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膨大な「外来受付」は、病院薬剤師の激務の要因であり宿命!?少数精鋭で大量の処方箋をさばくには!?

膨大な「外来受付」は、病院薬剤師の激務の要因であり宿命!?少数精鋭で大量の処方箋をさばくには!?

その日の忙しさを左右する1番のポイントと言っても過言ではないのが、外来受付数です。外来受付数が多い=処方せん枚数も増えるため、院内処方がメインの病院はとたんに忙しくなってしまいます。

次々と舞い込んでくる処方せんに、慌てふためいた経験がある方も多いでしょう。膨大な量の外来に負けず、少ない人数で大量の処方せんをさばくにはどうしたらよいのでしょうか。

今回は病院薬剤師の忙しさが外来受付に左右される理由や処方せんを早くさばくコツ、忙しくない病院の見極め方などをご紹介していきます。これで忙しい病院薬剤師とはおさらばできるかもしれません。

処方せん枚数と薬剤師数との関係

処方せん枚数によって薬剤師の数はどう変わる
病院や調剤薬局に配置されている薬剤師の人数は、処方せんの枚数によって決まっています。何枚につき何人なのか覚えていますか?

病院薬剤師の忙しさを語る上で欠かせないものなので、まずは処方せん枚数と薬剤師の数との関係をおさらいしておきましょう。

基本は処方せん40枚につき薬剤師1人

処方せん40枚につきと薬剤師を1人置くと法律によって定められています。40枚から1枚でも増えたら薬剤師の数は2人に増やさなければなりません。しかし必ずしもこのルールが適用されるわけではないので注意が必要です。

参照:「保険薬局における主な業規制」薬局や薬剤師を取り巻く環境 – 内閣府

処方せんが発行される病院の科目によって、枚数あたりの薬剤師数が変わります。

ほとんどの科目では処方せん40枚につき薬剤師1人となっていますが、眼科・耳鼻科・歯科に限っては1枚の処方せんを3分の2枚としてカウントするのがルールです。つまりこれらの科目では60枚の処方せんにつき1人の薬剤師を置く計算になります。

一人あたりの処方箋枚数を減らすべきとの声も

「一律で処方箋40枚につき薬剤師一人と規定するのはどうなのか」という声が挙がっているのをご存知でしょうか。2015年と少し前のデータにはなりますが、日本保険薬局協会が調査したところ2,226軒の薬局のうち、36.9%にあたる薬局が「制限枚数を減らすべき」と回答していました。
参考:薬剤師1人当たりの処方箋枚数制限、「減らすべき」が3割強

この調査が行われてから4年後の2019年には、正式に厚生労働省から「一律に40枚ということの合理性がない」との考えが示され、処方箋の40枚ルールを見直す動きが見られ始めました。

処方箋1枚とは言われても一包化なのか、液剤なのか、粉砕もいるのか、何日分の処方なのかによってかかる労力が大きく変わるため、もしかしたら今後なんらかの形でルールが変更になる可能性もあるでしょう。

参考:処方箋40枚ルールは「処方の軽重」で見直しを

処方せんは「枚数」で数える?それとも「受付回数」?

処方せんの数によって配置すべき薬剤師の数が変わるのはわかりましたが、たまに「処方せんって枚数で数えるんだっけ?それとも受付回数?」となりませんか?薬剤師の数を決めるときは受付回数ではなく、単純に処方せんの枚数で計算します。

もし受付回数を適用してしまうと、処方せんが3枚や4枚もある患者さんでも1回とカウントされてしまうので、薬剤師の数を決める基準としては適さないでしょう。

40枚につき薬剤師1人は妥当な数字か?
薬剤師が1日にさばける処方せんの枚数は基本40枚。1日8時間労働だとすると、1枚の処方せんにかけられる時間はたったの12分です。こう考えると、意外と余裕がないような気もしますね。処方日数が多かったり一包化などの作業が必要な場合、とても1枚12分では終わりません。

