラッグストアが定番です。しかし「ほかの場所でも働いてみたい」と思っている方もいるのではないでしょうか。
実は薬剤師が働ける職場は、調剤薬局や病院以外にもたくさんあるものです。
どのような職場があるのか、ここでは12個の職場についてご紹介します。
「調剤薬局や病院以外でも働いてみたい!」という方はぜひ参考にしてみてくださいね。
薬局薬剤師
この記事の目次
薬剤師が一般的に働く職場とは
まずは薬剤師が一般的に働く職場について見ていきましょう。
薬剤師の多くは調剤薬局・病院で働く
次の表は厚生労働省が発表しているデータで、2016年に行われた薬剤師調査の結果です。
業種 | 人数(人) | 割合(%) |
---|---|---|
薬局の従事者 | 180,415 | 58.0 |
医療施設(病院・診療所)の従事者 | 59,956 | 19.3 |
介護保険施設の従事者 | 832 | 0.3 |
大学の従事者 | 5,263 | 1.7 |
医薬品関係企業の従事者 | 41,303 | 13.3 |
衛生行政機関又は保健衛生施設の従事者 | 6,661 | 2.1 |
その他の者 | 16,856 | 5.4 |
総数 | 311,289 | 100.0 |
薬剤師311,289人中の58.0%は薬局、19.3%は医療施設(病院、診療所)で働いていることがわかります。
これらは実に、全体の77%を上回る数であり、薬剤師4人に3人は薬局か病院で働いているということをあらわしています。
一方で、職に就いていない方の3.3%を除く2.1%の方は、これら以外の職場で働いているのです。
薬局薬剤師
薬局・病院が人気の理由①│パートや派遣など働き方が選べる
さまざまな職場で働く薬剤師についてご説明する前に、なぜ薬局や病院の人気が高いのかご説明します。
薬局や病院が人気となる理由の一つとして、働き方を自由に選べるということがあります。
企業や行政機関では、出産や育児の際に時短勤務を取得することは可能ですが、パートや派遣と言った働き方を選択することがなかなかできません。
子供が一定の年齢になればフルタイムで働かなくてはならず、産休明けのタイミングで退職を決意する方もいるでしょう。
しかし薬局や病院ではライフスタイルに合わせて、さまざまな働き方を選択できるので、女性比率が高い薬剤師の業界においても人気が高いのです。
薬局薬剤師
薬局・病院が人気の理由②│地方でも働ける
薬局と病院が人気なもう一つの理由のとして、地域を選ばずに働けるということがあります。
企業の多くは都心や地方中核都市など、一部の地域に集中していることが多く、働くためには都心近郊などのエリアに住まなくてはなりません
しかし医療の需要は地域を選ばないため、薬局や病院であれば地域を問わず職場が見つかります。
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薬局や病院以外のさまざまな職場で活躍する薬剤師
それでは本題に戻り、さまざまな職場で働く薬剤師について見ていきましょう。
企業(製薬会社)
薬剤師の13.3%が働く職場として、企業が挙げられます。
中でも、製薬会社は高給であることや安定性が高いことから、薬剤師にとっても人気の高い職場です。
医薬品の製造販売が主な業務であり、研究や開発、情報提供、安全性情報の収集など、さまざまな職種に細分化されています。
製薬会社の主な職種は次のとおりです。
職種 | 業務内容 |
---|---|
MR(医薬情報担当者)職 | 自社の医療用医薬品情報(有効性、安全性、品質など)を医師や薬剤師などに提供し、医薬品の普及をおこなう |
研究職 | 医薬品として用いることのできる可能性のある成分の、研究をおこなう |
開発職 | 研究によって効果が確認された成分に対し、治験をおこなう |
DI(学術)職 | 自社の医薬品に関する質問の回答、社会教育、情報収集をおこなう |
薬剤師の資格を持っていれば、これらのさまざまな部署で活躍することができるのです。
製薬企業での仕事内容、年収については以下の記事で詳しく解説しているので、こちらを参考にしてください。
企業(製薬会社以外)
薬剤師が働く企業は製薬会社だけに限られるわけではなく、治験受託会社や医薬品卸など、さまざまな会社において活躍の場面があります。
代表的な職種をご紹介します。
職種 | 業務内容 |
---|---|
CRC(治験コーディネーター) | 医療機関でおこなわれる、医薬品の臨床試験(治験)のサポートをおこなう |
CRA(臨床開発モニター) | 臨床試験(治験)が適切におこなわれているかどうか、監督する |
MS(マーケティング・スペシャリスト) | 医薬品卸において、製薬企業から仕入れた医薬品や医療機器などを、 医療機関や調剤薬局に安定的に供給する |
企業の管理薬剤師 | 製薬会社や工場、倉庫などにおいて、医薬品の在庫管理や品質管理、DI業務をおこなう |
企業の管理薬剤師のように、薬剤師資格が必須要件となる職種もありますが、MSやCRCなどは薬剤師の資格が無くても働くことが可能です。
しかし、いずれにおいても医薬品の知識の習得が必要不可欠なので、薬剤師資格を保有していることは強みとなります。
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薬剤師からMRへの転職ってどうなの!?年収や給料の期待値・仕事内容・期待できる働き方と強みは?対個人よりも、対企業・対社長・対医師で仕事をしたい人にはオススメかも。
