「管理薬剤師」といえば、薬剤師として働き始めてまず目指すところでしょう。
年収アップもですが、管理薬剤師になるということは薬局の責任者として任せて貰える信頼を得た証でもあります。
しかし管理薬剤師には、どうすればなれるのでしょうか。
この記事では、管理薬剤師になるための方法から仕事内容、メリット、デメリットについて解説します。
薬局薬剤師
管理薬剤師とは?仕事内容やなるための要件
まずは管理薬剤師の仕事内容や要件、なるための方法について解説します。
管理薬剤師の仕事内容
管理薬剤師とは、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」によって設置が義務づけられている、薬局や店舗の責任者です。
職場ごとに業務内容はやや異なりますが、医薬品の販売や調剤業務に加えて、医薬品の管理や従業員の監督を行うことが主な仕事内容です。
また調剤薬局やドラッグストアでは、管理薬剤師が店舗の責任者を兼任することも多く、薬局長や店長として店舗全体の管理を行うこともあります。
薬局薬剤師
管理薬剤師になるための要件
管理薬剤師になるためには、薬剤師の資格だけでなく特別な資格が必要と思われがちですが、管理薬剤師になるために必須の資格というものはありません。また薬機法でも管理薬剤師になるための条件はとくに定められていないので、言ってしまえば誰でもなれるものです。
雇用形態も必ずしも正社員である必要はなく、パート勤務であっても管理薬剤師になれます。(※ただし、管理薬剤師を派遣することは禁じられています。)
パート薬剤師でも管理薬剤師になれるものの、もちろんあまりに勤務日数が短いパートだと管理薬剤師にはなれないことが多いです。一般に週32~40時間勤務していないと厳しいと言われています。
経験年数の定めもありませんが、薬剤師として経験の浅いうちから管理薬剤師となることは難しいので、一定の経験を積んだ後に管理薬剤師へとステップアップを目指します。
一般的には3年以上、薬剤師としての経験を積んでから管理薬剤師へなるというケースが多いです。もちろん同じ薬局で3年務める必要はありません。3年以上の経験があれば、転職したばかりの職場ですぐに管理薬剤師になることもあります。
もちろんこの3年という数字はあくまで目安なので、2年目で管理薬剤師になる方もいれば5年働いていてもなれない方もいます。
管理薬剤師になるための要件が変わる可能性がある
2021年8月の薬機法改正で、管理薬剤師になるためには5年の実務経験が必要になる、という要件が追加されると言われています。
今までは薬剤師1年目からでも管理薬剤師になれましたが、改正によりそうはいかなくなりそうです。
企業によっては薬剤師ベテランの薬剤師が少なく新人薬剤師ばかりのところもあるので、とても厳しい状況になるのではないでしょうか。
薬局薬剤師
管理薬剤師になるための方法
管理薬剤師になるためには、大きく分けて2つの方法があります。
- 現在の職場でキャリアアップして管理薬剤師になる
- 管理薬剤師を募集している薬局に転職する
・現在の職場でキャリアアップして管理薬剤師となる
これまで働いてきた職場であり、周りの薬剤師や医療事務、医師、MSのことを良く知っているので、比較的スムーズに管理薬剤師として働き始めることができます。
初めて管理薬剤師に挑戦する場合でも、前任者の引継ぎやサポートを受けやすいのでオススメですが、前任者の転勤や退職などでポジションが空くまで待たなくてはなりません。
そのためキャリアを積んだからといって必ず管理薬剤師になれるわけではありません。
・管理薬剤師を募集している薬局に転職する
現在の職場でのキャリアアップが難しい場合には、管理薬剤師を募集している薬局に転職することがオススメです。
今勤めている薬局で何年も管理薬剤師のポジションが空くのを待つよりは、管理薬剤師を募集している薬局に転職してしまった方が何倍も早いでしょう。
ただし管理薬剤師の経験がまったくない場合では、受け入れてもらえないということもあるので、管理薬剤師になるために転職する場合は、転職エージェントを活用して情報収集するようにしましょう。
薬局薬剤師
「管理薬剤師」の求人案件が多く、いろんな条件が確認できる下記の転職サイトを使ってみるとよくわかります。
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※無資格者の方はご登録いただけません管理薬剤師に必要なスキル
管理薬剤師には、一般の薬剤師にプラスしていくつかのスキルが求められます。
医薬品の供給状況を把握
医薬品は頻繁に供給停止を起こすものです。発注に個数制限がかかったり、回収になることも少なくありません。