外来受付数の増加が病院薬剤師を忙しくする

外来患者数が増えると病院薬剤師は忙しくなる
病院薬剤師の仕事が激務になる要因は、主に外来受付数の増加です。また1日の処方せん枚数の計算方法にも実は罠があります

病院薬剤師は外来受付数の影響をモロに受ける

病院薬剤師が激務になってしまうのは、入院患者数よりも外来患者数の影響が大きいです。よっぽどの事故や事件が起こらない限りは、急激に入院患者数が増えることはありません。

しかも病床数が限られているので、忙しくなるといっても限度があります。しかし外来患者数は入院患者数と違い、人数の変動が激しいのが特徴です。下のグラフを見てみてください。

1日の外来・入院患者数
参考 1日平均外来患者数・入院患者数 | 熊本赤十字病院

年度ごとの1日平均外来患者数と入院患者数を示したグラフです。青い線が1日平均入院患者数赤い線が1日平均外来患者数になっています。

年度ごとのグラフであるため日々の細かな変動まではわかりませんが、入院患者数の平均はキレイに横ばいになっているのに対し、外来患者数には波がある&圧倒的にその比率が高いことがわかるでしょう。

このことからも、病院薬剤師の仕事が激務になるかどうかは、外来患者数が大きく影響していることがわかります。

1日平均取扱処方せん枚数も忙しさのキモ

病院に何人の薬剤師を配置しておくべきかが、1日に何枚の処方せんを受け付けているかによって変わることは先ほど確認しましたね。ところでこの「1日に何枚受け付けているか」はどうやって計算するのでしょうか。

処方せん枚数は日によって違いますよね。実は去年受け付けた処方せんの枚数を平均して、1日の平均処方せん枚数を計算しています。処方せんが200枚だった日も400枚だった日もすべて平均して1日あたりの数に直しているのです。

去年の処方せん枚数の平均で、薬剤師を何人配置すべきかを決めているんですね。

単純に平均を計算して薬剤師の数を決めているので、外来が多い日には少ない人数で大量の処方せんをさばく必要性がでてきてしまいます

ポイント!
1日の処方せん枚数は1日平均取扱処方せん枚数によって決まります。平均枚数が120枚なら薬剤師は3人必要です。ただ実際は、日によって外来患者の数が変わります。

ある日160枚の処方せんが急に来たとしても、薬剤師は3人しかいないわけですから、本来なら4人でさばくべき処方せんの量を3人でさばかなければなりません。「今日は忙しいな」と感じるときは、大抵このように平均枚数を上回る外来が来たときです。

実習生の手すら借りたい病院薬剤師の現場
これは私が学生時代に、病院実習で経験したお話です。ある日、いくら処方せんをさばいてもどんどん未調剤の処方せんが増えていく、目が回るほど忙しい日がありました。いつもよりも外来受付数が爆増していたんですね。忙しすぎて休憩も回せない状態です。やっと落ち着いたころに院内の薬剤師がぽろっとこんなことを言いました。

「実習生がいなかったら今日は回らなかったね…助かった…」

薬剤師でもなんでもない実習生の力が頼りになるほど、忙しいなんて今考えたら恐ろしいものです。

このめまぐるしさで処方に疑義が発生した場合のことなど想像もしたくないですよね。

もう迷わない疑義照会の仕方とは?気まずいけど、絶対重要!国内での照会、調剤変更の実態や、医師とのコミュニケーション方法を語る

外来受付が増えると他の業務にしわ寄せが来る

外来の処方箋が止まらない限り、なかなか他の業務へ移ることができません。薬局の外で患者さんが薬を待っている状態であることから、放っておくわけにもいかないのです。

外来受付が集中した日は、お昼休憩に入れないほど薬局内があたふたしてしまうこともよくあります。病院で働いたことのある薬剤師が「朝から晩まで業務に追われる」と言っているのは冗談でも何でもなく、本当の話です。

外来が詰まっている日ほど他の仕事がどんどん後回しになるので、激務さが増してしまいます。

少数精鋭で大量の外来受付をさばくには?

