「ヘッドハンティング」という言葉をご存知ですか?
一流商社マンや外資系企業などでは盛んにおこなわれているイメージですが、薬剤師ではあまり聞いたことがありませんよね。
しかし薬剤師の世界でも、ヘッドハンティングは盛んにおこなわれているのです。
この記事では、実際にあった事例を交えながら、薬剤師のヘッドハンティングについて解説します。
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この記事の目次
薬剤師もされる!ヘッドハンティングとは?
まずはヘッドハンティングの概要についてみていきましょう。
そもそもヘッドハンティングとは?
ヘッドハンティングとは、経営者や経営幹部、それに準ずる優秀な人材を外部からスカウトし、自社に引き入れることをあらわします。
「引き抜き」とよばれることもあり、対抗企業の人材を引き入れることで、自社の発展を狙うものです。
近年では、人材の流動性の加速や企業の国際化に伴い、人事戦略の一環としてヘッドハンティングが盛んにおこなわれています。
多くの場合は、経験豊富で能力の高いミドル層が対象となりますが、優秀な若手を対象としたヘッドハンティングも増えつつあるのが昨今の特徴です。
ヘッドハンティングの仕組み
ヘッドハンティングの多くは、企業の人事部門が直接おこなうのではなく、依頼を受けた外部のヘッドハンターによっておこなわれます。
事前に一定の報酬を受け取って活動するケースと、成果報酬型で人材の獲得に応じて報酬が支払われるケースの2つがメインです。
企業から希望する人物像(具体的な人物を指定されることも)を事前に提示され、条件を満たした人材の獲得を目指します。
成功時に支払われる報酬は非常に高額で、安くても数百万円、高ければ一千万円を超えることも少なくありません。
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薬剤師の世界におけるヘッドハンティング
自身やまわりの薬剤師をみていて、ヘッドハンティングがおこなわれているということは、正直イメージができませんよね。
しかし実際には、薬剤師の世界でも、ヘッドハンティングは頻繁におこなわれているのです。
むしろ人材の争奪が激しい医療分野においては、ヘッドハンティングの機会は一般的な業種よりも高いといえます。
しかし多くの方がイメージしている「ヘッドハンティング」とは少し様相が違うのも、事実です。
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【体験談】ヘッドハンティングのスカウトマンと会ってみた
実際にヘッドハンティングを経験した薬剤師のAさん(30代後半・男性)からお話を聞くことができたので、その内容をご紹介します。
調剤薬局にヘッドハンティングの電話が
私が30代後半のころ、関東の調剤薬局で管理薬剤師として勤務していましたが、ある日薬局に1本の電話がかかってきました。
???『管理薬剤師のA先生でしょうか?私、○○社のエージェントをしている△△と申します。今少しお時間よろしいでしょうか?』
よくある不動産や保険の営業かと思ったので、『患者さんがいて忙しいから、すみません』と切ろうとすると、次のように言われました。
エージェント『先生のことをヘッドハンティングしたいという薬局があります。破格の条件が出せるそうなので、A先生にも有益なお話です!』
「ヘッドハンティング」という聞きなれない言葉と、「破格の条件」という言葉につられ、ついつい話を聞いてしまい、後日会って話を聞く約束をしました。
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エージェントとの面談
薬局がお休みの日に、エージェントの方が最寄り駅まで来てくれたので、近くの喫茶店で話を聞かせてもらいました。
話を聞くと、ある調剤薬局グループで人員を増やすことを考えており、幹部候補として優秀な薬剤師を探しているとのこと。
そこで、エージェントの方が私の薬剤師としての評判を聞きつけて、ぜひとも交渉の場を設けてもらえないかということでした。
正直、私は薬剤師としての活動をバリバリとこなしていたわけではないので、評判を聞きつけてヘッドハンティングが来るということはありえません。
おそらくはどこからか私の名前を入手しただけで、全員に同じように「ヘッドハンティング」だと言っているのだと思います。
提示された条件とは
ちなみに、その際に提示された条件は、下記のとおりでした。
- 首都圏で展開する20店舗程度の薬局に、幹部候補として入社
- しばらくは複数店の応援として勤務をしてもらう
- 年収700万円で残業代20時間込み
- 年間休日110日、土曜日の出勤あり
年収はやや高めですが、残業代が含まれていることや休日の少なさを考えると、破格の条件には程遠いでしょう。
現在の薬局に満足していたので、丁重にお断りしてエージェントの方と別れましたが、期待が外れがっかりしたのも事実です。
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薬剤師のヘッドハンティングの裏側
薬剤師のヘッドハンティングとは、どのようなものなのでしょうか。裏側を解説します。