もし供給が不安定になった場合は、代わりの医薬品を発注して在庫を確保する必要があります。在庫が切れると患者さんにも医師にも迷惑をかけてしまうため、供給状況は常に把握しておきましょう。
医薬品の知識
管理薬剤師は「医薬品について知識がある人」というイメージをもたれる立場です。実際は勤務状況などによって歴の短い薬剤師が任命されることもありますが、それでも頼られる立場であることは間違いありません。
そのため臨床で通用する十分な知識を身につけておく必要があるでしょう。管理薬剤師が薬局の責任者となることも多いので、新しく入ってきた薬剤師に指導をすることもあります。
最低限、勤務している薬局で扱っている医薬品については、しっかり覚えておかなければいけません。
個々のスキルを見極める力
管理薬剤師になると、店舗のシフト作成を任されることも多いでしょう。
シフト作りはただ単に必要な人員を埋めればいいというものではありません。人によってもっているスキルも違いますし、仕事のこなし方も違います。
「このメンバーなら問題なく薬局が回る」という人員構成を自分で考えて作らなければいけないので、シフト作りは思っているよりも頭を使うものです。
薬局にいるスタッフがそれぞれどのような働き方をして、どのようなスキルをもっているのかを把握しておかないと、きちんと回るシフトは作れません。
職場ごとの管理薬剤師の働き方
管理薬剤師と一口に言っても、職場ごとに働き方はさまざまです。
ここでは代表的な職場について、ご紹介していきます。
調剤薬局
調剤薬局は全国59,613か所(平成30年度衛生行政報告例の概況より)あり、それぞれの調剤薬局に管理薬剤師が配置されています。
一般的な薬剤師と同じ調剤業務や服薬指導を行うこともありますが、現場の責任者としてて医薬品や従業員の管理も行わなくてはなりません。
在庫医薬品が不足することのないように発注したり、有効期限切れの医薬品を適切に廃棄するなど、医薬品を安定して供給できるようにします。冷蔵庫の温度管理も仕事の1つです。
医薬品が不足したときに借りやすいよう、近隣の薬局に挨拶に行くこともあるでしょう。また勤務やシフトの管理や従業員の教育、本社会議の出席なども、重要な業務です。
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この場合、調剤薬局の責任者は薬局長、医薬品の管理に関わる責任者は管理薬剤師ということになります。
病院
実は病院において、管理薬剤師を配置しなければならないという法的な義務はありません。
しかし調剤薬局に比べて、重症度の高い患者さんが訪れる機会の多い病院では、取り扱いの難しい高度な医薬品を扱うことも少なくはありません。
医薬品の専門家である薬剤師による管理を行う必要性が高く、「薬剤部長」や「薬剤科長」といった肩書きで、責任者が配置されています。
調剤薬局の薬剤師と同様に、一般の病院薬剤師と同じ業務を行いつつ、医薬品や従業員の管理を行います。麻薬の管理も同時に行うことが多いでしょう。
医師や薬剤師などの他職種が参加する会議(カンファレンス)に調剤部門の代表として参加して、医薬品の適切な使用を啓発することも重要な業務です。
ドラッグストア
ドラッグストアは調剤併設店はもちろんのこと、OTC専門店でも管理薬剤師が必要です。調剤併設店の管理薬剤師は調剤薬局と同じ仕事内容となります。
OTC専門店の場合は、管理帳簿の記入、必要掲示物の確認、医薬品の期限チェックなどが主な仕事です。コンタクトレンズの扱いもある場合は、コンタクトレンズの期限チェックや書類の管理も必要となります。
店舗によっては消防法に引っかからないように、店舗内の配置物の管理を任されることもあるでしょう。
企業(医薬品卸、製薬会社など)
薬剤師が働く職場は、医療機関だけではありません。
医薬品卸や製薬会社などの企業でにおいても、薬剤師はMRやMS、研究、開発など、さまざまな職種として活躍しています。
一方で、企業においても医薬品を取り扱う場合には、販売や管理の責任者である「管理薬剤師」を配置しなくてはなりません。
製造体制のチェックや情報収集業務、薬事申請業務、従業員の管理などをおこないます。
調剤薬局や病院とは異なり、薬剤師として臨床で患者さんと向き合うのでは無く、書類の保管や整理などデスクワークが中心となることが一般的です。
職場によってお給料や勤務条件も異なるので、詳しくは転職エージェントに確認することがオススメです。
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※無資格者の方はご登録いただけません管理薬剤師のメリット
管理薬剤師となることには、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