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治験・臨床系のお仕事に関してはこちらでも紹介しています。
衛生行政機関または保健衛生施設
薬剤師の中には、保健所や自衛隊などの行政機関で働いている方もみられます。
「保健所の薬剤師」は、薬局やドラッグストアの立ち入り検査や職員衛生の監視業務、環境衛生の実施など、地域住民の健康や安全を維持することが主な業務となっています。
「自衛隊の薬剤師」は、自衛隊病院における薬剤の管理や自衛官の衛生管理をおこないます。
「麻薬取締官」として働く薬剤師もおり、薬物犯罪の捜査や医療機関の立ち入り検査などが主な業務です。
これらの職種は、薬局や病院の薬剤師のように調剤業務を行うことはありませんが、薬剤師という専門的な知識を生かして、国民の健康や安全を守ります。
行政系のお仕事に関してはこちらでもまとめています。
刑務所で働く、という貴重な経験も。
医療刑務所の薬剤師、その仕事内容・求人・必要なスキルや資格についてまとめてみた。独特な雰囲気の業務と高い福利厚生待遇はかけがえのない人生の経験に。
大学
薬剤師のうち1.7%の方が働く職場に、大学が挙げられます。
大学は「研究機関」と「教育機関」の2つの側面を持っており、勤務する薬剤師はこれらの片方もしくは双方を担っています。
研究を行うことで新しい薬剤の開発や、治療技術の進歩に貢献して、間接的に国民の健康を支えます。
また薬学部で学生の教育を担うのも、これらの大学で働く薬剤師です。
学生時代に担当教員としてお世話になった教授や講師も、この大学で働く薬剤師に該当します。
次世代の薬剤師を育てるということが、大学で働く薬剤師のもう一つの役割です。
薬局薬剤師
学校薬剤師
薬剤師でも学校で働けるってご存知でしたか?
学校安全法によって、幼稚園、小学校、中学校、高校など大学を除く機関に学校薬剤師を置くように定められています。学校薬剤師とはいっても、学校に常駐しているわけではありません。要は非常勤職員という扱いですね。
必要に応じて健康相談や薬物乱用防止活動をする他、教室の照明の明るさや水質、騒音などを調べて学生が勉強する環境としてふさわしいかどうかを検査していきます。
化粧品メーカー
化粧品に興味のある薬剤師が化粧品メーカーで働くケースもあります。一見すると薬剤師と化粧品に関係性はなさそうですが、化粧品に使う配合成分の研究は薬学の知識を活かすことができるのです。
新しい成分の開発をしたり、理想通りの使い心地になるように配合を考えたりする仕事となります。化粧品メーカーということもあり、女性職員の数が多いのが特徴です。
健康食品メーカー
健康食品を作っているメーカで薬剤師が働くこともできます。健康食品は医薬品のような薬効は示しませんが、本当にこの成分が健康管理に役立つのかを分析したり調査したりします。
新しいサプリメントの開発にも関わることが可能です。
自衛隊
自衛隊でも薬剤師の募集をしています。募集人数が少ないので非常に狭き門ですが、隊員の健康を守るやりがいのある仕事が可能です。
たとえば隊員が国外で感染症にかかってしまったとき、治療薬を選んだり在庫の確保をしたりします。薬剤師とはいえ、はじめのうちは普通の隊員と同じ訓練が必要になるので、体力に自信のある方にオススメです。
コールセンター
薬についての電話相談を受ける仕事です。たとえば以下のような求人があります。
参考:マイナビ薬剤師 2021年6月時点
ネットで販売している医薬品に対してのお問い合わせに答えたり、在庫の管理をしたりする仕事です。
電話ごしではありますが、飲み合わせや副作用などの相談にのって医薬品を服用していいか判断することもあります。そのためコールセンターとはいえども、薬局やドラッグストアなどで働く薬剤師と変わらないような働き方ができるでしょう。
メディカルライター
MRが説明に使う資料を作成したり、薬局や病院の待合室に置いてあるリーフレットを作ったりする仕事です。
論文を読んで英語でまとめるお仕事もあります。とにかく文章を作っていくものですね。医薬品業界に関わりをもちながらも、薬局や病院とはまったく違った働き方ができます。
物流センター
医薬品を必要としているところに必要なだけ常に供給できるようにするためには、物流センターがなくてはいけません。実はこの物流センターでも薬剤師は働けます。
医薬品の入出庫作業や管理、梱包や電話対応などがメインの業務です。
検品やピッキングなども行うため、体力が必要となるでしょう。
予備校講師
薬剤師国家試験対策を行っている予備校で講師として働くこともできます。
国家試験間近になるとあちこちの都道府県に行って講義を行うため、ちょっとした旅行気分を味わえるかもしれません。
教えるのが好きな方は、きっと楽しくお仕事ができるのではないでしょうか。
まとめ
薬剤師の大半は、薬局や病院などの医療機関で働くことで、患者さんの健康をサポートしています。
しかし企業や衛生行政機関、大学などの職場で活躍している薬剤師も多く、仕事内容もさまざまです。
今の職場に限界を感じたり、違う仕事に挑戦したいと感じたときには、業種を変えてみることも選択肢の一つとしてみてください。
薬局薬剤師
▼以下の記事では薬剤師の資格を持ちながら薬剤師とはまったく関係ない働き方について、実体験からご紹介しています。