少数精鋭で大量の外来をさばくコツ
さてここからが本題です。1日平均取扱処方せん枚数を上回って外来受付が殺到すると途端に院内は慌ただしくなります

しかしいつどの日に外来患者数が増えるのかなんて誰にもわからないので、忙しくなったらなったでどんどん処方せんをさばいていかなければなりません。少ない人数で大量の処方せんをさばくにはどうしたらよいのでしょうか。

1人当たりにかける服薬指導の時間を短縮

究極の方法はこれです。1人にかける服薬指導の時間を短くすれば、巻いた時間を使ってさらに処方せんをさばくことができます。「1人の患者さんとできるだけ丁寧に接したい」と思うところではありますが、忙しいときはこうも言っていられません。

話題の薬剤師漫画「アンサングシンデレラ」にもこのようなセリフが出てきます。

服薬指導が必要な場合はドクターから依頼書が出るんだから余計な時間はかけないこと!
(引用 アンサングシンデレラ1巻 P58)

余計な時間をかけずにひたすら処方せんをさばいていくことも、残念ながらときには必要です。

薬剤師を題材にしたマンガ・小説をまとめてみた!「アンサングシンデレラ」は編集部イチオシ大本命!

処方せんを必要な手間別に仕分けする

外来患者数が多い日は、調剤が終わるまでいつも以上に時間がかかってしまいます。私は過去に1時間近く待たされたことも…。具合が悪いのに長時間待たされるのは患者さんにとってもキツイものです。

余計な手間を省くためにも患者さんを待たせないためにも、処方せんを調剤にかかる手間別に仕分けする方法があります。すぐ終わるもの、少し時間がかかるもの、お待たせしてしまうものなどに仕分けをするのです。

仕分けを行うことで簡単な処方せんをすぐにさばけるため、目の前に処方せんが山積みになっていくこともありません

役割分担をする

とても単純なことですが、役割分担をあらかじめ決めておくのも処方せんを素早くさばく秘訣です。投薬をする人、散剤を作る人、液剤を作る人、一包化をする人と役割を決めておきます。

こうすることで1人の薬剤師が1枚の処方せんを最初から最後まで調剤するよりも、スピーディーにさばいていくことが可能です。

シフトを作る段階でメンバーを緻密に計算しておく

忙しい病院ほど、緻密にシフトを計算しておく必要があります。

投薬をテキパキ回せる人、監査を正確に素早くできる人、周りを見て行動できる人などパワーバランスを考慮してシフトを組んでおくと、急に外来患者数が増えても薬局内が崩壊することは避けられるでしょう。

よく出るお薬はあらかじめ準備しておく

半錠にしたり、散剤をまぜたりと「この薬はよくでるな」というものが必ずあるはずです。そういったお薬はあらかじめストックを作っておきます。ワーファリンなんかは0.5錠刻みで何日分も一気に処方が出ますよね。

処方せんが来る度に錠剤を割って分包機に入れてなんてしていたら日が暮れてしまいます。よく出るものは時間に余裕があるときに作っておきましょう。

薬局や病院で計数調剤(ピッキング)をおこなうときのコツと注意点、現役薬剤師がまとめました。調剤薬鑑査も大事!

忙しくない病院を見つけるコツ

忙しくない病院で働くコツは?
病院で働いてみたいけど、忙しい病院は嫌だなと思われている方もいるでしょう。すべての病院が激務というわけではないので、忙しくない病院ももちろんありますよ。

どうすれば激務でない病院を探せるのか、コツをいくつかご紹介します。転職先を探す際にも役立ちますのでぜひチェックしてください。

慢性期病院を選ぶ

病院には慢性期病院と急性期病院があります。慢性期病院は病態が安定している患者さんが多い病院、急性期病院は急な病気や怪我をして病態が著しく変化する患者さんが多い病院です。

忙しさは圧倒的に急性期病院の方が上なので、忙しくない病院で働きたい場合は慢性期病院を選びましょう。急性期の場合は、患者さんの入れ替わりが激しく、病態も変化しやすいため非常に忙しいのです。