年収がアップする
管理薬剤師になると責任や業務量が増えてしまうので、その対価として年収が高めに設定されていることがほとんどです。
基本給がアップしたり管理薬剤師手当てが支給されたりすることで、年収にして数十万円のアップが見込まれます。
2019年職種別民間給与実態調査を見てみると、薬局長の月収と役職のない薬剤師との月収には、約15万円の差があることがわかります。
薬剤師の平均年齢が37歳であるのに対して薬局長は50.2歳と年齢差が大きいので、一概に金額の差が役職手当の差とは言えませんが、年収アップにつながることは間違いありません。
特に転職で管理薬剤師へとキャリアアップした場合、百万円以上の年収アップが狙える場合もあるので、やりがいにもつながります。
ステップアップを目指せる
管理薬剤師を経験することは、今後の薬剤師人生におけるステップアップを考える上でも、非常に重要です。
エリアマネージャーや本部社員となるためには、管理薬剤師の経験があり、業務内容を理解していることが必要不可欠です。
転勤や転職によって別の店舗で働く場合でも、管理薬剤師の経験があると選択肢の幅が広がります。
転職のときに有利になる
求人によっては、以下の画像のように「管理薬剤師の経験がある方」を条件として提示していることがあります。
参考:薬キャリ 2021年5月時点
管理薬剤師の経験がないと応募しにくい求人もあるので、少しでも経験を積んでおけば有利に転職を進めることが可能です。
薬局薬剤師
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管理薬剤師のデメリット
一方で、管理薬剤師のデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
仕事の責任は当然重くなる
管理薬剤師のデメリットの一つとして、仕事の責任が重いということが挙げられます。
調剤ミスの際の対応や社外の方との折衝、調剤薬局全体の経営責任など、一般薬剤師には無い仕事もしなくてはなりません。
業務量が増えることによって、残業が多くなったり、休みがとりにくくなったりということもあります。
少しの体調不調では休めなかったり、急な欠員の穴埋めをしたりと、ワークライフバランスが悪化することもあるので、注意が必要です。
副業や兼業ができない
一般の薬剤師であれば、就業規則等で禁止されていなければ、副業をすることが可能です。
薬剤師はパートやアルバイトでも時給が高く、派遣就労も認められているため、副業は非常に魅力的です。
しかし管理薬剤師は、薬機法により副業や兼業が認められておらず、1つの職場につき1名の管理薬剤師を配置しなくてはなりません。
(薬局の管理)
第七条 3 薬局の管理者(第一項の規定により薬局を実地に管理する薬局開設者を含む。次条第一項において同じ。)は、その薬局以外の場所で業として薬局の管理その他薬事に関する実務に従事する者であつてはならない。ただし、その薬局の所在地の都道府県知事の許可を受けたときは、この限りでない。~薬機法より抜粋~
つまり管理薬剤師になったら、他の薬局でパートをすることができなくなるのです。
スキルアップのために副業や兼業で他の科目を経験したいという方も多く、副業が認められていないことは、管理薬剤師となることのデメリットといえるでしょう。
またパート薬剤師に管理薬剤師をしてもらう場合は、他の職場でパートを掛け持ちしないように注意しなければなりません。
薬局薬剤師
副業・兼業についてはこちらでも言及しています。
残業代が貰えなくなることもある
現状では残念なことに管理薬剤師=管理職と見なされることが多いです。管理職になると残業代が支給されないことがほとんどであるため、管理薬剤師になったら残業が支給されずに年収が下がった…という方もいます。
管理薬剤師手当が月に1~2万円程度支給される職場が多いですが、管理薬剤師手当がついても残業代がゼロになることで手取りが減ってしまうんですね。
転職で管理薬剤師を目指している方は、残業代がつくかどうかも確認しておきましょう。管理薬剤師になると仕事内容が増えるので残業代の有無で年収も大きく変わります。
まとめ
管理薬剤師の仕事内容や要件、メリット、デメリットについて解説していきました。
責任は重くなり業務量も増えますが、仕事の裁量も大きくなるので、やりがいも大きいものです。
今すぐに管理薬剤師になる予定が無くても、日々の業務の中でも少しずつ勉強して、スキルを身に着けることがオススメです。
未経験でも管理薬剤師に挑戦したい場合には、転職エージェントの力を借りて、サポート体制に優れる薬局を見つけましょう。
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