背景にあるのは薬剤師不足
一般的な企業でおこなわれる「ヘッドハンティング」は、ライバル企業の優秀な人材を引き抜いて、自社の発展を目指すというものです。
人材と一緒にライバル企業のノウハウを得ることが出来ると考えれば、高い給料を支払ったとしても十分に回収することが可能です。
しかし薬剤師などの医療系技術職の世界においては、経営者でもない限りそのようなことはありません。
薬剤師の世界でおこなわれているヘッドハンティングは、単に薬剤師不足を背景とした人材の獲得であるので、破格の条件は難しいのです。
エージェントは手当たり次第に電話をしている
そもそも、薬剤師の能力が知れ渡ることはきわめて少ないといえます。
「学会発表などで成果を出した」「経営者として公演活動をしている」という場合でもない限り、管理薬剤師程度で有名になるということはありえません。
エージェントは該当するエリアの薬局の情報を調べ、「○○先生のことを獲得したいという企業がある」「破格の条件が出る」といった誘い文句で、薬剤師にアプローチをしているのです。
紹介料が目的の可能性もある
薬剤師を企業に紹介しているエージェントは、薬剤師を紹介することで紹介料を企業から貰っています。1人紹介するだけでも100万円以上のお金が動く世界です。
紹介すればするほど、この紹介料を貰えるため、ヘッドハンティングで無理やり薬剤師を転職させて紹介料を手に入れようとするエージェントもいるようです。
以下の記事の「なぜ転職サイトは無料なの?」の部分で、転職エージェントの紹介料について詳しく触れています。
【失敗しない】薬剤師転職サイトの選び方や比較方法、基礎知識を徹底的におさらい!大手・口コミ・実績、何を信じればいいの~!!【決定版】
あまりに高額の年収交渉は不可能
もちろん、ヘッドハンティングの条件次第では、転職を考えるのも悪いことではありません。
エージェントに報酬を支払ってでも薬剤師を獲得したいという薬局であれば、比較的良い条件が出ると考えられます。
しかしヘッドハンティングと聞いてイメージされるような、数千万円単位の年収は、薬剤師の世界では望めないでしょう。
そういった意味では、「薬剤師の世界にヘッドハンティングは無い」ということも、できなくはありませんね。
辞めさせるためにスカウトを依頼しているケースも…
ほとんどのスカウトは、薬剤師不足を補うために人員確保の手段として行われています。ですがまれに薬剤師をリストラするためにスカウト会社に依頼して、辞めさせたい薬剤師にスカウトの話を持ちかけることもあるのです。
「辞めさせ屋」や「ヘッドカッティング」とも呼ばれているもので、日本ではなかなか正社員をクビにすることが難しいため、スカウト会社に依頼して辞めさせたい薬剤師を引き抜いてもうらんですね。
あまり数は多くないでしょうが、まれにリストラ代わりにスカウトを依頼しているケースもあります。
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薬剤師がヘッドハンティングで転職するデメリット
いざヘッドハンティングされると「自分って意外と評価されていたのかも?」と嬉しくなる気持ちと、「なんだか怪しいな」という気持ちの両方を抱くと思います。
ではもヘッドハンティングされた場合、そのまま転職するとどういったデメリットが起こるのでしょうか。
給料が良くても働き心地が悪い
ヘッドハンティングによる転職は、転職先の職場を十分に研究できないまま転職にいたることも少なくありません。
ヘッドハンティングではなく転職サイトに登録して転職活動をするときは、多くの方が気になる企業の情報をとことん調べることでしょう。しかしヘッドハンティングでの転職は、なかなか企業の情報を得ることができません。
そのため今より高い年収で条件を出されたとしても、いざ働き始めるとなんとなく居心地が悪かったり、残業が多かったりと働きやすいとは言えない状況の可能性があります。
周りの期待値が高いから負担に感じる
「優秀な薬剤師がいたから引き抜いた」ということが転職先に知られている場合、もとからいる従業員は「できる薬剤師が新しく来るらしい」という端的な情報だけを持っていることがあります。
そのような視線がある中で働くことになるので「期待通り有能な薬剤師でいなくては…」とプレッシャーに感じてしまう方もいるでしょう。
自信をもって働くことは大切ですが、周りからの過度な期待は重荷になってしまうものです。
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まとめ
薬剤師の世界におけるヘッドハンティングについて、実際の事例を交えて解説していきました。
ヘッドハンティングによって転職を目指すことも可能ですが、必ずしも好条件が約束されているというわけではありません。
転職サイトの充実している薬剤師の世界では、転職サイトのエージェントを利用する方法がオススメです。
ヘッドハンティングで提示される以上の求人を獲得できる可能性も十分にあるので、迷ったらまずは転職サイトに登録してみてはいかがでしょうか。
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