1日の処方せん枚数と常駐している薬剤師の数を確認

転職先を探すとき、必ず1日の処方せん枚数と、常駐している薬剤師の数を確認してください。基本的には法律で決められた処方せん40枚につき薬剤師1人という基準で配置されています。

しかし重要なのは、1人あたりの薬剤師が何枚の処方せんをさばく必要があるのかというところです。400枚の処方せんを10人でさばくと、1人あたり40枚の処方せんをさばかなければなりませんが、370枚の処方せんを10人でさばく場合は1人あたり37枚で済みます。

細かいところではありますが、できるだけ1人が負担する処方せんの枚数が少ない病院を選ぶことで忙しさを軽減することが可能です。

あらかじめ病院を見学しておく

できるだけ病院に足を運んで見学しておくことをオススメします。そこでできるだけ、気になることを聞いておきましょう。同時に薬局内の雰囲気を見ておくことも重要です。

処方箋は何枚きて、薬剤師は何人いるのか。薬局内の空気が殺伐としていないかなどチェックしておくと、転職活動で役に立ちます。

転職サイトを使う

手っ取り早く忙しくない病院を見つけて転職したい方は、転職サイトを使うのが1番早いしお手軽です。

病院の見学をしたいときはエージェントに頼めば話をしてくれますし、エージェントが知っている限りの病院の情報を教えてもらうこともできます。

「忙しくない病院がいい」「慢性期病院がいい」「薬剤師の人数にゆとりがある病院がいい」など、希望を担当のエージェントに伝えておけば条件に合う求人を紹介してもらうことも可能です。

転職サイトは多くありますが、希望に合う病院に転職したいのなら薬キャリとマイナビ薬剤師をオススメします。

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薬キャリを運営しているエムスリーグループは、薬剤師だけでなく医師にも対応したサイトを運営しているため、医療機関との強いパイプがあります。求人数も多いので希望の病院を見つけることができるでしょう。

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忙しい病院で勤務経験を積むメリット

あえて忙しい病院で経験を積むメリットとは?
あまりに激務で忙しい病院では、きっと誰もが働きたくないと思うでしょう。しかし忙しいからこそ得られることもあります。短い期間で誰よりも多くの知識を吸収できるし、さまざまなパターンの処方せんを扱う経験にもなりますよね。

忙しさだけを考えるとマイナスですが、得られるものも含めると忙しい病院が絶対によくないものだとも言い切れません。外来患者数が多く忙しい病院で働いた経験があれば、転職先を探すときもその経験がきっとプラスに働くでしょう。

それに得た知識は一生ものです。余裕のある病院では得られない唯一の経験が、これからのキャリアプランにつながることは間違いありません

ポイント!
忙しい病院で得られる知識の量は膨大なものです。覚えることが多すぎて吸収が間に合わないこともあります。薬剤師の資格に磨きをかけたい方は数年だけでも忙しい病院で経験を積んでみるのもよいかもしれません。忙しい病院で働いた分、他の薬剤師とは大きく差をつけて成長できるので、次の職場にもその知識を活かせるはずです。

まとめ

病院薬剤師の忙しさは外来受付数で決まる
病院薬剤師が忙しいと感じる大きな理由は外来受付の数です。外来患者数によってその日の忙しさが変わるといっても過言ではありません。もはや外来患者数が病院薬剤師の激務の要因でしょう。

少ない人数で大量の処方せんをさばくには、投薬時間を短くする、あらかじめストックとして作れる薬は作っておくなどの対処法があります。忙しくない病院で働きたい方は転職サイトを使って求人を探すとピッタリの求人が見つかるでしょう。

中には薬剤師として短期間で大きく成長できるため、あえて忙しい病院で働く薬剤師もいます。自分に合う病院を見つけることが大切ですね。

病院薬剤師の仕事内容は幅広く激務?薬歴管理・服薬指導・調剤業務だけでなく、DI業務・薬品管理・製剤・治験に関わることも。新薬に触れることが多い職種もあります!休みが少ないイメージは実際のところどうなの!?